愛犬の健康を守るために、毎日の食事で適切な栄養を与えることは飼い主の大切な役割です。しかし「犬にはどんな栄養素がどれくらい必要なの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、犬に必要な5大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラル)について、AAFCO(米国飼料検査官協会)の栄養基準をもとに詳しく解説します。体重別の1日摂取量や、不足・過剰による症状まで、愛犬の食事管理に役立つ情報をお届けします。
犬に必要な5大栄養素とは?人間との違い
犬に必要な栄養素は、基本的に人間と同じ5つです。

タンパク質:体を作る材料
脂質:エネルギー源と細胞膜の構成
炭水化物:エネルギー源
ビタミン:体の調整役
ミネラル:骨や血液の構成成分
これに水を加えると「6大栄養素」となります。水は生命維持に不可欠で、体重の約60〜70%を占めています。
犬と人間の違い
共立製薬の解説によると、犬は「肉食性の強い雑食動物」であり、「草食性の強い雑食動物」である人間とは栄養バランスが異なります。

具体的には:
タンパク質の必要量が多い:人間の約1.3〜2.8倍
炭水化物への依存度が低い:体内でアミノ酸から糖を合成できる
ビタミンCを体内で合成できる:通常は食事からの摂取不要
犬の祖先はオオカミであり、肉を主食としてきた歴史があります。そのため、良質なタンパク質を十分に摂取することが健康維持の基本となります。
AAFCO栄養基準について
ペットフード🛒の栄養基準を定める世界的な団体として、AAFCO(The Association of American Feed Control Officials:米国飼料検査官協会)があります。日本で販売される「総合栄養食」と表示されたフードは、このAAFCO基準を満たしています。
詳しいフード選びについては「犬の食事と栄養:正しいフード選びの科学」で解説しています。
タンパク質:体を作る最も重要な栄養素
PETOKOTOの解説によると、タンパク質は犬の体の約50%(水分を除く)を構成する最も重要な栄養素です。
タンパク質は以下の組織・機能に不可欠です:
筋肉・内臓の形成
皮膚・被毛の健康維持
免疫機能(抗体の材料)
酵素・ホルモンの原料
エネルギー源(1gあたり約4kcal)
必須アミノ酸について
タンパク質は20種類のアミノ酸から構成されています。このうち犬が体内で合成できない「必須アミノ酸」は10種類あり、必ず食事から摂取する必要があります。
犬の必須アミノ酸:アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン
1日の必要量(体重別)
ヒルズペットの情報によると、犬に必要なタンパク質量は以下の通りです:
成犬の場合:
体重1kgあたり約1.3〜2.8g
簡易計算:約4.8g × 体重[kg]
AAFCOフード🛒基準:乾物中18%以上
子犬の場合:
体重1kgあたり約9.6g(成犬の約2倍)
AAFCOフード基準:乾物中22.5%以上
| 体重 | 成犬の必要量 | 子犬の必要量 |
|---|---|---|
| 3kg | 約14g | 約29g |
| 5kg | 約24g | 約48g |
| 10kg | 約48g | 約96g |
| 20kg | 約96g | 約192g |
不足・過剰の症状
タンパク質不足の症状:
筋肉量の減少
毛艶の悪化、脱毛
免疫力低下(感染症にかかりやすい)
成長期の発育不良
傷の治りが遅い
タンパク質過剰の影響:
腎臓への負担増加(特に高齢犬や腎臓病の犬)
余剰分は脂肪として蓄積される可能性
良質なタンパク質源については「話題のローフード(生食):効果とリスク」も参考にしてください。
脂質:エネルギーと必須脂肪酸の供給源
