散歩中や庭で遊んでいる時、愛犬が突然「キャン!」と鳴いて顔を触る——これは虫刺されや蜂刺されのサインかもしれません。犬が蜂に刺されたら、命に関わるアレルギー反応を起こす恐れもありますので、すぐに動物病院に連れていきましょう。本記事では、犬が虫や蜂に刺された時の症状、正しい応急処置の方法、アナフィラキシーショックの見分け方、そして刺されないための予防策について、獣医師監修のもと詳しく解説します。
犬を刺す虫の種類と危険度
特に危険な虫

1. スズメバチ
危険度:★★★★★(最高)
特徴:攻撃性が高く、複数回刺すことができる
毒性:非常に強い、アナフィラキシーショックのリスク大
刺される状況:巣に近づいた、黒い色に反応(犬の鼻や目)
2. アシナガバチ
危険度:★★★★☆
特徴:巣を守る時に攻撃的になる
毒性:強い、アレルギー🛒反応のリスク
刺される状況:草むらや軒下の巣に接近

3. ミツバチ
危険度:★★★☆☆
特徴:針が体内に残る(毒嚢ごと)
毒性:中程度だが、針が残ると毒が継続的に注入される
刺される状況:花の周りで遊んでいる時
4. アブ・ブヨ(ブユ)
危険度:★★☆☆☆
特徴:噛みつくタイプ、痛みとかゆみが強い
毒性:低いが、腫れや細菌感染のリスク
刺される状況:水辺、夏の朝夕
5. 蚊
危険度:★☆☆☆☆
特徴:最も一般的、かゆみが主な症状
毒性:低いが、フィラリアなどの媒介リスク
刺される状況:夕方~夜間の屋外
6. マダニ
危険度:★★★★☆
特徴:吸血して大きく膨らむ、病原体を媒介
毒性:SFTS(重症熱性血小板減少症候群)など重篤な感染症
刺される状況:草むら、山林
刺されやすい犬の特徴
好奇心旺盛な犬
虫を追いかけて遊ぶ
鼻で突いたり口に入れようとする
草むらを探索するのが好き
体の色が濃い犬
ハチは黒い色に反応しやすい
鼻先や目の周りが狙われやすい
体が小さいため、同じ量の毒でも影響が大きい
アナフィラキシーのリスクが高い
蜂に刺された時の症状
軽度の症状(局所反応)
刺された直後
激しい痛み
「キャン!」と鳴く
刺された部位を舐めたり触ったりする
地面に顔をこすりつける
数分~数時間後
刺された部位の腫れ(直径2~5cm程度)
赤み
熱感
かゆみ
よだれが増える(口周りを刺された場合)
刺されやすい部位
鼻先
口の周り
前足(パッド)
顔全体
中等度の症状(全身反応)
刺されて30分~数時間以内
広範囲の腫れ(顔全体、足全体など)
じんま疹(体中に赤い発疹)
かゆみ(体を掻きむしる)
元気消失
食欲不振
嘔吐
下痢
過度のよだれ
重度の症状(アナフィラキシーショック)
犬がアナフィラキシーを起こした場合、命に関わるアナフィラキシーショックを発症する恐れがあります。
初期症状(刺されて数分~30分以内)
顔面の急激な腫れ
口や舌の腫れ
じんま疹が全身に広がる
激しいかゆみ
落ち着きがない
進行した症状 アナフィラキシーに伴う症状には、顔の腫れ、気道の腫れ、血圧低下、発疹(じんま疹)、嘔吐や下痢がある。
呼吸器症状:呼吸困難、ゼーゼー音、咳、チアノーゼ(舌が青紫色)
循環器症状:血圧低下、脈が弱い、粘膜が白い
消化器症状:激しい嘔吐、下痢、失禁
神経症状:ふらつき、起立不能、けいれん、意識混濁
その他:体温低下、ショック状態
致命的な状態
意識消失
呼吸停止
心停止
重要:症状が出始めてから処置までの時間が長いほど命の危険性は高まります。数分~15分以内に急激に悪化することがあります。
蜂に刺された時の正しい応急処置
ステップ1:安全確保と状態観察(30秒)
飼い主🛒の安全確保
周囲に蜂がまだいないか確認
蜂の巣が近くにないか確認
必要であれば安全な場所に移動
犬の状態を素早く確認
意識はあるか
呼吸は正常か
全身状態(立てるか、歩けるか)
ステップ2:毒針の確認と除去(1~2分)
ミツバチに刺された場合は、まずは愛犬の体に針が残っていないか確認し、皮膚からできるだけ近い位置の針をもち抜きましょう。
針の確認方法
刺された部位をよく見る(黒い小さな点)
ミツバチの針:毒嚢(小さな袋)が付いている
