
愛犬の美しい毛並みと健康な皮膚は、飼い主にとって大きな喜びです。しかし、犬の皮膚は人間よりも繊細で、さまざまなトラブルを抱えやすいことをご存知でしょうか。この記事では、犬の皮膚と被毛に関する基礎知識から、よくあるトラブルの原因と対策、そして美しい毛並みを保つためのケア方法まで、獣医師監修の情報をもとに詳しく解説します。
はじめに:愛犬の皮膚と被毛の健康が大切な理由
犬の皮膚病は、動物病院への来院理由として最も多いとも言われています。かゆみや脱毛、フケなどの症状は、愛犬のQOL(生活の質)を大きく低下させるだけでなく、放置すると重症化してしまうこともあります。

皮膚と被毛の状態は、愛犬の健康状態を映し出す鏡のようなものです。毛艶が悪くなったり、皮膚にトラブルが起きたりすることは、体の内側で何らかの問題が起きているサインかもしれません。
早期発見・早期対処が、愛犬の健康を守る鍵となります。日頃から愛犬の皮膚と被毛の状態をチェックし、異変に気づいたらすぐに対処することが大切です。子犬との幸せな暮らしを長く続けるためにも、皮膚と被毛のケアは欠かせません。
犬の皮膚と被毛の基本構造
犬の皮膚と被毛について正しく理解することは、適切なケアの第一歩です。ここでは、その基本的な構造と役割について解説します。
皮膚の構造と役割
犬の皮膚は、表皮・真皮・皮下組織の3層構造になっています。最も外側にある表皮は、外部からの刺激や病原体の侵入を防ぐバリア機能を担っています。
重要なポイントとして、犬の皮膚は人間より薄く繊細であることが挙げられます。犬の表皮の厚さは約0.1mm程度で、人間の約0.2mmと比較すると半分程度しかありません。そのため、外部からの刺激を受けやすく、皮膚トラブルが起きやすいのです。
皮膚の表面には皮脂膜があり、これが皮膚のバリア機能を維持しています。皮脂膜は適度な油分で皮膚を保護し、水分の蒸発を防ぐ役割を果たしています。過度なシャンプー🛒などでこの皮脂膜が失われると、皮膚のバリア機能が低下してしまいます。
被毛の種類と特徴
犬の被毛には、大きく分けてダブルコートとシングルコートの2種類があります。
ダブルコートは、柔らかい下毛(アンダーコート)と硬い上毛(オーバーコート)の2層構造になっています。柴犬、ゴールデンレトリバー、コーギー、ポメラニアン、ハスキーなどがダブルコートの犬種です。ダブルコートの犬種は春と秋に換毛期があり、この時期には大量の毛が抜け替わります。
シングルコートは、上毛のみで構成されており、プードル、マルチーズ🛒、ヨークシャーテリアなどが該当します。シングルコートの犬種は抜け毛が比較的少ないですが、毛が絡まりやすいため定期的なケアが必要です。
被毛の役割は多岐にわたります。体温調節、紫外線からの保護、外部からの物理的刺激の緩和など、愛犬の体を守る重要な機能を果たしています。犬のグルーミングは、こうした被毛の機能を維持するために欠かせないケアです。
よくある犬の皮膚トラブルと原因
犬の皮膚病にはさまざまな種類があります。PetMDの専門家によると、皮膚アレルギーは犬に最も多く見られるアレルギーの一つです。ここでは、代表的な皮膚トラブルとその原因について解説します。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、遺伝的な要因が関係する皮膚疾患です。AKCの解説によると、環境中のアレルゲン(花粉、ダニ、カビなど)に対する過敏反応が原因で発症します。
特徴的なのは、3歳以下の若い時期に発症することが多いという点です。症状は顔周り、足先、脇、内股などに現れやすく、長期間続くかゆみ、脱毛、皮膚の色素沈着などが見られます。
アトピー性皮膚炎は完治が難しい慢性疾患ですが、適切な治療と日常的なケアによって症状をコントロールすることが可能です。
膿皮症(のうひしょう)
膿皮症は、ブドウ球菌という細菌が原因で起こる皮膚病です。ブドウ球菌は健康な皮膚にも存在する常在菌ですが、皮膚のバリア機能が低下したり、免疫力が落ちたりすると異常に増殖し、皮膚炎を引き起こします。
症状としては、皮膚の赤み、膿を含んだ発疹(膿疱)、かさぶた、脱毛などが見られます。早期に適切な治療を行えば、比較的短期間で改善することが多いです。
マラセチア性皮膚炎
