愛犬の皮膚がベタベタして、甘酸っぱい独特のにおいがする、耳の中が赤く痒そうにしている──こんな症状が見られたら、マラセチア皮膚炎の可能性があります。マラセチア皮膚炎は、酵母菌の異常増殖により起こる皮膚疾患で、犬に非常に多く見られる皮膚トラブルです。
この記事では、マラセチア皮膚炎の原因、症状、診断、治療法から、再発予防まで、獣医師の視点から詳しく解説します。
マラセチア皮膚炎とは?
マラセチア皮膚炎とは、皮膚に常在するマラセチアという酵母菌が異常に増殖することで起こる皮膚炎です。マラセチアは担子菌類に分類されるカビの仲間で、長径3〜5μmの非常に小さなピーナッツ型の酵母様真菌です。

健康な犬の皮膚にも少数のマラセチアが存在していますが、何らかの原因で皮膚環境が悪化すると、マラセチアが過剰に増殖し、炎症とかゆみを引き起こします(参考:マラセチア皮膚炎の原因と症状)。
マラセチア皮膚炎は、特に高温多湿の環境で発症しやすく、梅雨や夏場に悪化する傾向があります。また、外耳炎を併発することが多く、耳の中がベタベタして強いにおいを発することも特徴です。
マラセチア皮膚炎の原因
マラセチアは通常、犬の皮膚に少数存在していますが、以下のような要因で異常増殖します。

皮膚のバリア機能低下
1. アレルギー🛒性皮膚炎 アトピー性皮膚炎や食物アレルギー🛒により、皮膚のバリア機能が低下すると、マラセチアが増殖しやすくなります。アレルギー性皮膚炎は、マラセチア皮膚炎の最も一般的な基礎疾患です。
2. 脂漏症 脂漏症により皮脂が過剰に分泌されると、マラセチアのエサが豊富になり、増殖が促進されます。
3. 内分泌疾患 甲状腺機能低下症やクッシング症候群などのホルモン異常により、皮膚の抵抗力が低下し、マラセチアが増殖しやすくなります。
4. 免疫抑制 免疫抑制剤の使用、長期的なステロイド治療、高齢、ストレスなどにより、免疫機能が低下すると、マラセチアの増殖を抑えられなくなります。
5. 細菌感染との併発 膿皮症などの細菌感染と併発することが多く、相互に症状を悪化させます。
環境要因
高温多湿の環境は、マラセチアの繁殖に最適な条件です。特に以下の部位で発症しやすい傾向があります。
耳の中: 通気性が悪く、湿度が高い
指の間: 散歩後に濡れたまま放置されやすい
脇の下: 皮膚同士が密着し、蒸れやすい
股: 湿度が高く、皮脂も多い
顔のしわ: 短頭種では特に蒸れやすい
好発犬種
特定の犬種がマラセチア皮膚炎にかかりやすい傾向があります。
ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
シー・ズー
アメリカン・コッカー・スパニエル
バセット・ハウンド
ダックスフンド
フレンチ・ブルドッグ
パグ
マラセチア皮膚炎の症状
マラセチア皮膚炎の症状は、他の皮膚疾患と似ていますが、いくつか特徴的なサインがあります。
特徴的な症状
1. 強いかゆみ マラセチア皮膚炎では、激しいかゆみが見られます。愛犬が頻繁に体を掻いたり、舐めたり、噛んだりします。特に耳や足先を執拗に舐める行動が目立ちます。
2. 皮膚の赤み 感染部位が赤く炎症を起こします。慢性化すると、皮膚が肥厚し、黒ずんでゴワゴワした感触になります。
3. 皮膚のベタつき マラセチアが増殖した部位は、ベタベタと油っぽくなります。触ると脂っぽい感触があり、被毛もベトついています。
4. 特有のにおい マラセチア皮膚炎の最も特徴的な症状は、独特の酵母臭です。アルコール発酵による甘酸っぱいにおい、またはカビ臭いにおいがします。このにおいは、シャンプー🛒しても数日で再び強くなります。
5. 脱毛 慢性的な炎症により、脱毛が見られます。掻き壊しによる二次的な脱毛も起こります。
6. 外耳炎の併発 マラセチア皮膚炎では、外耳炎を併発することが非常に多いです。耳の中が赤く腫れ、ベタベタした茶色い耳垢が大量に出ます。強いにおいを伴います。
症状が現れやすい部位
耳: 外耳道、耳介の内側
顔: 口周り、目の周り、しわの間(短頭種)
四肢: 足先、指の間、前足の内側
体幹: 脇の下、股、腹部、しっぽの付け根
マラセチア皮膚炎の診断
