「クレート🛒に入れると吠え続ける」「ケージを見ただけで逃げてしまう」——そんな悩みを抱える飼い主さんは少なくありません。しかし、正しい方法でトレーニングすれば、愛犬はクレートを「安心できる自分だけの場所」として受け入れてくれます。
クレートトレーニングは単なるしつけではなく、災害時の避難、動物病院での入院、旅行時の移動など、さまざまな場面で愛犬のストレスを軽減する重要なスキルです。この記事では、行動学専門の獣医師の知見をもとに、犬がハウスを好きになる段階的なトレーニング方法を詳しく解説します。
クレートトレーニングとは?なぜ大切なのか
クレートトレーニングとは、犬にとってクレート(ハウス)が「安全で安心できる場所」であることを教えるしつけです。犬の祖先であるオオカミは、狭くて暗い巣穴で休息をとる習性がありました。この本能を活かし、クレートを「自分だけの巣穴」として認識させることがトレーニングの本質です。

犬のしつけ:信頼関係を築くトレーニング術でも解説しているように、すべてのトレーニングの基盤は飼い主との信頼関係です。クレートトレーニングも例外ではなく、無理強いせず、犬のペースを尊重することが成功の鍵となります。
クレートトレーニングのメリット
クレートトレーニングには、以下のような多くのメリットがあります。
1. 分離不安の予防・軽減

東京DOGSによると、犬は飼い主と離れてから最初の30分間に最もストレスを感じます。クレートを「安心基地」として認識させることで、お留守番時の不安を大幅に軽減できます。
2. 災害時・緊急時の備え
地震や台風などの災害時、避難所ではクレートやケージでの生活が求められることがほとんどです。普段からクレートに慣れていれば、非常時でもパニックにならず、落ち着いて過ごせます。
3. 移動時のストレス軽減
車での移動や飛行機での輸送時、クレート🛒は犬の安全を守る必需品です。クレートトレーニングができていれば、長時間の移動でもストレスなく過ごせます。
4. 動物病院での入院時
手術後の安静が必要な場合や入院時、ケージでの生活が必要になります。普段からクレートに慣れている犬は、見知らぬ環境でも比較的落ち着いて過ごせます。
ケージとクレートの違い
「ケージ」と「クレート」は混同されがちですが、実は用途が異なります。
| 項目 | ケージ | クレート |
|---|---|---|
| 主な用途 | 室内での生活空間 | 移動・一時的な休息場所 |
| サイズ | 比較的大きい | コンパクト |
| 構造 | 金属製の柵状 | 箱型で囲まれている |
| 適したシーン | 留守番、就寝時 | 通院、旅行、災害避難 |
この記事では主に「クレート」を使ったトレーニングを解説しますが、基本的な考え方はケージにも応用できます。
クレートの選び方:サイズと素材のポイント
トレーニングを始める前に、愛犬に合った適切なクレートを選ぶことが重要です。サイズが合わないクレートは、犬にストレスを与え、トレーニングの妨げになります。
GREEN DOGの専門家によると、クレート選びで最も重要なのは「サイズ」と「素材」の2点です。
正しいサイズの測り方
クレートのサイズを選ぶ際は、まず愛犬の体を正確に測定しましょう。
測定方法:
体高:四肢で立った状態で、床から頭のてっぺんまでの高さ
体長:伏せの状態で、鼻先からお尻(尻尾の付け根)までの長さ
適正サイズの目安:
高さ:体高+5〜10cm(頭を少し下げた状態で立てる程度)
奥行き:体長と同程度か、やや余裕がある程度
幅:犬がくるりと方向転換できる広さ
犬種別サイズ目安:
| 犬種 | 推奨サイズ |
|---|---|
| チワワ、トイプードル | Sサイズ(幅43×高40×奥54cm程度) |
| 柴犬、ビーグル | Mサイズ(幅51×高48×奥69cm程度) |
| ラブラドール、ゴールデン | Lサイズ(幅55×高60×奥81cm程度) |
| シェパード、大型犬 | LLサイズ(幅63×高67×奥90cm程度) |
ダックスフンドなどの胴長犬種は、高さよりも奥行きを優先して選びましょう。
ハードタイプとソフトタイプの違い
クレート🛒には大きく分けて「ハードタイプ」と「ソフトタイプ」の2種類があります。
ハードタイプ(プラスチック製)