マラセチアは、犬の皮膚に通常存在する酵母菌です。しかし、アレルギーや内分泌疾患、皮脂の過剰分泌などをきっかけに異常増殖すると、皮膚炎を引き起こします。
特徴的な症状として、赤みを伴う皮膚炎と、長期化すると皮脂の産生過剰による皮膚の肥厚が見られます。独特の脂っぽい臭いがすることも特徴です。
アレルギー性皮膚炎
アレルギー性皮膚炎には、主に以下の3つのタイプがあります。
ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミの唾液に対するアレルギー反応です。たった1回のノミの咬傷でも激しいかゆみを引き起こすことがあり、特に尾の付け根付近に症状が出やすいです。
食物アレルギーは、特定の食材に対するアレルギー反応で、皮膚症状だけでなく消化器症状を伴うこともあります。
環境アレルギー(アトピー)は、花粉やハウス🛒ダスト、カビなどの環境中のアレルゲンに対する反応です。
愛犬の健康を守る病気予防の観点からも、アレルギーの原因を特定し、適切に対処することが重要です。
寄生虫による皮膚病
犬の寄生虫対策は、皮膚トラブル予防の基本です。
疥癬(かいせん)は、ヒゼンダニというダニが皮膚に寄生することで起こる皮膚病です。激しいかゆみが特徴で、耳や肘、腹部などに症状が現れやすいです。
毛包虫症(ニキビダニ症)は、毛包虫(デモデックス)というダニが毛包に寄生することで起こります。免疫力が低下している犬に発症しやすく、脱毛やフケ、皮膚の発赤などの症状が見られます。
皮膚トラブルのサインと見分け方
KINS WITH動物病院の解説によると、犬が皮膚トラブルを抱えているときには、いくつかの特徴的なサインが見られます。
かゆみのサイン
犬のかゆみの仕草は、爪で引っかくことだけではありません。以下のような行動もかゆみのサインです。
かゆい部分を舐める
かゆい部分を噛む
壁や床に体を擦りつける
頭を振る(耳にかゆみがある場合)
これらの行動が頻繁に見られる場合は、皮膚トラブルを疑いましょう。
目視でわかる症状
日常的に愛犬の皮膚をチェックすることで、早期に異常を発見できます。注意すべき症状には以下のようなものがあります。
| 症状 | 考えられる原因 |
|---|---|
| 脱毛 | アトピー、ホルモン異常、寄生虫 |
| フケ | 乾燥、脂漏症、寄生虫 |
| 発疹・ぶつぶつ | アレルギー、膿皮症 |
| かさぶた | 外傷、膿皮症、アレルギー |
| 皮膚の赤み | 炎症、アレルギー、感染症 |
| 皮膚の黒ずみ | 慢性的な炎症、ホルモン異常 |
犬のコミュニケーションを理解することで、愛犬の不調にいち早く気づくことができます。
早期発見のための日常チェック
ブラッシングの際に、皮膚の状態を確認する習慣をつけましょう。特に以下の部位は症状が出やすいため、重点的にチェックすることをおすすめします。
耳の中と耳の後ろ
顔周り(目の周り、口の周り)
脇の下
内股
足先(肉球の間も含む)
尾の付け根
美しい毛並みを保つブラッシング方法
子犬のへやのブラッシングガイドによると、ブラッシングには汚れを取る、抜け毛を処理する、血行を促進するなど、多くの効用があります。犬種や毛質に合った正しいブラッシング方法をマスターしましょう。
短毛種のブラッシング
フレンチブルドッグ、パグ、ビーグルなどの短毛種は、被毛のケアが不要に思われがちですが、小さな毛がたくさん抜けるため適切なケアが必要です。
使用するブラシ
ラバーブラシ:抜け毛を効率よく除去
獣毛ブラシ:毛艶を出す仕上げ用
ブラッシングの手順
ラバーブラシで毛の流れに逆らってブラッシング
獣毛ブラシで毛の流れに沿ってブラッシング
仕上げに蒸しタオルで全身を拭くとさらに効果的
短毛種のブラッシング頻度は、週2〜3回が目安です。
長毛種のブラッシング
ヨークシャーテリア、マルチーズ、シーズー、アフガンハウンドなどの長毛種は、毛が絡まりやすく毛玉ができやすいため、毎日のブラッシングが必要です。
使用するブラシ
スリッカーブラシ🛒:もつれや毛玉をほぐす
ピンブラシ:全体を整える
コーム:仕上げ用
ブラッシングの手順
毛先からスリッカーブラシでもつれをほぐす
徐々に根元に向かってブラッシング
ピンブラシで全体を整える
コームで仕上げ
スリッカーブラシは鉛筆を持つように軽く握り、手首を柔らかく使って優しくなでるように動かすのがコツです。力を入れすぎると皮膚を傷つけてしまうので注意しましょう。