脂質は1gあたり約9kcalと、タンパク質や炭水化物の2倍以上のエネルギーを持つ効率的な栄養素です。
脂質の主な役割:
高効率なエネルギー供給
脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収を助ける
細胞膜の構成成分
皮膚・被毛の健康維持
フードの嗜好性向上
オメガ3とオメガ6脂肪酸の黄金比率
脂質の中でも特に重要なのが「必須脂肪酸」です。犬の体内では合成できないため、必ず食事から摂取する必要があります。
オメガ6脂肪酸(リノール酸など):
皮膚・被毛の健康維持
免疫機能のサポート
炎症反応を促進する作用もある
オメガ3脂肪酸(EPA、DHAなど):
炎症を抑える作用
脳・神経系の発達と維持
心臓・血管の健康
関節の健康サポート
理想的な比率:オメガ6:オメガ3 = 5〜6:1
AAFCO基準では30:1以下と定められていますが、健康維持のためには5〜6:1が推奨されています。オメガ6が過剰になるとアレルギーや炎症を悪化させる可能性があるため、バランスが重要です。
日本犬の特性: 最近の研究では、日本犬は遺伝的にα-リノレン酸からDHA・EPAへの変換効率が低いことが示唆されています。そのため、魚由来のDHA・EPAを直接摂取することが推奨されます。
1日の必要量
成犬フード:脂質5〜15%(乾物ベース)
子犬フード:脂質8〜20%(乾物ベース)
オメガ3脂肪酸:小型犬0.2g、中型犬0.5g程度/日
アレルギーがある犬の食事については「食物アレルギーの犬に選ぶべきフード」をご覧ください。
炭水化物:必須ではないがエネルギー源として有用
炭水化物は「糖質」と「食物繊維」に分けられます。人間にとっては主要なエネルギー源ですが、犬にとっては少し事情が異なります。
犬と炭水化物の関係
犬は肝臓でアミノ酸から糖(グルコース)を合成する「糖新生」という能力を持っています。そのため、理論上は炭水化物なしでも生きていけます。
AAFCOでは炭水化物の最低摂取量を設定していません。 これは犬にとって炭水化物が「必須」ではないことを示しています。
ただし、炭水化物には以下のメリットがあります:
即効性のあるエネルギー源
食物繊維による腸内環境の改善
フードのコスト削減(肉より安価)
加熱により消化しやすくなる
フードに含まれる炭水化物量
一般的なドライフード🛒には30〜60%の炭水化物が含まれています。「グレインフリー(穀物不使用)」のフードでも、ジャガイモやサツマイモなどの炭水化物源が使用されています。
重要なのは加熱調理されているかどうかです。生のデンプンは犬の消化酵素では分解しにくいため、加熱処理されたフードを選びましょう。
グレインフリーフードについては「グレインフリーは本当に良い?最新研究から」で詳しく解説しています。
ビタミン:体の調整役
ビタミンは微量で体の機能を調整する重要な栄養素です。大きく「脂溶性ビタミン」と「水溶性ビタミン」に分けられます。
脂溶性ビタミン(A、D、E、K)
脂溶性ビタミンは体内(主に肝臓や脂肪組織)に蓄積されます。そのため、過剰摂取に注意が必要です。
| ビタミン | 主な働き | 欠乏症 | 過剰症 |
|---|---|---|---|
| A | 視力、皮膚、免疫 | 夜盲症、皮膚疾患 | 関節異常、食欲低下 |
| D | カルシウム吸収、骨形成 | くる病(骨軟化症) | 高カルシウム血症(危険) |
| E | 抗酸化作用 | 筋ジストロフィー | 比較的毒性は低い |
| K | 血液凝固 | 出血傾向 | まれ |
水溶性ビタミン(B群、C)
水溶性ビタミンは体内に蓄積されにくく、余剰分は尿として排出されます。そのため、毎日適切に摂取することが重要です。
ビタミンB群の働き:
B1(チアミン):糖質代謝
B2(リボフラビン):エネルギー代謝
B6:タンパク質代謝
B12:赤血球形成
ナイアシン:皮膚・神経の健康
パントテン酸:脂質代謝
