愛犬の被毛にフケが大量に付着している、肩や背中が真っ白になっている──こんな症状が見られたら、何らかの皮膚トラブルのサインかもしれません。犬のフケは、単なる乾燥だけでなく、脂漏症、アレルギー、寄生虫感染など、様々な原因によって引き起こされます。
この記事では、犬のフケの原因、乾性と脂性の2タイプの違い、診断方法、シャンプー🛒や保湿による改善方法から、予防策まで、獣医師の視点から詳しく解説します。
犬のフケとは?
フケとは、皮膚の角質層が剥がれ落ちたものです。正常な皮膚でも、ターンオーバー(皮膚の新陳代謝)により、古い角質細胞が自然に剥がれ落ちます。

正常なフケ:
肉眼ではほとんど見えない
少量
被毛をかき分けても目立たない
異常なフケ:
肉眼で容易に確認できる
大量
被毛の表面に白く付着
衣服や寝具に落ちる

犬の皮膚は、人間の皮膚の約1/3の厚さしかなく、非常に薄くデリケートです。そのため、乾燥しやすく、フケが出やすい傾向があります(参考:犬のフケの原因)。
正常な皮膚のターンオーバー
犬の正常な皮膚のターンオーバーは約3週間です。
ターンオーバーのサイクル:
基底層で新しい細胞が生まれる
細胞が徐々に表面に押し上げられる
角質層に到達し、角化(硬くなる)
最終的に剥がれ落ちる
このサイクルが正常であれば、フケは目立ちません。
フケの2つのタイプ:乾性と脂性
犬のフケには、乾性フケと脂性フケの2タイプがあります。これらは脂漏症の症状として現れることが多いです(参考:犬の脂漏症)。
乾性脂漏症(乾性フケ)
特徴:
パラパラと乾燥したフケ
白い粉状
被毛がパサパサ
皮膚が乾燥してカサカサ
原因:
皮脂腺の機能低下
皮膚のバリア機能低下
環境の乾燥(冬、暖房)
脂性脂漏症(脂性フケ)
特徴:
ベタベタと湿ったフケ
黄色っぽい、または茶色っぽい
被毛がギトギト、ベタつく
皮膚が脂っぽい
特有の油臭、または酵母臭
原因:
皮脂の過剰分泌
マラセチアの増殖
内分泌疾患
混合型
乾性と脂性が混在することもあります。
背中は乾性、耳や脇は脂性
季節によって変わる
フケの原因
フケを引き起こす原因は多岐にわたります。
1. 脂漏症(最も一般的)
原因:
遺伝的素因
内分泌疾患(甲状腺機能低下症、クッシング症候群)
栄養不良
特徴:
慢性的なフケ
皮膚の赤み、痒み
二次的な細菌感染、マラセチア感染
好発犬種:
アメリカン・コッカー・スパニエル
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
バセット・ハウンド
ダックスフンド
2. 環境要因(乾燥)
原因:
冬の乾燥
暖房、エアコンの使用
湿度の低い環境
特徴:
季節性(秋~冬に悪化)
乾性フケ
皮膚のかゆみ
3. シャンプーの問題
原因:
不適切なシャンプー🛒の使用(人間用、刺激の強いもの)
シャンプーのしすぎ(週3回以上)
シャンプー不足(月1回未満)
すすぎ不足(シャンプー成分の残留)
不十分な乾燥(生乾き)
特徴:
シャンプー後に悪化
皮膚の赤み、痒み
4. アレルギー
食物アレルギー:
特定のタンパク質に対するアレルギー
フケ、痒み、外耳炎
[アトピー性皮膚炎](/articles/dog-atopic-dermatitis-causes-symptoms-management):
環境アレルゲン(花粉、ハウスダスト)
フケ、強い痒み、皮膚の赤み
[ノミアレルギー](/articles/flea-allergy-dermatitis-severe-itching-prevention):
ノミの唾液に対するアレルギー
フケ、激しい痒み
5. 寄生虫
ツメダニ症(Walking Dandruff):
ツメダニの寄生
