
愛犬との暮らしの中で、緊急事態は予告なく訪れます。突然の出血、窒息、中毒事故——そんな時、飼い主の適切な応急処置が愛犬の命を左右することがあります。この記事では、犬の緊急事態における応急処置の基本から、具体的な対処法まで詳しく解説します。
獣医師の診察を受けるまでの間に、飼い主ができることを知っておくことは非常に重要です。Team Hopeの応急処置ガイドでも強調されているように、応急処置の知識は愛犬の命を守る最初の防衛線となります。
1. 緊急事態への備え

1.1 救急用品の準備
緊急事態に備えて、犬用の応急処置キットを用意しておきましょう。杉並区獣医師会が推奨する基本的なキット内容は以下の通りです:
基本アイテム
滅菌ガーゼパッド(複数サイズ)
伸縮包帯・粘着テープ
消毒液(イソジンなど)
ペット用体温計🛒
ピンセット・はさみ
使い捨て手袋
エリザベスカラー
追加で用意したいもの
口輪(痛みで噛むことがあるため)
毛布やタオル
懐中電灯
ペット用キャリー
1.2 緊急連絡先の確認
緊急時に慌てないよう、以下の連絡先を見やすい場所に貼っておきましょう:
かかりつけ動物病院の電話番号・住所
夜間救急動物病院の連絡先
ペット救急相談ダイヤル
夜間や休日に緊急事態が起きた場合に備え、24時間対応の救急病院を事前に調べておくことが重要です。
1.3 愛犬の情報記録
緊急時に獣医師へ正確な情報を伝えるため、以下の内容を記録しておきましょう:
現在の体重
予防接種歴・既往歴
服用中の薬
アレルギーの有無
普段の食事内容
日頃から愛犬の健康状態をチェックする習慣をつけることで、異常にいち早く気づくことができます。
2. 出血・外傷の応急処置
2.1 止血の基本テクニック
VCA Animal Hospitalsによると、出血を止める最も効果的な方法は直接圧迫法です。
止血の手順
手袋を装着(ビニール袋でも可)
出血部位を確認
清潔なガーゼを傷口に当てる
3〜5分間しっかり圧迫
圧迫したまま包帯で固定
重要なのは、一度圧迫を始めたら血が止まるまで離さないことです。途中で確認のために離すと、せっかくできかけた血餅が壊れてしまいます。
2.2 傷口の洗浄と保護
軽い切り傷やすり🛒傷の場合は、以下の手順で処置します:
流水で洗浄:傷口を流水で優しく洗い、土やゴミを除去
消毒:希釈したイソジンやクロルヘキシジンで消毒
保護:抗菌軟膏を塗り、ガーゼで覆う
デビフペットの応急手当ガイドでは、過酸化水素水(オキシドール)は皮膚細胞を傷つけ、治癒を遅らせる可能性があるため推奨されていません。
2.3 重傷時の対応
動脈出血の見分け方
鮮やかな赤色の血が脈拍に合わせて噴き出す場合は、動脈からの出血です。この場合は傷口より心臓に近い部分を強く縛り、すぐに病院へ向かいましょう。
ショック症状のサイン
青白い歯茎
弱く速い脈拍
浅く速い呼吸
体温低下
ぐったりした様子
ショック症状が見られたら、犬を横に寝かせ、毛布で体を温めながら直ちに病院へ搬送してください。
3. 窒息・呼吸困難への対応
3.1 窒息のサイン
アメリカン・ケンネル・クラブ(AKC)によると、窒息している犬には以下のサインが見られます:
口を開けてパニック状態
首を伸ばして呼吸しようとする
舌や歯茎が青紫色(チアノーゼ)
前足で口元を掻く
「ヒューヒュー」という異常な呼吸音
3.2 異物除去の方法
Step 1:口内の確認
犬の口を大きく開け、舌を引き出して異物が見えるか確認します。見える場合はピンセットや指で除去しますが、無理に押し込まないよう注意してください。
Step 2:犬のハイムリック法
アメリカ赤十字社が推奨する方法:
小型犬:背中を自分の胸に当て、両手で肋骨の下を抱え、上方向に5回素早く圧迫