葉酸:細胞分裂
ビオチン:皮膚・被毛の健康
ビタミンCについて: 犬は体内でビタミンCを合成できるため、通常は食事からの摂取は必要ありません。ただし、ストレス下や病気の際には需要が増加することがあります。
欠乏症と過剰症の症状
特に注意が必要なのはビタミンAとビタミンDの過剰摂取です。
ビタミンA過剰: レバーの与えすぎなどで起こりやすい。関節の�ite痛、食欲不振、体重減少などの症状が現れます。
ビタミンD過剰: 高カルシウム血症を引き起こし、嘔吐、下痢、多飲多尿、最悪の場合は死に至ることもあります。サプリメント🛒の過剰摂取に特に注意が必要です。
ミネラル:骨や血液の構成成分
鹿肉工房の解説によると、犬には12種類の必須ミネラルが必要です。ミネラルは体内で合成できないため、必ず食事から摂取する必要があります。
多量ミネラル(体内に多く存在)
カルシウム(Ca):骨・歯の形成、神経・筋肉機能
リン(P):骨・歯の形成、エネルギー代謝
マグネシウム(Mg):酵素活性、骨の健康
カリウム(K):神経・筋肉機能、水分バランス
ナトリウム(Na):水分バランス、神経伝達
塩素(Cl):消化液の成分、水分バランス
微量ミネラル(少量で重要な働き)
鉄(Fe):赤血球のヘモグロビン成分
亜鉛(Zn):皮膚・被毛の健康、免疫機能
銅(Cu):鉄の利用、被毛の色素形成
ヨウ素(I):甲状腺ホルモンの成分
セレン(Se):抗酸化作用
マンガン(Mn):骨形成、酵素活性
カルシウムとリンのバランス
ミネラルの中で特に重要なのがカルシウムとリンの比率です。
理想的な比率:Ca:P = 1〜2:1
このバランスが崩れると:
カルシウム過剰 → リンの吸収阻害、骨の形成異常
リン過剰 → カルシウムの吸収阻害、骨の脱灰
特に成長期の大型犬では、カルシウムの過剰摂取が骨格異常を引き起こすことがあります。「良かれと思って」カルシウムサプリメント🛒を与えるのは危険です。
欠乏症と過剰症
| ミネラル | 欠乏症 | 過剰症 |
|---|---|---|
| カルシウム | 骨折、けいれん、発育不良 | 骨形成異常、甲状腺機能低下 |
| リン | 疲労、食欲不振 | 骨形成不全 |
| 鉄 | 貧血、疲労 | 消化器障害 |
| 亜鉛 | 皮膚疾患、脱毛 | 銅欠乏を誘発 |
| マグネシウム | けいれん、不整脈 | 尿路結石 |
| カリウム | 筋力低下、不整脈 | 心臓・腎臓への負担 |
重要: サプリメントによるミネラル補給は、特定のミネラルだけを過剰に摂取し、他のミネラルとのバランスを崩す原因となります。自己判断での使用は避け、必ず獣医師に相談しましょう。
手作り食でのミネラルバランスについては「愛情たっぷり手作りごはんのレシピと注意点」を参考にしてください。
1日の摂取量の計算方法【体重別早見表】
愛犬に必要な栄養量を知るには、まず1日に必要なカロリー(エネルギー)を計算することが基本となります。
DER(1日エネルギー要求量)の計算式
日本動物医療センターによると、犬の1日に必要なカロリーは以下の式で計算できます:
DER = 70 × 体重^0.75 × 活動係数
活動係数の目安
| 状態 | 活動係数 |
|---|---|
| 避妊・去勢済みの成犬 | 1.6 |
| 未去勢・未避妊の成犬 | 1.8 |
| 活発な犬 | 2.0〜2.5 |
| 肥満傾向の犬 | 1.2〜1.4 |
| 減量中の犬 | 1.0 |
| 成長期の子犬 | 2.0〜3.0 |
| 妊娠後期の犬 | 2.0 |
| 授乳中の犬 | 2.0〜4.0 |
体重別カロリー・栄養早見表(成犬・避妊去勢済み)
| 体重 | 1日のカロリー | タンパク質目安 | 脂質目安 |
|---|---|---|---|
| 2kg | 約140kcal | 6〜8g | 3〜5g |
| 3kg | 約185kcal | 8〜10g | 4〜7g |