スズメバチ・アシナガバチ:針は残らない
正しい針の抜き方
使うもの:
- ヘラ状のもの(クレジットカード、定規の端など) - 固い紙 - 毛抜き・ピンセット(使い方に注意)
抜く手順:
- ヘラ状の物や固い紙などではじき飛ばすように抜く - 皮膚に対して平行にスライドさせる - 針の根元(皮膚に近い部分)を狙う
❌ やってはいけない抜き方
ピンセットで毒嚢をつかむ(圧力で毒が押し出される)
無理に引っ張る(毒嚢が破裂する)
ステップ3:毒の除去と洗浄(2~3分)
毒液の絞り出し スズメバチの毒素は水溶性なので、傷口を流水で洗い流して毒液を絞り出します。
洗浄の手順
刺された部位の周囲を軽く押して、毒を絞り出す
流水(水道水またはぬるま湯)で3~5分洗い流す
毒液が薄まるまでしっかり洗う
清潔なガーゼやタオル🛒で水分を拭き取る
注意点
口で毒を吸い出さない(人間の口内から細菌感染の危険)
強く圧迫しすぎない
ステップ4:患部の冷却(10~15分)
冷やす方法
氷嚢または保冷剤
- タオルで包む(直接当てない) - 刺された部位に10~15分当てる - 5分休憩して再度冷却
冷水で濡らしたタオル
- 氷がない場合の代替手段 - こまめに交換して冷たさを保つ
流水
- 足先の場合は流水で冷やし続ける
冷却の効果
痛みの軽減
腫れの抑制
毒の拡散を遅らせる
炎症反応の抑制
ステップ5:アナフィラキシーの監視
少なくとも30分~1時間は注意深く観察
チェック項目
呼吸の様子(回数、深さ、音)
意識レベル
粘膜の色(歯茎、舌)
体温(肉球や耳の温度)
行動(落ち着きない、ぐったりなど)
異常があればすぐ病院へ
やってはいけない処置
❌ アンモニア(尿)を塗る アンモニアには蜂毒の中和作用はなく、かぶれ等を起こすため使用しない。これは完全な迷信です。
❌ 人間用の薬を塗る
抗ヒスタミン軟膏
ステロイド軟膏
虫刺され用の市販薬
理由:犬が舐めてしまう、成分が犬に適さない
❌ 口で毒を吸い出す
人間への感染リスク
口内の細菌が傷口に入る
ほとんど効果がない
❌ 傷口を切開する
出血のリスク
感染のリスク
素人が行うと危険
動物病院を受診すべきタイミング
即座に受診が必要(緊急)
以下の症状が1つでもあればすぐに動物病院🛒へ:
呼吸器症状
呼吸困難
口を開けて苦しそうに呼吸
ゼーゼー、ヒューヒュー音
舌が青紫色(チアノーゼ)
循環器症状
ぐったりして動けない
歯茎や舌が白い
体が冷たい
意識が朦朧としている
その他の緊急症状
複数回の嘔吐
激しい下痢
けいれん発作
失神
刺された場所が危険な場合
口の中
舌
のど
複数箇所
事前に電話 病院に向かう前に必ず電話して、症状を伝え、到着予定時刻を知らせましょう。
数時間以内に受診(準緊急)
以下の症状がある場合
顔全体が腫れている
腫れが広がっている
じんま疹が体中に出ている
元気がない
食欲がない
よだれが止まらない
翌日~数日以内に受診
軽度の局所反応のみの場合
刺された部位のみの軽い腫れ
痛みはあるが元気
食欲は正常
呼吸や意識に問題なし
ただし、以下の場合は様子を見ながら受診
腫れが48時間以上続く
腫れが悪化する
化膿の兆候(膿、悪臭)
発熱
動物病院での治療
アナフィラキシーショックの治療
初期治療
エピネフリン(アドレナリン)注射
- ショック症状を緩和する最も重要な薬 - 即効性がある - 場合によって複数回投与
気道確保と酸素吸入
- 呼吸困難の改善 - 酸素マスクまたは酸素室
点滴
- 血圧の維持 - 脱水の補正 - 薬剤の投与ルート確保
ステロイド薬
- 炎症反応の抑制 - 遅発性反応の予防
抗ヒスタミン薬
- アレルギー🛒反応の抑制 - かゆみや腫れの軽減
入院が必要な場合
重度のアナフィラキシー
呼吸困難が続く
血圧が不安定
意識障害がある
遅発性反応の可能性
軽度~中等度の場合の治療
外来治療
抗炎症薬の注射または内服
抗ヒスタミン薬
痛み止め
患部の冷却指導
経過観察の指示
帰宅後の注意
12~24時間は注意深く観察
夜間に症状が悪化する可能性