大型犬:横に寝かせ、肋骨の後ろに手のひらを当て、上方向に5回素早く圧迫
Step 3:背部叩打法
肩甲骨の間を手のひらで5回強く叩きます。
3.3 心肺蘇生(CPR)
意識がなく呼吸も心拍もない場合は、直ちにCPRを開始します。
人工呼吸
犬を横に寝かせる
首をまっすぐに伸ばし、気道を確保
小型犬は口と鼻を覆い、大型犬は鼻だけを覆う
胸が膨らむまで息を吹き込む
2回呼吸を行う
胸骨圧迫
心臓の位置(前足の肘が当たる部分)を確認
1分間に100〜120回のペースで圧迫
胸の深さの1/3〜1/2を圧迫
30回圧迫後、2回呼吸を行う
このサイクルを動物病院🛒に到着するまで続けます。
4. 中毒事故への対処
4.1 危険な食べ物
ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)が警告する、犬に危険な食べ物:
チョコレート
チョコレートに含まれるテオブロミンは、犬の体内で分解されにくく、中毒を引き起こします。hottoによると、体重1kgあたりテオブロミン20mgで症状が出始め、ダークチョコレートは特に危険です。
玉ねぎ・ニンニク
有機チオ硫酸化合物が赤血球を破壊し、溶血性貧血を引き起こします。体重1kgあたり15〜30g🛒で中毒リスクがあり、加熱しても毒性は消えません。
ぶどう・レーズン
原因物質は特定されていませんが、急性腎不全を引き起こす可能性があります。体重1kgあたり生ぶどう3g、レーズン1gでも危険です。
キシリトール
コーネル大学獣医学部によると、キシリトールは犬に対して極めて毒性が高く、摂取後30分〜2時間で急激な低血糖を引き起こし、肝不全につながることもあります。
愛犬の食事管理については、正しいフード選びの科学も参考にしてください。
4.2 中毒の症状
中毒症状は通常、摂取後数時間〜半日以内に現れます:
嘔吐・下痢
震え・ふらつき
呼吸の異常
けいれん
意識の混濁
4.3 誤飲時の対処
やってはいけないこと
自己判断で吐かせる(かえって危険な場合がある)
牛乳を飲ませる(効果がない上に下痢の原因になる)
様子を見る(症状が出てからでは遅い場合がある)
正しい対処
何をどれくらい食べたか確認
食べた時間を記録
パッケージ🛒を持参
すぐに動物病院へ連絡
緊急時はASPCAペット毒物管理センター(米国:888-426-4435)や、かかりつけ動物病院に連絡しましょう。
5. 熱中症への対応
5.1 熱中症の症状
アニコム損保の解説によると、犬の熱中症には以下の症状が見られます:
初期症状
激しいパンティング(舌を出してハァハァ)
大量のよだれ
赤い舌と歯茎
元気がない
重症化のサイン
ぐったりして動けない
嘔吐・下痢
ふらつき・よろめき
体温40度以上
意識混濁
5.2 応急冷却の方法
熱中症が疑われたら、以下の手順で体を冷やしながら病院へ向かいます:
涼しい場所へ移動(日陰、エアコンの効いた室内)
常温の水道水で体を濡らす
濡れタオルを体にかける
扇風機や団扇で風を送る
首、脇の下、内股を重点的に冷やす
5.3 危険な冷やし方
氷水は使わない
氷水で急激に冷やすと、末梢血管が収縮して熱が体内にこもり、逆効果になります。必ず常温の水を使いましょう。
熱中症予防のためにも、愛犬との運動は適度に行うことが大切です。特に暑い季節は早朝や夕方の涼しい時間帯を選びましょう。
6. 骨折・捻挫の対応
6.1 骨折のサイン
足を地面につけない、浮かせている
患部が腫れている
触ると激しく痛がる
足が不自然な角度に曲がっている
歩き方がおかしい
6.2 患部の固定
AKCの応急処置ガイドによると、骨折の固定は以下の手順で行います:
固定の方法
割り箸や段ボール🛒を添え木として準備