| 5kg | 約270kcal | 12〜15g | 6〜10g |
| 7kg | 約340kcal | 15〜20g | 8〜13g |
| 10kg | 約450kcal | 20〜28g | 10〜17g |
| 15kg | 約600kcal | 27〜38g | 13〜22g |
| 20kg | 約760kcal | 34〜48g | 17〜28g |
| 25kg | 約890kcal | 40〜56g | 20〜33g |
| 30kg | 約1020kcal | 46〜64g | 23〜38g |
※タンパク質は体重1kgあたり1.3〜2.8g、脂質はカロリーの約20〜30%で計算
おやつを与える場合の注意
おやつ🛒のカロリーは1日の摂取カロリーの10〜20%以内に抑えましょう。
例:1日500kcal必要な犬の場合
おやつ:50〜100kcal以内
主食(フード):400〜450kcalに減らす
詳しい食事量の計算は「うちの子は食べ過ぎ?適切な食事量の計算法」をご覧ください。
ライフステージ別の栄養ニーズ
犬は成長段階によって必要な栄養量が大きく変化します。
子犬(パピー期:生後〜1歳頃)
成長期の子犬は、体を作るために多くの栄養を必要とします。
カロリー:成犬の約2倍
タンパク質:成犬の約1.25倍(フード中22.5%以上)
カルシウム:適量が重要(過剰も危険)
特に大型犬の子犬は、カルシウムの過剰摂取による骨格異常に注意が必要です。成長期用の総合栄養食を与えていれば、追加のサプリメント🛒は不要です。
子犬から成犬へのフード切り替えについては「子犬用から成犬用へ:フード切り替えのタイミング」で詳しく解説しています。
成犬(維持期:1歳〜7歳頃)
成犬期は体を維持するための栄養を過不足なく与えることが基本です。
活動量に応じたカロリー調整
体重の定期的なチェック
ボディコンディションスコア(BCS)での肥満度確認
運動量が多い犬は活動係数を高めに、室内で過ごすことが多い犬は低めに設定しましょう。
シニア犬(高齢期:7歳頃〜)
高齢になると代謝が低下し、必要なカロリーが減少します。
カロリー:成犬期より20〜30%減
タンパク質:消化しやすい良質なものを十分に
脂質:控えめに(肥満防止)
関節サポート成分:グルコサミン、コンドロイチンなど
シニア犬は腎臓や心臓の機能が低下していることもあるため、定期的な健康診断を受けましょう。
シニア犬の食事については「シニア犬の栄養ニーズと最適なフード選び」も参考にしてください。
まとめ:バランスが何より大切
犬の健康を維持するためには、5大栄養素をバランスよく摂取することが最も重要です。
この記事のポイント
5大栄養素:タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル
犬はタンパク質を多く必要とする:人間の約1.3〜2.8倍
脂肪酸のバランス:オメガ6:オメガ3 = 5〜6:1が理想
炭水化物は必須ではない:AAFCOで最低量は設定されていない
ミネラルは過剰摂取に注意:特にカルシウムとリンのバランス
ライフステージで必要量が変わる:子犬・成犬・シニアで異なる
総合栄養食を選べば安心
「総合栄養食」と表示されたフードは、AAFCO基準を満たしており、水とそのフードだけで必要な栄養を摂取できます。
手作り食を与える場合は、栄養バランスに特に注意が必要です。長期間続ける場合は、獣医師や動物栄養士に相談することをおすすめします。
愛犬の食事や栄養について不安がある場合は、かかりつけの獣医師に相談しましょう。定期的な健康診断と適切な食事管理で、愛犬の健康寿命を延ばすことができます。
犬の食事全般については「犬の食事と栄養:正しいフード選びの科学」でさらに詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。