大量の乾性フケ(背中に多い)
フケが動いて見える(ダニの移動)
軽度~中程度の痒み
人にも感染
[疥癬](/articles/dog-scabies-sarcoptic-mange-intense-itching):
ヒゼンダニの寄生
フケ、かさぶた、激しい痒み
[毛包虫症](/articles/demodex-mange-young-dogs-common-why-treatment):
ニキビダニの異常増殖
フケ、脱毛
6. 真菌感染
[皮膚糸状菌症](/articles/ringworm-fungal-infection-dogs-circular-hair-loss):
真菌(カビ)の感染
円形脱毛、フケ、かさぶた
マラセチア皮膚炎:
マラセチア(酵母菌)の異常増殖
脂性フケ、ベタつき、酵母臭、痒み
7. 内分泌疾患
甲状腺機能低下症:
甲状腺ホルモンの不足
乾性フケ、脱毛、皮膚の乾燥、肥厚
クッシング症候群:
コルチゾールの過剰
薄い皮膚、フケ、脱毛
8. 栄養不良
原因:
低品質なフード
必須脂肪酸(オメガ3、オメガ6)の不足
ビタミン、ミネラルの不足
特徴:
被毛のパサつき、光沢の喪失
乾性フケ
皮膚の乾燥
9. 高齢
原因:
皮脂腺の機能低下
皮膚のバリア機能低下
代謝の低下
特徴:
乾性フケ
被毛の質の低下
10. ストレス
原因:
環境の変化
長時間の留守番
運動不足
特徴:
一時的なフケの増加
過度のグルーミング
診断方法
フケの原因を特定するため、獣医師は以下の検査を行います(参考:フケの診断)。
1. 問診と身体検査
フケの発生時期、経過
フケのタイプ(乾性、脂性)
痒みの有無
食事内容
シャンプー🛒の頻度と種類
生活環境
2. 皮膚検査
被毛検査:
顕微鏡でツメダニ、ノミ卵、真菌を確認
皮膚掻爬検査:
ニキビダニ、ヒゼンダニの検出
セロハンテープ法:
マラセチアの検出
3. 真菌培養検査
皮膚糸状菌症の確定診断
4. 血液検査
甲状腺機能(T4、TSH)
副腎機能(ACTH刺激試験)
一般血液検査
5. アレルギー検査
アレルゲン特異的IgE検査
除去食試験
フケの改善方法
フケの改善には、原因に応じた治療と、適切なスキンケアが重要です。
1. 薬用シャンプー療法
フケの改善に最も重要なのは、適切なシャンプーです。
乾性脂漏症用シャンプー
成分:
保湿成分(セラミド、ヒアルロン酸)
低刺激性
使用頻度:
週1~2回
脂性脂漏症用シャンプー
成分:
脱脂成分(過酸化ベンゾイル、硫化セレン、サリチル酸)
抗真菌成分(ミコナゾール、クロルヘキシジン)
使用頻度:
週2~3回(初期)
週1回(改善後)
シャンプーの正しい方法
手順:
ブラッシング: シャンプー前に全身をブラッシング(フケ、もつれの除去)
予洗い: ぬるま湯(35~37℃)で全身を濡らす(3~5分)
シャンプー: 適量を手のひらで泡立て、全身に塗布
放置: 10分間放置(薬剤を浸透させる)※重要
マッサージ: 優しく皮膚をマッサージ
すすぎ: しっかりとすすぐ(シャンプー成分を完全に除去)
乾燥: タオルドライ後、ドライヤーで完全に乾かす
重要ポイント:
ドライヤーは冷風~微温風(熱風は避ける)
生乾きは厳禁(細菌、マラセチアの増殖)
シャンプー後は必ず保湿
2. 保湿ケア
乾性フケには、保湿が非常に重要です。
保湿剤:
犬用保湿ローション、スプレー
セラミド配合製品
オートミール配合製品
使用方法:
シャンプー後、完全に乾かしてから塗布
毎日または2~3日に1回
3. 薬物療法
基礎疾患がある場合、薬物療法が必要です。
抗真菌薬:
イトラコナゾール(マラセチア、皮膚糸状菌症)
抗生物質:
セファレキシン(二次的な細菌感染)
ホルモン補充療法:
レボチロキシン(甲状腺機能低下症)
トリロスタン(クッシング症候群)
抗ヒスタミン剤、オクラシチニブ:
アレルギー性皮膚炎
駆虫薬:
イソオキサゾリン系(ツメダニ、疥癬)
4. 栄養管理
必須脂肪酸の補給:
オメガ3脂肪酸(EPA、DHA): 魚油サプリメント🛒
オメガ6脂肪酸: 適切なドッグフード
高品質なドッグフード:
良質なタンパク質
ビタミンE、A、亜鉛
推奨サプリメント:
魚油(オメガ3)
ビタミンE
亜鉛
5. 環境管理
湿度管理:
室内湿度を50~60%に保つ
加湿器の使用(冬場)
適温維持:
室温20~25℃
暖房の直風を避ける
フケ改善方法の比較表
様々なフケ改善方法を比較してみましょう。
| 方法 | 乾性フケ | 脂性フケ | 効果の速さ | 費用(月額) | 重要度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 保湿<a href="https://rpx.a8.net/svt/ejp?a8mat=45BP2Z+2BCPGY+2HOM+BWGDT&rakuten=y&a8ejpredirect=https%3A%2F%2Fhb.afl.rakuten.co.jp%2Fhgc%2Fg00r35a4.2bo1107b.g00r35a4.2bo125c8%2Fa25080803315_45BP2Z_2BCPGY_2HOM_BWGDT%3Fpc%3Dhttps%253A%252F%252Fitem.rakuten.co.jp%252Frcmdbe%252Fjr-4528636804176%252F%26amp%3Bm%3Dhttp%253A%252F%252Fm.rakuten.co.jp%252Frcmdbe%252Fi%252F10902049%252F%26amp%3Brafcid%3Dwsc_i_is_33f72da33714639c415e592c9633ecd7" target="_blank" rel="nofollow sponsored">シャンプー</a> | ◎ | △ | 中(2~4週) | 2千〜4千円 | ★★★★★ |
| 脱脂シャンプー | △ | ◎ | 中(2~4週) | 2千〜5千円 | ★★★★★ |
| 保湿剤 | ◎ | ✕ | 遅い(4~8週) | 2千〜5千円 | ★★★★☆ |
| オメガ3サプリ | ◎ | ◯ | 遅い(4~12週) | 2千〜4千円 | ★★★★☆ |
| 抗真菌薬 | ✕ | ◎ | 速い(1~2週) | 5千〜1.5万円 | ★★★☆☆ |
| ホルモン治療 | ◯ | ◯ | 遅い(8~12週) | 5千〜2万円 | ★★★★☆ |
| 加湿器 | ◎ | ✕ | 補助的 | 電気代のみ | ★★★☆☆ |
最も効果的な組み合わせ: 適切なシャンプー + 保湿 + オメガ3サプリ + 基礎疾患の治療
予防と日常ケア
フケを予防し、健康な皮膚を維持するための日常ケアです。
1. 定期的なブラッシング
頻度:
短毛種: 週2~3回
長毛種: 毎日
効果:
フケ、抜け毛の除去
皮脂の分布
血行促進
皮膚の観察
ブラシの選択:
被毛タイプに合ったブラシを使用
2. 適切なシャンプー頻度
推奨頻度:
通常: 月1~2回
脂漏症: 週1~2回
乾燥肌: 月1回 + 保湿
注意:
シャンプーのしすぎは皮膚を乾燥させる
犬用シャンプー🛒を使用(人間用は避ける)
3. バランスの良い栄養
重要栄養素:
良質なタンパク質
オメガ3脂肪酸(魚、魚油)
オメガ6脂肪酸(植物油)
ビタミンE、A
亜鉛
4. 環境管理
冬場:
加湿器で湿度50~60%維持
暖房の直風を避ける
夏場:
エアコンの設定温度を適切に