食欲や元気の変化をチェック
虫刺され別の対処法
アブ・ブヨ(ブユ)に刺された場合
特徴 犬がアブやブヨに刺された場合、刺された箇所を気にしていたり、皮膚が腫れていたり、患部が赤くなっている。
対処法
流水で洗浄(5分程度)
冷却(15~20分)
清潔に保つ
犬が掻かないようエリザベスカラー装着を検討
注意点
非常にかゆみが強い
掻き壊して化膿しやすい
数日間腫れが続くことがある
蚊に刺された場合
特徴
小さな赤い腫れ
かゆみ
通常は自然治癒
対処法
患部を冷やす
掻かせない工夫
フィラリア予防の徹底
注意点
フィラリア症の媒介リスク
予防薬の定期投与が重要
マダニに刺された場合
特徴
皮膚に黒い豆のようなものが付着
血を吸って膨らんでいる
痛みやかゆみは少ない
対処法
自分で取らない(口器が残る危険)
すぐに動物病院を受診
病院で専用器具を使って除去
危険性
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)
ライム病
バベシア症
などの重篤な感染症を媒介
予防策:虫刺されを防ぐために
散歩時の注意
時間帯
蜂が活発な時間を避ける(午前10時~午後3時)
夕方はブヨやアブが活発
早朝か夕方遅めが比較的安全
場所
草むらを避ける
花壇の近くを避ける
水辺に注意
蜂の巣がある場所を把握
服装・装備
虫除けスプレー(犬用)
虫除け首輪
明るい色の服(飼い主)
自宅での対策
庭の管理
草を短く刈る
花壇から犬を遠ざける
蜂の巣がないか定期的にチェック
水たまりをなくす(蚊の繁殖防止)
虫除け対策
虫除け首輪
蚊取り線香(犬から離して使用)
予防薬の活用
フィラリア予防薬
月1回の定期投与
蚊が媒介するフィラリア症予防
ノミ・ダニ予防薬
月1回のスポット剤または内服薬
マダニによる感染症予防
虫除けスプレー
犬用の天然成分のもの
散歩前に使用
顔周りは避ける
犬種別の注意点
短頭種(パグ、フレンチブルドッグなど)
呼吸器が弱いため、気道の腫れが危険
アナフィラキシーのリスクが高い
小型犬
同じ量の毒でも体への影響が大きい
より注意深い観察が必要
長毛種
刺されても気づきにくい
ブラッシング時にチェック
黒い毛色の犬
蜂に狙われやすい
鼻先や目の周りを特に注意
蜂刺されの二次被害を防ぐ
2回目の刺傷のリスク
アナフィラキシーショックは1回しか刺されていない場合でも起こることがありますが、多くの場合「2回目以降に蜂に刺されたときに起こる」と言われています。
1回目に刺された後の体の変化
蜂毒に対する抗体ができる
次に刺されたときに過剰反応する可能性
アナフィラキシーショックのリスクが高まる
2回目を防ぐための対策
蜂の多い場所を避ける
散歩コースを見直す
春~秋は特に注意
蜂の巣を見つけたら専門業者に駆除依頼
予防接種について
現状
犬の蜂毒アレルギーに対する予防接種は一般的ではない
人間では「減感作療法」が存在
できること
アレルギー検査で体質を知る
かかりつけ医に相談
エピペン(エピネフリン自己注射)の処方(一部の病院)
まとめ:迅速な対応が命を救う
犬が虫や蜂に刺された時、最も重要なのは冷静かつ迅速な対応です。
この記事の重要ポイント
毒針は指でつままず、ヘラ状のものではじく
流水で洗浄し、毒を絞り出す
患部を15分程度冷やす
アンモニアは使わない(効果なし、有害)
アナフィラキシーの症状を30分~1時間監視
呼吸困難や意識障害があればすぐ病院へ
軽症でも獣医師の診察を受けることを推奨
2回目の刺傷を防ぐ予防策を徹底
今日からできる準備
[ ] 近隣の蜂の巣の場所を把握
[ ] 夜間救急動物病院の連絡先を登録
[ ] 犬用虫除けスプレー🛒を常備
[ ] 散歩コースの見直し
[ ] 応急処置キットにヘラ状のカードを入れる
[ ] 冷却用の保冷剤を準備
夏から秋にかけては特に虫刺されのリスクが高まります。愛犬を守るために、正しい知識と準備を今から整えておきましょう。
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