毛玉ができやすい場所
脇の下
耳の後ろ
首周り
内股
胸
腹部
これらの部位は特に注意してブラッシングしましょう。
ダブルコート犬種のブラッシング
柴犬、ゴールデンレトリバー、コーギー、ポメラニアン、ハスキーなどのダブルコート犬種は、春と秋の換毛期に大量の毛が抜けます。
換毛期には、アンダーコート(下毛)を効率的に除去することが重要です。死毛を放置すると、皮膚の通気性が悪くなり、蒸れや皮膚病の原因になります。
換毛期のケアポイント
ブラッシング頻度を上げる(毎日〜1日2回)
アンダーコート用のレーキやファーミネーターを使用
お風呂に入れてからブラッシングすると効率的
犬のグルーミングの基本として、愛犬の毛質に合ったブラシを選び、正しい方法でケアすることが大切です。
正しいシャンプーの方法と頻度
シャンプーは皮膚を清潔に保つために重要ですが、やりすぎは逆効果です。適切な頻度と方法でシャンプーを行いましょう。
シャンプーの手順
準備するもの
タオル(数枚)
ドライヤー
ブラシ
シャンプーの手順
事前ブラッシング:シャンプー前にブラッシングして、毛のもつれや汚れを取り除きます。
ぬるま湯で濡らす:37〜38度程度のぬるま湯で、全身をしっかり濡らします。顔は最後に濡らしましょう。
シャンプーを泡立てる:シャンプーを手のひらで泡立ててから、体に塗布します。直接原液をかけないようにしましょう。
優しくマッサージ:指の腹を使って、皮膚を傷つけないよう優しくマッサージするように洗います。
しっかりすすぐ:シャンプーの残留は皮膚トラブルの原因になります。ぬめりがなくなるまで十分にすすぎましょう。
完全に乾かす:タオルで水分を吸い取り、ドライヤーで完全に乾かします。生乾きは厳禁です。特にダブルコートの犬は乾きにくいため、根元までしっかり乾かしましょう。生乾きの状態は細菌が繁殖しやすく、皮膚病の原因になります。
シャンプー選びのポイント
犬の皮膚は人間とはpHが異なるため、必ず犬用シャンプーを使用してください。人間用シャンプーは犬の皮膚には刺激が強すぎます。
シャンプーの頻度は、一般的に月1〜2回が目安です。ただし、皮膚の状態や犬種、生活環境によって適切な頻度は異なります。
皮膚状態別のシャンプー選び
| 皮膚の状態 | おすすめのシャンプー |
|---|---|
| 健康な皮膚 | 低刺激の一般的な犬用シャンプー |
| 乾燥肌 | 保湿成分配合シャンプー |
| 脂性肌 | 脂漏用シャンプー |
| アレルギー傾向 | 薬用シャンプー(獣医師に相談) |
皮膚トラブルがある場合は、獣医師に相談して適切な薬用シャンプーを選びましょう。
栄養から改善する皮膚と被毛の健康
美しい毛並みは、外からのケアだけでなく、内側からの栄養補給も重要です。皮膚と被毛の健康に必要な栄養素について解説します。
オメガ脂肪酸の効果
サーカス動物病院の解説によると、オメガ3脂肪酸には炎症を抑える作用があり、特に皮膚や関節の炎症を抑えることができるとされています。
オメガ3脂肪酸の効果
炎症を抑える(抗炎症作用)
アトピー性皮膚炎の症状緩和
被毛の艶を改善
研究では、犬にオメガ3脂肪酸を12週間サプリメントすることで、かゆみや被毛の状態、生活の質が改善されたという報告があります。
ファンケルの解説によると、オメガ6脂肪酸は皮膚の健康をサポートし、角質のバリア機能を維持する働きがあります。
オメガ6脂肪酸の効果
皮膚のバリア機能維持
セラミドの構成成分として水分保持
細胞の再生をサポート
オメガ3とオメガ6のバランス
両者はバランスよく摂取することが大切です。オメガ3は炎症を抑制する一方、オメガ6には炎症を促進する働きもあるため、どちらかに偏りすぎないようにしましょう。
理想的な比率はオメガ6:オメガ3 = 2:1〜6:1程度と言われています。
注意点
オメガ3脂肪酸の効果が現れるまでには、投与開始から30日以上かかる
効果を維持するには継続的な摂取が必要
過剰摂取は下痢や肥満の原因になることがある
サプリメント🛒を使用する場合は獣医師に相談
毛艶を良くする栄養素と食材
被毛の主成分はタンパク質(ケラチン)です。高品質なタンパク質を十分に摂取することが、健康な被毛を育てる基本となります。
毛艶に良い栄養素と食材
| 栄養素 | 効果 | 含まれる食材 |
|---|---|---|
