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犬のしつけ:信頼関係を築くトレーニング術

2匹以上の多頭飼いしつけのコツ

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「もう1匹犬を飼いたい」「2匹目を迎えたけれど、しつけがうまくいかない」——多頭飼いならではの悩みを抱えている飼い主さんは少なくありません。

犬は本来群れで暮らす動物ですが、だからといって複数の犬を同時に飼えば自然と仲良くなるわけではありません。多頭飼いを成功させるには、正しい顔合わせの手順先住犬への配慮、そして個別のトレーニングが欠かせません。

この記事では、東京都動物愛護相談センターの専門家アドバイスや、ドッグトレーナー監修の情報をもとに、多頭飼いのしつけを成功させるコツを詳しく解説します。

多頭飼いのしつけが成功するかは「先住犬のしつけ」で決まる

多頭飼いを考えている方にまず知っていただきたいのが、先住犬のしつけがしっかりできていれば、2匹目以降のしつけは格段に楽になるということです。

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先住犬がお手本になる理由

犬は本来、群れで生活する動物です。後から来た犬は、先にいる犬の行動を観察し、真似をする傾向があります。

例えば、先住犬が「おすわり」や「待て」をしっかりできていれば、新入り犬も「あの犬がやっているから、自分もやればいいんだ」と学習します。逆に、先住犬が無駄吠えをしたり、飛びついたりする癖があると、新入り犬も同じ問題行動を覚えてしまう可能性が高くなります。

東京都動物愛護相談センターによると、「後住犬は先住犬に倣って行動します。先住犬のしつけがきちんとできていれば、2匹目以降のしつけはあっさりと成功することが多い」とのことです。

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2匹目を迎える前にやっておくべきしつけ

2匹目の犬を迎える前に、先住犬には最低限以下のしつけができている状態が理想です:

  • 基本コマンド:「おすわり」「待て」「おいで」が確実にできる

  • トイレトレー🛒ニング:決められた場所で排泄できる

  • ハウストレーニング:クレートやケージで落ち着いて過ごせる

  • 無駄吠えの抑制:必要以上に吠えない

これらの基本ができていないまま2匹目を迎えると、両方の犬のしつけに苦労することになります。まずは信頼関係を築くトレーニングから始めることをおすすめします。

新入り犬との「顔合わせ」を成功させる5つのステップ

多頭飼いで最も重要なのが、先住犬と新入り犬の初めての顔合わせです。みんなのブリーダーのドッグトレーナー監修記事によると、第一印象がその後の関係性を大きく左右するとされています。

ステップ1:匂いで慣れさせる事前準備

犬にとって匂いは最も重要な情報源です。実際に会わせる前に、お互いの匂いに慣れさせる準備をしましょう。

ロイヤルカナンでは、「子犬を自宅に連れて帰り先住ペットと顔合わせをする前から、自宅にある毛布やおもちゃ🛒を子犬に与えることで先住ペットの匂いに慣れさせたり、逆に子犬の匂いに先住ペットを慣れさせるようにするのもよい」とアドバイスしています。

具体的な方法:

  • 新入り犬が使っていたタオルやブランケットを先住犬に嗅がせる

  • 先住犬のおもちゃを新入り犬に与えて匂いを覚えさせる

  • 可能であれば、迎え入れる前にお試し対面の機会を設ける

ステップ2:中立的な場所での初対面

先住犬にとって自宅は自分のテリトリー(縄張り)です。そこに突然新しい犬が入ってくると、警戒心や不安を感じやすくなります。

初対面は自宅以外の中立的な場所で行いましょう。

  • 公園や広場など、どちらの犬も縄張り意識を持っていない場所

  • お互いにリードをつけた状態で、飼い主がコントロールできるようにする

  • まずは匂いを嗅がせ合い、様子を観察する

ステップ3:ケージ越しの対面からスタート

自宅での対面は、いきなり同じ空間に放すのではなく、ケージ越しの対面から始めるのがポイントです。

新入り犬をケージやキャリーに入れたまま、先住犬が自由に近づいて匂いを嗅げるようにします。この方法なら、万が一どちらかが攻撃的になっても安全です。

ハウストレーニングができている犬であれば、この段階がスムーズに進みます。

ステップ4:短時間から徐々に時間を延ばす

ケージ越しの対面がうまくいったら、少しずつ直接触れ合う時間を設けていきます。

時間の目安:

  • 初日:ケージ越しの対面のみ

  • 2〜3日目:5〜10分程度の直接対面

  • 1週間後:20〜30分程度まで延長

  • 2週間後以降:様子を見ながら徐々に自由時間を増やす

焦らず、犬たちのペースに合わせることが大切です。

ステップ5:先住犬の反応を最優先で観察

顔合わせの際は、常に先住犬の反応を最優先で観察しましょう。

注意すべきサイン:

  • 唸る、歯を見せる → 無理させずに一度離す

  • 尻尾を下げる、耳を後ろに倒す → ストレスを感じている

  • 固まって動かない → 緊張や不安の表れ

これらのサインが見られたら、対面を中断してそれぞれの居場所に戻しましょう。

「先住犬優先」と「平等な愛情」の両立方法

多頭飼いでよく聞くアドバイスが「先住犬を優先しましょう」という言葉。しかし同時に「平等に愛情を注ぐことが大切」とも言われます。一見矛盾するこの2つを、どのように両立させればよいのでしょうか。

ごはん・おやつ・散歩の順番ルール

こいぬすてっぷの獣医師監修記事によると、「ご飯やおやつ🛒などの順番を必ず1頭目を先にしましょう。最低でも2頭目の子犬がしっかり先輩だと認識するまで行ってあげてください」とされています。

先住犬を優先すべき場面:

  • ごはんを与える順番

  • おやつを与える順番

  • 散歩の準備(リードをつける順番)

  • 抱っこやなでる順番

  • 部屋に入る・出る順番

これらの「順番」を徹底することで、犬たちの間で自然と序列が形成され、無用な争いを防ぐことができます。

愛情は平等に注ぐことの重要性

順番は先住犬優先でも、愛情の量は平等に注ぐことが大切です。

ヒルズペットでは、「一方が他方より優位に立ったり、一方が他方にやきもちを焼いたりしないように、それぞれに十分な愛情を注ぎ、コミュニケーションの時間をとることを忘れないようにしてください」とアドバイスしています。

具体的には:

  • それぞれの犬と1対1で過ごす時間を作る

  • 個別の散歩時間を設ける

  • 名前を呼んで個別に褒める機会を意識的に作る

嫉妬を防ぐための接し方

犬も嫉妬心を感じる動物です。特に新入り犬ばかりに注目していると、先住犬がストレスを感じてしまいます。

嫉妬を防ぐポイント:

  • 新入り犬を可愛がるときは、先住犬も一緒にいる場面で行う

  • 先住犬だけを特別扱いする時間も確保する

  • 新入り犬に構っているときに先住犬が寄ってきたら、先住犬も同時に褒める

ポジティブ強化トレーニングの考え方を取り入れ、両方の犬が良い行動をしたときにしっかり褒めることを心がけましょう。

多頭飼いでは「個別トレーニング」が鍵

多頭飼いのしつけで最も重要なポイントの一つが、犬を個別にトレーニングすることです。

なぜ同時にしつけると失敗しやすいのか

ヒルズペットによると、「子犬のしつけ教室を利用するときは、2匹を別のクラスに参加させるのも良い方法です」とされています。

2匹同時にしつけようとすると、以下の問題が起きやすくなります:

  • 注意が分散する:飼い主の注意が2匹に分かれ、十分な指導ができない

  • お互いに気が散る:犬同士で遊んでしまい、トレーニング🛒に集中できない

  • 学習速度の違い:犬によって覚える速さが異なり、一方が置いていかれる

  • 依存関係の形成:常に一緒だと、1匹では行動できなくなる

効果的な個別トレーニングの時間の作り方

毎日の生活の中で、それぞれの犬と1対1で向き合う時間を作りましょう。

個別トレーニングの例:

  • 朝の散歩は1匹ずつ別々に行く

  • 1匹をトレーニングしている間、もう1匹は別の部屋で家族と過ごす

  • 「おすわり」「待て」などの基本コマンドは個別に教える

AKC(アメリカンケネルクラブ)でも、「Give each dog one-on-one training time and tailor each dog's lesson plan to where they need the most help.(それぞれの犬に1対1のトレーニング時間を与え、それぞれの犬が最も助けを必要としている部分に合わせたレッスンプランを作りましょう)」と推奨しています。

ステーショントレーニングの活用法

多頭飼いで特に効果的なのが「ステーショントレーニング」です。これは、それぞれの犬に自分専用の「待機場所」を教えるトレーニング方法です。

ステーショントレーニングの方法:

  1. 各犬に専用のベッドやマットを用意する

  2. 「ハウス」や「マット」のコマンドで自分の場所に行くことを教える

  3. その場所で待つことができたら、しっかり褒める

  4. 1匹をトレーニングしている間、もう1匹は自分のステーションで待機

このトレーニングにより、複数の犬がいても秩序ある生活が送れるようになります。

多頭飼いの「喧嘩」を防ぐ環境づくり

多頭飼いでは、どんなに仲の良い犬同士でも喧嘩が起きることがあります。ペット&ファミリー損保の獣医師監修記事によると、喧嘩の原因を理解し、環境を整えることで多くのトラブルを未然に防ぐことができます。

喧嘩が起きやすい3つの状況

犬同士の喧嘩は、主に以下の状況で起きやすくなります:

1. 食事の時間 ごはんやおやつを取られまいとする本能から、食事中は攻撃的になりやすいです。

2. お気に入りのおもちゃ🛒や場所の取り合い 犬には所有欲があり、自分のものを守ろうとします。

3. 飼い主の注目の取り合い 飼い主に構ってもらいたいという気持ちから、嫉妬心が生まれることがあります。

頭数分のケージと居場所の確保

多頭飼いでは、犬の数だけケージやベッドを用意することが基本です。

いくら仲良しでも、犬にはそれぞれ自分だけの安らげる空間が必要です。1つのケージを共有させると、ストレスが溜まり喧嘩の原因になります。

居場所確保のポイント:

  • ケージは頭数分+1個あると安心

  • ベッドやブランケットもそれぞれ専用のものを用意

  • 逃げ場となる高い場所や隠れられるスペースも確保

犬の問題行動の多くは、適切な環境が整っていないことが原因です。

食事は別々の場所で与える

食事の時間は喧嘩が起きやすいため、必ず別々の場所で食べさせるようにしましょう。

食事の与え方:

  • それぞれのケージの中で、扉を閉めた状態で食べさせる

  • または、別々の部屋で食べさせる

  • 食べ終わるまでお互いを近づけない

  • おやつも同様に、個別に与える

犬同士が喧嘩してしまったときの正しい対処法

どんなに気をつけていても、犬同士の喧嘩が起きてしまうことはあります。そのときの正しい対処法を知っておきましょう。

素手で止めるのはNG!安全な止め方

喧嘩中の犬を素手で止めようとすると、飼い主が噛まれてケガをする危険性があります。興奮状態の犬は、相手が飼い主だと認識できないことがあるためです。

絶対にやってはいけないこと:

  • 手を犬の間に入れる

  • 犬を引き離そうと掴む

  • 大声で叫ぶ(さらに興奮させてしまう)

大きな音で注意を引く方法

喧嘩を止めるには、大きな音を出して犬の注意を引くのが効果的です。

具体的な方法:

  • フライパンをお玉で叩く

  • 空き缶にコインを入れたものを振る

  • 手を叩いて大きな音を出す

  • ホイッスルを吹く

ペット&ファミリー損保によると、「大きな音を立てるか、声掛けをして注意を引いてください。それでも止まらないようなら喧嘩をしている犬達の間に物を入れて間接的に離しましょう」とのことです。

