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犬の緊急事態:応急処置と命を守る知識

ホットスポット(急性湿疹)の緊急ケア

ホットスポット(急性湿疹)の緊急ケアの画像

朝は何ともなかったのに、夕方には愛犬の体に赤くただれた円形の病変ができている──こんな急激な変化が見られたら、ホットスポット(急性湿疹)の可能性があります。ホットスポットは、数時間から1日という短時間で急速に悪化する皮膚疾患で、特に梅雨から夏にかけて多発します。

この記事では、ホットスポットの症状、急速に悪化するメカニズム、緊急時の対処法、治療法から、再発予防まで、獣医師の視点から詳しく解説します。

ホットスポット(急性湿疹)とは?

ホットスポット(Hot Spot)とは、急性湿性皮膚炎または急性湿疹と呼ばれる、犬に非常に多く見られる皮膚病です。正式な医学用語では「Acute Moist Dermatitis(急性湿性皮膚炎)」または「Pyotraumatic Dermatitis(外傷性膿皮症)」と呼ばれます。

ホットスポット(急性湿疹)の緊急ケアの画像5

最大の特徴は、その急激な進行速度です。朝には何も異常がなかった皮膚が、数時間後には赤く腫れ、ジュクジュクとした湿潤性の病変に変化します(参考:急性湿疹の概要)。

ホットスポットの特徴

**1🛒. 急速な進行**

  • 数時間~24時間で病変が拡大

  • 朝正常→昼赤く腫れる→夕方ジュクジュク化膿

ホットスポット(急性湿疹)の緊急ケアの画像4

2. 円形~楕円形の病変

  • 直径3~10cm程度(重症では15cm以上)

  • 境界が比較的明瞭

3. 湿潤性

  • 表面がジュクジュク、ベタベタ

  • 滲出液や膿の付着

  • 悪臭を伴うことも

4. 強い痒み・痛み

  • 犬が執拗に舐める、噛む

  • 触ると嫌がる、痛がる

発症のメカニズム

ホットスポットは、以下の悪循環で急速に悪化します。

  1. 何らかの刺激(虫刺され、傷、汚れなど)

  2. 痒み・違和感 → 犬が舐める、掻く

  3. 皮膚バリアの破壊 → 細菌侵入

  4. 細菌の急速な増殖 → 炎症悪化

  5. さらに痒み・痛み増強 → さらに舐める、噛む

  6. 病変の拡大

この悪循環が数時間で進行するため、早期発見・早期治療が極めて重要です。

ホットスポットの症状

ホットスポットの症状は、急激に進行するのが特徴です(参考:急性湿性皮膚炎の症状)。

初期症状(発症0~6時間)

1. 軽度の赤み

  • 小さな円形の赤い斑点

  • 直径1~3cm程度

2. 犬の行動変化

  • 特定の部位を執拗に舐める

  • その部位を気にして掻く

  • 落ち着きがない

この段階で気づけば、軽症のうちに治療を開始できます。

進行期症状(発症6~24時間)

1. 脱毛

  • 病変部の毛が抜ける、または濡れて固まる

  • 境界が明瞭な円形脱毛

2. 皮膚の変化

  • 鮮やかな赤色に変化

  • 表面がジュクジュク湿潤

  • 滲出液が付着

3. 腫れ

  • 病変部が周囲より盛り上がる

  • むくんだ感じ

4. 痛み

  • 触ると痛がる

  • 嫌がって逃げる

重症化した症状(24時間以降)

適切な治療がないと、さらに悪化します。

1. 病変の拡大

  • 直径10cm以上に拡大

  • 複数の病変が融合

2. 深部感染

  • 皮膚の深層まで感染

  • 化膿、出血

  • 悪臭(腐敗臭)

3. 全身症状

  • 発熱

  • 元気消失

  • 食欲不振

  • リンパ節の腫れ

症状が現れやすい部位

好発部位:

  1. : 最も多い(約30~40%)

  2. 首周り: 首輪🛒の摩擦部位

  3. : 尾の付け根、腰部

  4. : 内股、肛門周囲

  5. 四肢: 前足、後足

理由:

  • 犬が舐めやすい部位

  • 湿気がこもりやすい部位

  • 摩擦が起きやすい部位

ホットスポットの原因

ホットスポットを引き起こす原因は多岐にわたります。

直接的な原因(きっかけ)

1. 外部寄生虫

  • ノミ: 最も一般的な原因

  • ダニ: マダニ、ツメダニ

  • : 刺された部位

2. アレルギー

  • [ノミアレルギー性皮膚炎](/articles/flea-allergy-dermatitis-severe-itching-prevention): ノミ1匹でも強烈な痒み