マラセチア皮膚炎の診断は、以下の手順で行われます(参考:マラセチアの診断)。
問診と身体検査
発症時期、症状の経過、好発犬種かどうか、生活環境などを聞き取り、皮膚の状態とにおいを確認します。
セロハンテープ法(スタンプ法)
マラセチアの診断に最も一般的に使用される方法です。
手順:
セロハンテープを病変部に押し当てる
テープをスライドガラスに貼り付ける
染色液で染色する
顕微鏡で観察する
顕微鏡下で、ピーナッツ型のマラセチアが多数観察されれば、マラセチア皮膚炎と診断されます。
綿棒法(耳の場合)
外耳炎を併発している場合、綿棒で耳垢を採取し、顕微鏡で観察します。
除外診断
他の皮膚疾患を除外するため、必要に応じて以下の検査を実施します。
マラセチア皮膚炎の治療法
マラセチア皮膚炎の治療は、マラセチアの数を減らすことと、基礎疾患の管理が重要です(参考:マラセチアの治療)。
薬用シャンプー療法
マラセチア皮膚炎治療の基本は、抗真菌シャンプー🛒です。
有効成分:
2%ミコナゾール + 2%クロルヘキシジン
この組み合わせが最も効果的で、マラセチアと細菌の両方に作用します。
使用頻度: 週2回を3週間継続します。症状の改善に合わせて、週1回へと減らしていきます。
シャンプーの手順:
ぬるま湯で全身を濡らす
薬用シャンプーを泡立て、優しく塗布(特に患部を重点的に)
10分間放置(薬剤を浸透させる)
しっかりとすすぐ
完全に乾かす(ドライヤー使用、生乾きは厳禁)
保湿ケア: マラセチア皮膚炎の犬は皮膚バリア機能が低下しているため、シャンプー後は保湿剤を使用し、乾燥を防ぎます。
抗真菌薬(内服薬)
広範囲に症状がある場合や、シャンプー療法だけでは改善しない場合、抗真菌薬の内服が必要です。
主な抗真菌薬:
イトラコナゾール: 最もよく使用される抗真菌薬
ケトコナゾール: 効果は高いが、副作用に注意が必要
使用期間: 通常4〜6週間の投与が必要です。症状が重い場合や再発を繰り返す場合は、より長期間の治療が必要になります。
副作用と注意点: 抗真菌薬は肝臓に負担をかけるため、定期的な血液検査で肝機能をチェックする必要があります。
外用薬
局所的な病変には、抗真菌剤の外用薬を使用します。
ミコナゾール軟膏・クリーム
ケトコナゾールローション
テルビナフィンスプレー
基礎疾患の治療
マラセチア皮膚炎が再発を繰り返す場合、必ず基礎疾患があります。
治療法の比較表
マラセチア皮膚炎の治療法を比較してみましょう。
| 治療法 | 効果の速さ | 適用範囲 | 副作用 | 費用(月額目安) | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 薬用<a href="https://rpx.a8.net/svt/ejp?a8mat=45BP2Z+2BCPGY+2HOM+BWGDT&rakuten=y&a8ejpredirect=https%3A%2F%2Fhb.afl.rakuten.co.jp%2Fhgc%2Fg00t45p4.2bo119bb.g00t45p4.2bo12e2a%2Fa25080803315_45BP2Z_2BCPGY_2HOM_BWGDT%3Fpc%3Dhttps%253A%252F%252Fitem.rakuten.co.jp%252Ftsurunishi%252F90xb0823n2h7q%252F%26amp%3Bm%3Dhttp%253A%252F%252Fm.rakuten.co.jp%252Ftsurunishi%252Fi%252F10001038%252F%26amp%3Brafcid%3Dwsc_i_is_33f72da33714639c415e592c9633ecd7" target="_blank" rel="nofollow sponsored">シャンプー</a> | 中程度(2〜3週間) | 全身 | ほとんどなし | 3千〜5千円 | 安全性が高い、基本治療 | 手間がかかる、週2回必要 |
| イトラコナゾール | 速い(1〜2週間) | 全身 | 肝機能障害(稀) | 1〜3万円 | 効果が高い、服用が楽 | 高額、肝機能チェック必要 |