音で犬が一瞬動きを止めたら、すかさず2匹を別々の部屋に離しましょう。

喧嘩の後のフォローアップ

喧嘩を止めた後は、すぐに元通りの生活に戻すのではなく、適切なフォローアップが必要です。

喧嘩後の対応:

  1. まずは別々の部屋で冷却期間を設ける(最低30分〜1時間)

  2. ケガがないかそれぞれ確認する

  3. 喧嘩の原因を分析し、環境を改善する

  4. 次の対面は短時間から様子を見ながら行う

喧嘩が頻繁に起きる場合や、激しい喧嘩が続く場合は、無駄吠え対策と同様に、専門のドッグトレーナーに相談することをおすすめします。

多頭飼いのしつけでよくある悩みQ&A

多頭飼いの飼い主さんからよく寄せられる質問にお答えします。

Q:先住犬が新入り犬を無視する

A:焦らず見守りましょう。

先住犬が新入り犬を無視するのは、実はそれほど悪いことではありません。攻撃的にならないということは、少なくとも「敵」とは認識していないということです。

無視している期間は、先住犬が新入り犬の存在に慣れるための時間です。数日〜数週間かけて徐々に関心を示すようになることが多いので、焦らず見守りましょう。

Q:2匹とも無駄吠えがひどくなった

A:個別トレーニング🛒と環境改善が必要です。

多頭飼いでは、1匹が吠え始めるともう1匹も同調して吠えることがあります。これを「警戒吠えの連鎖」と呼びます。

対策としては:

  • それぞれ個別に「静かに」のコマンドを教える

  • 吠えの原因(窓の外の刺激など)を特定して環境を改善する

  • 吠えなかったときにしっかり褒める

Q:どちらかが攻撃的になった

A:原因の特定と専門家への相談が必要です。

急に攻撃的になった場合、以下の可能性を検討してください:

  • 体調不良:痛みがあると攻撃的になることがある

  • ストレス:環境の変化や運動不足

  • 恐怖や不安:何かに怯えている

まずは獣医師に相談して健康上の問題がないか確認し、問題がなければドッグトレーナーに相談しましょう。

Q:なかなか仲良くならない

A:犬同士の相性には個体差があります。

すべての犬が仲良くなれるわけではありません。特に以下の組み合わせは難しいことがあります:

  • 同性同士(特にオス同士)

  • 年齢が近い犬同士

  • 縄張り意識の強い犬種同士

仲良くなれなくても、お互いを「攻撃しない」「無視できる」状態になれば、多頭飼いは成立します。無理に仲良くさせようとせず、適切な距離感を保つことも大切です。

犬のコミュニケーションを理解し、それぞれの犬の気持ちに寄り添いましょう。

まとめ:多頭飼いのしつけは飼い主の心構えが大切

多頭飼いのしつけを成功させるポイントを改めて整理しましょう。

多頭飼いしつけの重要ポイント:

  1. 先住犬のしつけを完璧に — 2匹目を迎える前に基本をマスター

  2. 顔合わせは慎重に — 匂いから始め、段階的に距離を縮める

  3. 先住犬優先+平等な愛情 — 順番は先住犬優先、愛情は平等に

  4. 個別トレーニングの実施 — 1対1の時間を確保する

  5. 環境を整える — 頭数分のケージ🛒と別々の食事場所

  6. 喧嘩の正しい対処法を知る — 素手で止めない、音で注意を引く

多頭飼いが成功するかどうかは、飼い主の心構えと準備次第です。犬任せにせず、飼い主が主導権を持って環境を整え、適切なしつけを行うことで、複数の犬との幸せな暮らしを実現できます。

困ったときは一人で悩まず、獣医師やドッグトレーナーなどの専門家に相談しましょう。また、信頼関係を築くトレーニングの基本に立ち返ることで、多くの問題は解決への糸口が見つかります。

2匹以上の犬との暮らしは、大変なこともありますが、その分喜びも2倍、3倍になります。正しい知識と準備で、素敵な多頭飼いライフを送ってください。

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