  • [アトピー性皮膚炎](/articles/dog-atopic-dermatitis-causes-symptoms-management): 花粉、ハウスダスト

  • [食物アレルギー](/articles/dog-food-allergy-symptoms-diagnosis-hypoallergenic-diet): 特定食材への反応

3. 外傷

  • 小さな傷、擦り傷

  • 虫刺され

  • 棘が刺さる

4. 耳の問題

  • 外耳炎: 耳の痒み → 掻く → 頬にホットスポット

  • 耳ダニ: 同様のメカニズム

5. 肛門嚢の問題

  • 肛門嚢炎

  • 肛門嚢の鬱滞

6. 関節痛

  • 関節の痛み → その部位を舐める → ホットスポット

7. ストレス・退屈

  • 過度のストレス

  • 運動不足

  • 常同行動(同じ部位を舐め続ける)

環境要因

1. 高温多湿

ホットスポットは梅雨から夏(5月~9月)に多発します。

  • 気温25℃以上、湿度70%以上

  • 被毛の中が蒸れる

  • 細菌が増殖しやすい環境

2. 被毛の状態

3. 不衛生

  • 汚れた被毛

  • 泥、草の種子の付着

好発犬種

特定の犬種で発症しやすい傾向があります。

高リスク犬種:

  • ゴールデン・レトリバー: 最も多い

  • ラブラドール・レトリバー

  • シベリアン・ハスキー

  • 秋田犬

  • 柴犬

  • ニューファンドランド

  • セント・バーナード

共通点:

  • 密なアンダーコート(下毛)を持つ

  • 水を好む犬種(濡れた被毛が乾きにくい)

好発年齢・季節

  • 年齢: すべての年齢、特に若~中年齢(1~7歳)

  • 季節: 梅雨~夏(5~9月)が80%以上

緊急時の応急処置

ホットスポットを発見したら、すぐに動物病院を受診することが最も重要です。しかし、夜間や休診日など、すぐに受診できない場合の応急処置を説明します。

やるべきこと

1. 患部を舐めさせない

最優先事項です。

  • エリザベスカラー(エリカラ)の装着

  • または術後服の着用

  • 患部に包帯を巻く(通気性のあるもの)

重要: 犬が舐め続けると、数時間で急激に悪化します。

2. 患部の冷却

炎症を抑えるため、冷やします。

  • 清潔なタオルを冷水で濡らす

  • 軽く絞って患部に当てる(5~10分)

  • 氷嚢は避ける(冷やしすぎ注意)

3. 患部周辺の毛をカット(可能であれば)

通気性を良くし、薬の浸透を助けます。

  • 電動バリカンまたはハサミ(先が丸いもの)

  • 病変部から2~3cm外側まで短くカット

  • 皮膚を傷つけないよう注意

注意: 嫌がる場合は無理せず、獣医師に任せましょう。

4. 清潔な水で洗浄(軽度の場合)

  • ぬるま湯で優しく洗い流す

  • ゴシゴシこすらない

  • 清潔なタオルで優しく押さえて水分を取る

  • 完全に乾かすドライヤー🛒の冷風)

やってはいけないこと

1. 人間用の薬を使う

  • ❌ オロナイン、マキロン

  • ❌ ステロイド軟膏

  • ❌ 消毒用アルコール

これらは犬の皮膚には刺激が強く、悪化させることがあります。

2. 患部を強くこする

  • 出血や皮膚損傷を悪化させる

3. 包帯をきつく巻く

  • 血流障害、蒸れの原因

4. 様子見する

  • ホットスポットは急速に悪化するため、早期受診が不可欠

受診のタイミング

すぐに受診すべきケース:

  • 病変が急速に拡大している

  • 広範囲(直径5cm以上)

  • 深い傷、出血がある

  • 犬が激しく痛がる

  • 発熱、元気消失がある

  • 複数箇所に病変がある

翌日受診でも可(応急処置をした上で):

  • 病変が小さい(直径3cm以下)

  • 進行が止まっている

  • 犬の全身状態は良好

ホットスポットの治療法

ホットスポットの治療は、細菌感染のコントロール舐めることの防止が中心です(参考:急性湿疹の治療)。

動物病院での治療

1. 被毛のカット(クリッピング)

病変部とその周囲(3~5cm)の毛を短くカットします。

目的:

  • 通気性の改善

  • 薬剤の浸透促進

  • 病変の観察

2. 患部の洗浄・消毒

クロルヘキシジンやポビドンヨードなどの消毒液で洗浄します。

  • 壊死組織、膿、かさぶたの除去

  • 細菌数の減少

3. 抗生物質の投与

細菌感染を治療するため、抗生物質が必要です。

内服薬:

  • セファレキシン: 第一選択

  • クラブラン酸アモキシシリン

  • エンロフロキサシン: 重症例

投与期間: 通常7~14日間

外用薬:

  • 抗生物質入り軟膏・スプレー

  • フシジン酸、ゲンタマイシンなど

4. 抗炎症薬・痒み止め

ステロイド剤:

  • プレドニゾロン(内服)

  • 炎症と痒みを素早く抑える

  • 短期間(3~7日)の使用

非ステロイド性痒み止め:

  • オクラシチニブ(アポキル): 副作用が少ない

5. エリザベスカラーの装着

必須です。舐めることを物理的に防止します。

  • 治療期間中、常時装着

  • 取り外しは食事・排泄時のみ(監視下で)

  • 通常1~2週間

6. 基礎疾患の治療

ホットスポットの原因となった基礎疾患の治療も同時に行います。

  • ノミ予防: ノミ駆除薬の投与

  • 外耳炎の治療: 点耳薬

  • アレルギー🛒管理: 療法食、抗ヒスタミン剤

  • 肛門嚢絞り: 肛門嚢の問題がある場合

治療期間と経過

軽症:

  • 治療開始3~5日で改善

  • 7~10日で治癒

中等症~重症:

  • 1~2週間

  • 深部感染の場合、3~4週間

経過観察:

  • 治療開始2~3日後に再診

  • 改善がなければ、抗生物質の変更を検討

治療法の比較表

ホットスポットの治療法を比較してみましょう。

治療法効果即効性副作用費用(目安)必須度
被毛カット高いなし無料~数千円★★★★★抗生物質内服
非常に高い中(1〜3日)消化器症状(稀)2千〜5千円★★★★★外用抗生物質
中〜高ほとんどなし1千〜3千円★★★★☆ステロイド内服
非常に高い速い(数時間〜1日)多飲多尿、食欲増進数百〜2千円★★★★☆痒み止め(アポキル)
高い速い(数時間)少ない3千〜6千円★★★★☆エリザベスカラー
非常に高い即時ストレス1千〜3千円★★★★★

最も効果的な組み合わせ: 被毛カット + 抗生物質内服 + エリザベスカラー + 痒み止め

自宅でのケア

治療と並行して、自宅でのケアが重要です。

エリザベスカラーの管理

装着のポイント:

  • 首回りに指2本分の隙間

  • きつすぎず、抜けない程度

食事・水飲みの工夫:

  • 食器を高い位置に置く(台を使う)

  • 浅い皿を使用

  • カラーを外して監視下で食事(すぐ装着し直す)

ストレス軽減:

  • ソフトタイプのカラーを使用

  • ドーナツ型クッション🛒も選択肢

  • 優しく声をかける、撫でる

環境管理

1. 室温・湿度の管理

  • エアコンで室温を25℃以下に

  • 除湿器で湿度を50~60%に

2. 清潔な環境

  • ベッド、タオルを頻繁に洗濯

  • 床の掃除

3. ストレス軽減

  • 適度な運動(短時間の散歩)

  • おもちゃで気を紛らわす

患部のケア

1. 清潔に保つ

  • 1日1~2回、清潔な湿らせたタオルで拭く

  • 処方された外用薬を塗布

2. 乾燥させる

  • 湿った状態を避ける

  • 通気性を保つ

3. 観察

  • 毎日、病変の大きさ、色、滲出液の量をチェック

  • 悪化傾向があればすぐに受診

ホットスポットの予防

ホットスポットは再発率が高い疾患です。一度発症した犬の約30~50%が再発します。予防が非常に重要です。

基本的な予防策

1. 定期的なグルーミング

  • ブラッシング: 毎日、特に梅雨~夏

  • シャンプー: 月1~2回

  • 完全な乾燥: シャンプー後、雨の後は必ずドライヤー🛒で乾かす

重要: 濡れた被毛は細菌の温床です。

2. 定期的なトリミング

特に長毛種、厚い被毛の犬種:

  • 夏場はサマーカットを検討

  • 問題部位(頬、腰、股)は短めに

3. ノミ・ダニ予防

  • 月1回のノミ・ダニ予防薬(フィラリア予防と併用)

  • スポットオン、経口薬、首輪タイプなど

4. アレルギー管理

アレルギーがある犬:

  • 療法食の継続

  • 抗ヒスタミン剤、免疫療法

  • アレルゲンの除去

5. 耳のケア

  • 週1回の耳掃除

  • 外耳炎の早期発見・治療

  • 耳毛の定期的な抜き取り(必要に応じて)

