愛犬が怪我をして血が止まらない状況は、飼い主にとって非常に焦る緊急事態です。適切な止血法を知っているかどうかが、愛犬の命を左右することもあります。この記事では、犬の出血時に行うべき正しい止血法、絶対にやってはいけない間違った対応、そして獣医師の診察が必要な危険なサインまで、詳しく解説します。
出血の種類:動脈出血と静脈出血の違い
出血には大きく分けて動脈出血と静脈出血があり、それぞれ特徴と危険度が異なります。VCA動物病院の獣医師によれば、出血の種類を見分けることが、適切な応急処置🛒の第一歩です。

動脈出血の特徴
鮮やかな赤色の血液
心臓の鼓動に合わせて噴き出す(拍動性)
出血量が多く、急速に失血する
非常に危険で緊急性が高い
静脈出血の特徴
暗い赤色の血液
ゆっくりと流れ出る(持続性)
比較的コントロールしやすい
適切な圧迫で止血可能

毛細血管出血の特徴
じわじわと滲み出る
自然に止まることが多い
圧迫で容易に止血できる
ますみ犬猫病院の獣医師は、動脈出血の場合は1分間に体重1kgあたり約2mlの速度で失血する可能性があり、小型犬では数分で危険な状態に陥ることを警告しています。
止血の基本:圧迫が最も重要
犬の出血時、最も効果的で基本的な止血法は「圧迫止血」です。デビフペットの獣医師監修記事では、圧迫止血の正しい手順が以下のように説明されています。
圧迫止血の手順
清潔な布を用意 - ガーゼ、タオル🛒、ハンカチ、なければティッシュでも可
傷口を覆う - 布を傷口全体に当てる
手のひら全体で圧迫 - 指先ではなく手のひらで体を包み込むように圧迫
3-5分間持続 - 途中で剥がさず、しっかりと圧迫を続ける
確認 - 5分後に静かにガーゼを外し、止血を確認
重要なのは、「圧迫を途中で解除しない」ことです。東福岡たぬま動物病院の獣医師によれば、圧迫を途中で解除すると、形成されかけた血餅(血のかたまり)が剥がれてしまい、再び出血が始まる可能性があります。
圧迫時間と止血成功率:何分圧迫すべきか
適切な圧迫により、ほとんどの静脈出血や毛細血管出血は5-10分で止血できます。Small Door Veterinaryの獣医師による解説では、圧迫時間と止血の関係が以下のように示されています。
| 圧迫時間 | 止血の状況 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 3分 | 最低限の圧迫時間 | まだ確認しない |
| 5分 | 軽度〜中度の出血が止まる | そっと確認 |
| 10分 | ほとんどの出血が止まる | 止まらなければ病院へ |
| 15分 | それでも止まらない | 緊急受診必須 |
10-15分間しっかりと圧迫しても止血しない場合は、深部の血管損傷や凝固異常の可能性があり、すぐに動物病院🛒へ搬送する必要があります。
絶対にやってはいけない5つの間違い
善意から行った処置が、かえって出血を悪化させることがあります。American Veterinary Medical Associationの獣医師は、以下の行為を避けるよう警告しています。
1. 圧迫中にガーゼを剥がして確認する 血が止まったか気になっても、圧迫中にガーゼを剥がすのは厳禁です。形成途中の血餅が剥がれ、出血が再開します。最低でも3分間は剥がさず圧迫を続けましょう。
2. ガーゼを交換する ガーゼが血で染まると「交換しなければ」と思いがちですが、これも間違いです。血が染みたガーゼの上から、新しいガーゼを重ねて圧迫を続けます。
3. 傷口を水で洗い流す 出血中に傷口を水で洗うと、血餅が流れてしまい止血が遅れます。止血を最優先し、洗浄は止血後に行います。
4. 過度に締め付ける 「早く止めたい」という気持ちから、包帯🛒をきつく巻きすぎると血流が遮断され、組織壊死を引き起こす危険があります。包帯の下に指が1本入る程度の余裕を持たせましょう。
5. 不適切な止血帯の使用 止血帯(ターニケット)は、動脈出血で命に関わる場合の最終手段です。不適切に使用すると、四肢の壊死や神経損傷を引き起こします。一般の飼い主が安易に使用すべきではありません。
部位別の止血法:効果的なテクニック
出血部位によって、最も効果的な止血法が異なります。Red Crossのペット応急処置ガイドでは、部位別の止血テクニックが紹介されています。
脚の出血
傷口にガーゼを当てて圧迫
可能であれば、脚を心臓より高く上げる(重力で出血が減少)
包帯で固定し、動かさないようにする