骨折部位に沿って添え木を当てる
包帯やタオルで優しく固定
きつく巻きすぎないよう注意
重要な注意点
犬が嫌がったら無理に固定しない
肩や腰など固定が難しい部位は無理をしない
骨が皮膚から出ている場合は清潔なガーゼで覆うだけ
6.3 安全な搬送方法
小型犬の場合
キャリーケースに入れ、周囲に毛布やタオルを詰めて動かないようにします。
大型犬の場合
大きな毛布やタオルの上に犬を寝かせ、両端を持って担架のように運びます。できれば2人以上で運搬しましょう。
骨や関節の健康は年齢とともに変化します。シニア犬のケアについても知っておくと、予防につながります。
7. けいれん・発作への対応
7.1 発作中の対処
犬が突然けいれん発作を起こした場合:
やるべきこと
周囲の危険物を取り除く(テーブルの角など)
静かに見守る
発作の様子と時間を記録
部屋を暗くし、静かな環境を作る
やってはいけないこと
口に手や物を入れる(舌を噛む心配は不要、かまれる危険がある)
抱き上げる(暴れて落下の危険)
大声で呼びかける(刺激になる)
7.2 発作後のケア
発作は通常2〜3分で治まります。発作後は:
優しく声をかけて落ち着かせる
水を飲ませる(自分で飲める場合のみ)
発作の持続時間、様子を記録
できるだけ早く動物病院を受診
5分以上続く発作や、短時間に繰り返す発作は緊急事態です。直ちに病院へ搬送してください。
8. 緊急時の搬送と病院対応
8.1 搬送時の注意点
安静を保つ:できるだけ動かさない
保温する:ショック状態では体温が下がる
気道を確保:嘔吐物で窒息しないよう頭の位置に注意
記録を持参:既往歴、服用中の薬のリスト
8.2 獣医師への伝え方
緊急時は慌てがちですが、以下の情報を伝えましょう:
いつ症状が始まったか
何を食べた・触れた可能性があるか
どんな症状が見られるか
普段とどう違うか
行った応急処置の内容
緊急時の医療費は高額になることもあります。ペット保険と医療費の備えについて事前に検討しておくと安心です。
まとめ
犬の緊急事態への対応で最も大切なのは、冷静さを保つことです。パニックになると適切な判断ができなくなります。
覚えておきたいポイント
応急処置キットを常備し、緊急連絡先を把握しておく
出血は直接圧迫、窒息はハイムリック法が基本
中毒が疑われたら自己判断で吐かせず、すぐに病院へ
熱中症は常温の水で冷却、氷水は使わない
骨折は無理に固定せず、安静に搬送
応急処置はあくまで獣医師の診察を受けるまでのつなぎです。処置後は必ず動物病院を受診しましょう。
AVMA(米国獣医師会)も述べているように、「応急処置は獣医療の代わりにはならないが、獣医療を受けるまでの間に愛犬の命を救うことができる」のです。
よくある質問(FAQ)
Q: 犬の正常な体温は何度ですか?
A: 犬の正常な体温は38〜39度です。40度を超えると発熱、37度以下は低体温と判断します。体温は直腸で測定します。
Q: 救急キットには何を入れるべきですか?
A: 基本的には、滅菌ガーゼ、包帯、消毒液、体温計🛒、ピンセット、手袋、エリザベスカラーを用意しましょう。口輪や毛布もあると便利です。
Q: 夜間に緊急事態が起きたらどうすればいいですか?
A: 事前に夜間対応の救急動物病院を調べておきましょう。多くの地域に24時間対応の動物救急センターがあります。かかりつけ医に紹介を受けることもできます。
Q: 犬が何か飲み込んだが、何かわからない場合はどうすればいいですか?
A: まず落ち着いて、犬の様子を観察しましょう。嘔吐、よだれ、元気がないなどの症状があれば、すぐに動物病院に連絡してください。症状がなくても、念のため獣医師に相談することをおすすめします。