6. 肛門嚢の管理

  • 月1回の肛門嚢絞り

  • トリミング時や動物病院で実施

7. 適度な運動

  • 毎日の散歩

  • 遊び、トレーニング

  • ストレス・退屈の軽減

好発時期の対策

梅雨~夏(5~9月):

1. 室内環境の管理

  • エアコン・除湿器の使用

  • 被毛が湿ったままにしない

2. 散歩の工夫

  • 早朝・夕方の涼しい時間帯

  • 濡れた草むらを避ける

  • 帰宅後、足と体を拭いて乾かす

3. 被毛の管理

  • こまめなブラッシング(毎日)

  • 毛玉の除去

  • 適度なカット

早期発見のポイント

毎日のチェック:

  • 皮膚の赤み、湿り気

  • 犬が特定部位を舐める、掻く行動

  • 被毛の変化(濡れている、固まっている)

すぐに対処すべきサイン:

  • 同じ部位を10分以上舐め続ける

  • 小さな赤い斑点ができた

  • その部位を触ると嫌がる

早期発見できれば、軽症のうちに治療を開始でき、治癒も早くなります。

好発犬種の飼い主への注意

ゴールデン・レトリバー、ラブラドール、シベリアン・ハスキーなどの飼い主は、特に注意が必要です。

  • 梅雨前(4月)にサマーカットを検討

  • 水遊び後は必ず完全に乾かす

  • 毎日の全身チェック

よくある質問

Q: ホットスポットは自然に治りますか? A: いいえ、自然治癒はほとんどありません。むしろ放置すると数時間で急激に悪化し、広範囲の深部感染に進行します。発見したらすぐに動物病院を受診してください。

Q: エリザベスカラーは外してあげたいのですが、短時間なら大丈夫ですか? A: 監視下で食事・排泄時のみ短時間(5~10分)外すのは可能ですが、それ以外は装着を続けてください。わずか数分舐めるだけでも、病変が悪化します。カラーを嫌がる場合は、ソフトタイプやドーナツ型を検討しましょう。

Q: 一度ホットスポットになると、繰り返しやすいですか? A: はい、再発率は30~50%と高いです。特に基礎疾患(アレルギー、外耳炎など)がコントロールされていない場合、同じ部位に再発することが多いです。予防策を継続することが重要です。

Q: 人にうつりますか? A: ホットスポット自体は人にうつりません。ただし、原因がノミやダニの場合、それらが人を刺すことはあります。

Q: シャンプー🛒しても大丈夫ですか? A: 治療中は、獣医師の指示に従ってください。通常、抗生物質が効いてきて改善傾向が見られれば(3~5日後)、薬用シャンプーでの洗浄が推奨されます。ただし、患部を強くこすらず、完全に乾かすことが必須です。

Q: 治療費はどれくらいかかりますか? A: 軽症で初診・内服薬・外用薬・エリザベスカラーを含めて5千〜1万円程度です。重症の場合や、複数回の通院が必要な場合は1.5万〜3万円程度かかることがあります。

まとめ

犬のホットスポット(急性湿疹)は、数時間から1日という短時間で急速に悪化する皮膚疾患です。特に梅雨から夏にかけて、厚い被毛を持つ犬種に多発します。早期発見・早期治療が極めて重要で、エリザベスカラーで舐めさせないことが治療の鍵となります。

ホットスポットの重要ポイント:

  • 特徴: 数時間〜1日で急速に悪化する急性湿性皮膚炎

  • 症状: 円形の赤く湿潤した病変、強い痒み・痛み、脱毛

  • 好発: ゴールデン・レトリバー、ラブラドール、シベリアン・ハスキーなど厚い被毛の犬種

  • 好発時期: 梅雨〜夏(5〜9月)が80%以上

  • 原因: ノミ、アレルギー、外耳炎、外傷、高温多湿

  • 緊急対処: エリザベスカラー装着、患部の冷却、すぐに受診

  • 治療: 被毛カット + 抗生物質(7〜14日)+ 痒み止め + エリザベスカラー

  • 治療期間: 軽症7〜10日、重症2〜4週間

  • 再発率: 30〜50%と高い

  • 予防: 毎日のブラッシング、完全な乾燥、ノミ予防、アレルギー管理

ホットスポットは適切な治療により1〜2週間で治癒しますが、再発しやすい疾患です。愛犬が特定の部位を執拗に舐めている、小さな赤い斑点ができたなどの初期サインを見逃さず、すぐに動物病院を受診しましょう。また、梅雨から夏にかけては、被毛を完全に乾かすこと、こまめなブラッシングで予防を心がけてください。

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