除湿しすぎない
5. ストレス管理
適度な運動(毎日の散歩)
遊びの時間
安心できる環境
6. 定期的な健康診断
年1~2回の健康診断
皮膚の状態チェック
血液検査(内分泌疾患の早期発見)
受診のタイミング
以下の症状が見られたら、動物病院を受診してください。
すぐに受診:
大量のフケ(被毛が真っ白になる)
激しい痒み
脱毛を伴う
皮膚の赤み、ただれ、出血
悪臭を伴う
フケが動いて見える(ツメダニ症疑い)
早めの受診:
フケが2週間以上続く
季節に関係なくフケが出る
シャンプーしてもフケが改善しない
被毛のベタつき
体重減少、多飲多尿など全身症状
よくある質問
Q: シャンプーの頻度はどれくらいが適切ですか? A: 通常は月1~2回が適切です。ただし、脂性脂漏症の場合は週2~3回(初期)から開始し、改善に応じて週1回に減らします。乾性脂漏症では、シャンプーのしすぎは逆効果なので、月1回程度とし、保湿を重視します。
Q: 人間用のシャンプーを使ってもいいですか? A: いいえ、使用しないでください。人間の皮膚はpH5.5前後の弱酸性ですが、犬の皮膚はpH7.0~7.5の弱アルカリ性です。人間用シャンプーは犬の皮膚には刺激が強く、皮膚バリアを破壊し、フケを悪化させます。必ず犬用シャンプーを使用してください。
Q: フケが出ているのは乾燥が原因ですか、それとも病気ですか? A: 両方の可能性があります。冬場の一時的な乾燥によるフケもありますが、2週間以上続く、大量のフケ、痒みや脱毛を伴う場合は、脂漏症、アレルギー、寄生虫、内分泌疾患などの病気が原因の可能性が高いです。自己判断せず、獣医師の診察を受けてください。
Q: 保湿剤はどのようなものを選べばいいですか? A: 犬用の保湿ローションやスプレーを選びます。セラミド配合、オートミール配合、低刺激性のものが推奨されます。人間用の保湿剤は、成分が犬に適さない場合があるので避けてください。獣医師に相談して、愛犬の皮膚状態に合ったものを選びましょう。
Q: フケと一緒にベタつきもあります。どうすればいいですか? A: ベタつきを伴うフケは、脂性脂漏症またはマラセチア皮膚炎の可能性が高いです。脱脂作用のある薬用シャンプー(過酸化ベンゾイル、ミコナゾール配合)を週2~3回使用し、必要に応じて抗真菌薬の内服が必要です。必ず動物病院を受診してください。
Q: 治療費はどれくらいかかりますか? A: 原因によって異なります。単純な乾燥であれば、適切なシャンプー・保湿剤で月3千〜5千円程度。脂漏症では初診・検査に1万円前後、その後の薬用シャンプー・薬代で月5千〜1.5万円程度。内分泌疾患が原因の場合、検査に2~5万円、生涯治療に月5千〜2万円程度かかります。
まとめ
犬のフケは、単なる乾燥だけでなく、脂漏症、アレルギー、寄生虫感染、内分泌疾患など、様々な原因によって引き起こされます。フケには乾性と脂性の2タイプがあり、それぞれ適切なケアが異なります。
フケ改善の重要ポイント:
タイプの見極め: 乾性(パサパサ)vs 脂性(ベタベタ)
原因の特定: 脂漏症、アレルギー、寄生虫、内分泌疾患、栄養不良など
シャンプー: 適切な薬用シャンプー、週1~2回、10分放置、完全乾燥
保湿: 乾性フケには保湿剤が必須、シャンプー後に使用
栄養: オメガ3脂肪酸、ビタミン、ミネラルの補給
環境: 湿度50~60%維持、適温管理
予防: 定期的なブラッシング🛒、適切なシャンプー頻度、ストレス管理
フケが2週間以上続く、大量に出る、痒みや脱毛を伴う場合は、必ず動物病院を受診しましょう。適切な診断と治療により、多くの場合フケは改善します。日頃から愛犬の皮膚と被毛の状態を観察し、早期発見・早期対処を心がけてください。