| ケトコナゾール | 速い(1〜2週間) | 全身 | 肝機能障害、食欲不振 | 5千〜1.5万円 | 効果が高い | 副作用が比較的多い |
| 外用薬 | 中程度 | 局所的 | ほとんどなし | 数千円 | 副作用が少ない | 広範囲には不向き |
| 保湿剤 | 補助的 | 全身 | なし | 数千円 | 皮膚バリア改善 | 単独では効果なし |
多くの場合、薬用シャンプーと内服薬を併用することで、より早く効果的に治療できます。
マラセチア皮膚炎の再発予防
マラセチア皮膚炎は再発しやすい疾患です。以下の対策で再発を防ぎましょう(参考:マラセチアの予防)。
基礎疾患の管理
アレルギー管理: アトピー性皮膚炎や食物アレルギーがある場合、継続的な治療が不可欠です。療法食の使用、環境アレルゲンの除去、適切な薬物療法を続けましょう。
ホルモン管理: 甲状腺機能低下症などのホルモン異常がある場合、定期的な検査と適切な治療を継続します。
定期的なスキンケア
シャンプー🛒: 症状が改善した後も、月2〜4回の薬用シャンプーで皮膚を清潔に保ちます。
ブラッシング: 定期的なブラッシングで、古い角質を取り除き、皮膚の通気性を保ちます。被毛タイプに合ったブラシを選びましょう。
保湿: 皮膚バリア機能をサポートするため、保湿剤を定期的に使用します。
環境管理
湿度管理: 室内の湿度を50〜60%に保ち、高温多湿を避けます。除湿機やエアコンを活用しましょう。
清潔な生活空間: 寝床やタオルをこまめに洗濯し、清潔に保ちます。
散歩後のケア: 雨の日の散歩後や、足が濡れた後は、必ず乾かします。指の間もしっかりと乾かすことが重要です。
栄養管理
バランスの良い食事: 良質なタンパク質、オメガ3脂肪酸、ビタミンE、亜鉛などを含む食事を与えます。
食物アレルギーへの対応: 食物アレルギーが疑われる場合、療法食(加水分解タンパク質や新奇タンパク質)への切り替えを検討します。
早期発見・早期治療
定期チェック: 週1回は愛犬の皮膚と耳を全身チェックし、においの変化にも注意します。
すぐに受診: ベタつき、におい、かゆみなどの初期症状が見られたら、すぐに動物病院を受診しましょう。早期治療で症状の悪化を防げます。
よくある質問
Q: マラセチア皮膚炎は人に感染しますか? A: いいえ、犬のマラセチアは通常人には感染しません。マラセチアは犬特有の菌株で、人間には感染しにくい特性があります。
Q: シャンプー🛒だけで治りますか? A: 軽度で局所的な症状であれば、薬用シャンプーのみで改善することもあります。しかし、広範囲や慢性化している場合は、内服薬の併用が必要です。
Q: 治療をやめるとすぐ再発します。なぜですか? A: 基礎疾患が管理できていない可能性が高いです。アレルギー性皮膚炎や脂漏症などの基礎疾患を適切に治療しないと、マラセチアは繰り返し増殖します。
Q: におい だけで判断できますか? A: 独特の酵母臭はマラセチア皮膚炎の特徴的なサインですが、確定診断には顕微鏡検査が必要です。においが気になったら、早めに獣医師に相談しましょう。
Q: 予防のために定期的にシャンプーしても大丈夫ですか? A: はい、マラセチア皮膚炎のリスクが高い犬では、予防的なシャンプー(月2〜4回)が推奨されます。ただし、保湿ケアも忘れずに行いましょう。
まとめ
犬のマラセチア皮膚炎は、皮膚に常在する酵母菌マラセチアが異常に増殖することで起こる皮膚炎で、強いかゆみ、皮膚のベタつき、特有の酵母臭を伴います。
マラセチア皮膚炎の重要ポイント:
主な原因: アレルギー、脂漏症、ホルモン異常などの基礎疾患
特徴的な症状: ベタつき、甘酸っぱい酵母臭、強いかゆみ
診断: セロハンテープ法による顕微鏡検査
治療: 2%ミコナゾール+2%クロルヘキシジンシャンプー(週2回)+ 抗真菌薬(4〜6週間)
再発予防: 基礎疾患の管理、定期的なスキンケア、環境管理
マラセチア皮膚炎は適切な治療により改善しますが、基礎疾患がある場合は再発を繰り返します。日常的なスキンケア、環境管理、栄養管理を心がけ、早期発見・早期治療を行うことが重要です。独特のにおいやベタつきに気づいたら、早めに獣医師に相談しましょう。