耳の出血
小さなガーゼを耳の両面(内側と外側)に当てる
耳を頭の上に折り曲げる
包帯で頭全体を巻いて耳を固定
犬が頭を振らないように注意
尾の出血
尾の先端にガーゼを当てて圧迫
尾を体に沿わせて背中側に曲げる
包帯で体ごと巻いて尾を固定
尾を動かせないようにする
耳や尾など、よく動く部位は一度止血しても、動かすことでかさぶたが剥がれて再出血しやすいため、動かせないように固定することが重要です。
止血剤の使い方:爪切り事故や軽度の出血に
市販の止血剤(クイックストップなど)は、爪切り🛒時の出血や軽度の傷に有効です。止血剤に関する獣医師の解説によれば、主成分は硫酸鉄、塩化アルミニウム、塩化アンモニウム、硫酸銅などで、人工的なかさぶたを即座に形成します。
止血剤の正しい使い方
止血剤の粉末を少量、綿棒やコットンに取る
出血部位に粉末を塗布
適度な圧力で5-10秒押さえる
犬が舐めないよう注意
止血剤の注意点
深い傷や大きな傷には効果が薄い
あくまで軽度の出血用
舐めると胃腸障害の可能性
粘膜(目、口の中)には使用不可
止血剤は応急処置の補助であり、圧迫止血の代わりにはなりません。大量出血には圧迫止血が必須です。
危険な出血:すぐに病院へ行くべきサイン
以下の症状が見られる場合、すぐに動物病院へ連絡し、搬送する必要があります。
緊急受診が必要な出血のサイン
10-15分の圧迫でも止血しない
動脈出血(噴き出す鮮紅色の血)
大量出血(タオル🛒が何枚も血で染まる)
歯茎が白っぽくなる(失血による貧血)
ぐったりして立てない
呼吸が荒い、速い
意識が朦朧としている
内出血の危険なサイン
血を吐く
黒いタール状の便(消化管出血)
血尿が続く
腹部が膨らんでくる
皮膚に青紫色のあざ
内出血は外から見えないため、見落としやすい危険があります。交通事故や高所からの落下後は、外傷がなくても内出血の可能性を考え、動物病院で診察を受けましょう。
搬送時の注意点:出血を悪化させない
動物病院への搬送中も、出血管理を継続することが重要です。
搬送時の手順
圧迫を続けながら移動
可能であれば出血部位を高く保つ
犬を興奮させない(血圧上昇で出血増加)
毛布🛒で包んで保温(失血による低体温予防)
病院に事前連絡(受け入れ準備のため)
移動中も、5分ごとに犬の状態を確認し、呼吸や意識レベルの変化に注意を払いましょう。もし呼吸が止まったり、完全に意識を失ったりした場合は、可能であれば心肺蘇生(CPR)を開始しながら、最寄りの動物病院へ急ぎます。
動物病院での治療:専門的な止血処置
動物病院では、出血の原因と重症度に応じて、以下のような治療が行われます。
1. 直接的な止血処置
縫合(傷口を縫い合わせる)
電気凝固(電気で血管を焼いて止血)
結紮(血管を糸で縛る)
止血クリップの使用
2. 輸液療法
静脈点滴で循環血液量を維持
血圧の安定化
脱水の改善
3. 輸血
大量失血時の赤血球補充
凝固因子の補充(凝固異常がある場合)
4. 検査
血液検査で貧血の程度を確認
凝固機能検査
X線やエコーで内出血の有無を確認
重症の場合、数日間の入院が必要になることもあります。特に内出血や凝固異常がある場合は、集中的なモニタリングと治療が不可欠です。
出血予防:日常的にできること
出血事故の多くは、適切な環境管理で防ぐことができます。
室内環境の整備
鋭利な物を犬の届く場所に置かない
家具の角にクッション🛒材を貼る
滑りやすい床にマットを敷く
ガラス製品は高所に保管
散歩中の注意
リードを短めに持ち、コントロールを維持
ガラス片や釘などが落ちている場所を避ける
他の犬との喧嘩を防ぐ
肉球の状態を定期的にチェック
定期的な健康管理
爪切りを定期的に行う(長い爪は折れやすい)
歯科検診で歯肉炎を予防
皮膚病の早期発見と治療
凝固異常のリスクがある犬種は定期検査
高リスク犬種への配慮
血友病の素因がある犬種(ドーベルマン、シェパードなど)
皮膚が薄い犬種(グレーハウンドなど)
高齢犬(血管がもろくなる)
これらの予防策を日常的に実践することで、出血事故のリスクを大幅に減らすことができます。
犬の出血時は、慌てず「圧迫止血」を基本に対応しましょう。清潔なガーゼやタオルで傷口を3-5分間しっかりと圧迫し、途中で剥がさないことが重要です。10-15分の圧迫でも止血しない場合や、動脈出血の場合は、すぐに動物病院へ搬送してください。日頃から応急処置の知識を身につけ、万が一の時に冷静に対処できるよう備えておきましょう。