| タンパク質 | 被毛の主成分 | 鶏肉、牛肉、魚、卵 |
| オメガ3脂肪酸 | 抗炎症、艶改善 | サーモン、イワシ、亜麻仁油 |
| オメガ6脂肪酸 | バリア機能維持 | 鶏脂、ひまわり油 |
| ビタミンE | 抗酸化、老化防止 | アーモンド、ほうれん草 |
| ビタミンA | 皮膚の健康維持 | レバー、にんじん |
| 亜鉛 | 細胞再生、皮膚修復 | 牛肉、鶏肉、カボチャの種 |
| ビオチン(ビタミンB7) | 被毛の成長促進 | レバー、卵黄 |
犬の食事と栄養について詳しく知ることで、愛犬の皮膚と被毛の健康をサポートできます。
季節ごとの皮膚・被毛ケア
季節によって、皮膚と被毛に必要なケアは異なります。それぞれの季節に合わせた適切なケアを行いましょう。
春・秋:換毛期の集中ケア
ダブルコートの犬種は、春と秋に換毛期を迎えます。この時期は抜け毛が増えるため、こまめなブラッシングが必要です。
換毛期のケアポイント
ブラッシング頻度を上げる(毎日〜1日2回)
アンダーコートをしっかり除去
シャンプーで死毛を洗い流す
栄養バランスに気を配る
夏:皮脂増加と蒸れ対策
夏は気温と湿度が高くなり、皮脂の分泌が増えます。また、被毛の下が蒸れやすくなるため、皮膚トラブルが起きやすい季節です。
夏のケアポイント
定期的なシャンプーで皮脂を落とす
ブラッシングで通気性を確保
散歩後は足を洗って清潔に
高温多湿を避け、涼しい環境を維持
冬:乾燥対策と保湿ケア
冬は空気が乾燥し、愛犬の皮膚や被毛も乾燥しやすくなります。乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、皮膚トラブルを起こしやすくなります。
冬のケアポイント
保湿効果のあるブラッシングスプレーを使用
シャンプー🛒頻度を控えめに
加湿器で室内の湿度を保つ
静電気防止スプレーで毛切れを予防
動物病院を受診すべきタイミング
皮膚トラブルは自己判断で放置せず、早めに獣医師に相談することが大切です。
こんな症状があれば受診を
以下のような症状が見られたら、動物病院を受診しましょう。
かゆみが続く(頻繁に掻く、舐める、噛む)
脱毛が見られる
皮膚の赤み、湿疹、発疹がある
フケが増えた
体臭が強くなった
皮膚が厚くなった、黒ずんできた
受診時に伝えるべき情報
獣医師に正確な診断をしてもらうために、以下の情報を整理しておきましょう。
症状がいつから始まったか
どこに症状が出ているか
かゆみの程度
食事の内容
使用しているシャンプーやケア用品
環境の変化(引っ越し、新しいペットなど)
既往歴や現在の治療中の病気
治療法の種類
皮膚病の治療法には、以下のようなものがあります。
内服薬:抗生物質、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド、免疫調整薬(アポキル、サイトポイントなど)
外用薬:軟膏、スプレー、薬用シャンプー
免疫療法:アレルゲン免疫療法(減感作療法)
スキンケア:薬用シャンプー、保湿剤
愛犬の健康を守る病気予防と早期発見のためにも、定期的な健康診断を受けることをおすすめします。また、ペット保険と医療費についても事前に検討しておくと安心です。
まとめ:日々のケアで愛犬の健康な皮膚と美しい毛並みを守ろう
愛犬の健康な皮膚と美しい毛並みを保つためには、日々のケアが欠かせません。この記事のポイントをまとめます。
毎日のブラッシングで健康チェック
ブラッシングは、抜け毛を除去するだけでなく、皮膚の状態をチェックする絶好の機会です。愛犬とのスキンシップを楽しみながら、皮膚トラブルの早期発見に努めましょう。
適切な栄養管理
オメガ3・オメガ6脂肪酸、良質なタンパク質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することで、内側から皮膚と被毛の健康をサポートできます。
早期発見・早期対処
皮膚トラブルは放置すると悪化しやすいため、異常に気づいたら早めに獣医師に相談しましょう。日頃から愛犬の様子を観察し、変化を見逃さないことが大切です。
愛犬の皮膚と被毛の健康を守ることは、子犬との幸せな暮らしを長く続けるための基本です。毎日のケアを習慣にして、愛犬との健やかな日々を楽しみましょう。
