メリット:丈夫で壊れにくい、丸洗いできて衛生的、飛行機輸送にも対応
デメリット:重い、収納時にかさばる
おすすめシーン:車での移動、災害時の備え、日常的なハウストレーニング
ソフトタイプ(布製)
メリット:軽量で持ち運びやすい、折りたたみ可能でコンパクト
デメリット:衝撃に弱い、噛み癖がある犬には不向き
おすすめシーン:短時間の外出、アウトドア、旅行時のサブクレート
初めてのクレートトレーニングには、丈夫で安定感のあるハードタイプがおすすめです。
クレートを好きにさせる5ステップ
ここからは、American Kennel ClubとPETOKOTOのトレーナー解説を参考に、犬がクレートを好きになるための5つのステップを詳しく解説します。
トレーニングの期間は犬の性格や過去の経験によって異なりますが、一般的に数日〜数週間かかります。焦らず、犬のペースに合わせて進めることが大切です。
ステップ1:クレートに慣れさせる(扉を外す)
最初の目標は、クレートの存在に慣れてもらうことです。
やり方:
クレートの扉を外すか、開けた状態で固定する
リビングなど犬がよくいる場所にクレートを置く
中にふわふわの毛布やお気に入りのおもちゃを入れる
犬が自然に興味を示すまで、何もせず見守る
この段階では、犬をクレートに誘導する必要はありません。「そこに何かある」と認識させるだけで十分です。好奇心旺盛な犬なら、自分から匂いを嗅いだり、中を覗いたりするでしょう。
ポイント: 扉がついていると犬が警戒することがあります。「急に閉められるのでは」という不安を取り除くため、最初は扉を完全に外すか、紐で固定しておきましょう。
ステップ2:おやつで良い印象を作る
犬がクレートの存在に慣れてきたら、次は「クレート=いいことがある場所」という印象を植え付けます。
やり方:
クレートの入口付近におやつを置く
犬がおやつを食べたら、さりげなく褒める
徐々におやつを奥へ移動させる
犬が自分からクレート内に入るようになるまで繰り返す
ポジティブ強化トレーニングの基本は「良い行動を褒めて強化する」ことです。クレートに入ったら必ず褒めて、ポジティブな経験を積み重ねましょう。
おすすめのおやつ:
小さくちぎれるジャーキー
犬用チーズ
フリーズドライの肉
KONGに詰めたピーナッツバター(凍らせると長持ち)
トレーニングおやつの効果的な使い方も参考にしてください。
ステップ3:食事をクレート内で与える
食事は犬にとって最も楽しみな時間の一つです。この強力な動機付けを利用して、クレートへの好感度をさらに高めましょう。
やり方:
フードボウル🛒をクレートの入口付近に置く
犬が抵抗なく食べるようになったら、ボウルを少しずつ奥へ移動
最終的にクレートの一番奥で食事させる
注意点:
食事中は扉を閉めない(まだこの段階では)
食べ終わったらすぐに出られるようにしておく
無理に奥へ誘導しない(犬のペースを尊重)
ステップ4:「ハウス」の合図を教える
犬がクレートに自分から入るようになったら、コマンド(合図)と行動を結びつけます。
やり方:
おやつを手に持ち、犬の注目を集める
「ハウス」と声をかけながら、おやつでクレート🛒内へ誘導
犬が中に入ったら、「いい子!」と褒めておやつを与える
繰り返し練習し、「ハウス」の一言で入れるようにする
ポイント:
コマンドは「ハウス」「ケージ」「イン」など、短くわかりやすい言葉を選ぶ
家族全員が同じコマンドを使う
入った後に「オスワリ」「フセ」をさせると、より落ち着く
ステップ5:扉を閉める練習
いよいよ最終ステップです。ここが最も時間と忍耐が必要な段階ですが、焦らず少しずつ進めましょう。
やり方:
犬がクレート内で食事中またはおやつを食べている間、扉を5秒だけ閉める
すぐに扉を開け、出てきたら褒める
徐々に扉を閉める時間を延ばす(10秒→30秒→1分→5分...)
扉を閉めた状態でその場を離れる練習も加える
重要なポイント:
Animal Humane Societyによると、犬が鳴いている間は絶対に扉を開けてはいけません。「鳴けば出してもらえる」と学習してしまうからです。必ず鳴き止んでから扉を開けましょう。
ただし、長時間鳴き続ける場合は、ステップを戻して少し短い時間から再スタートしてください。
クレートトレーニングでやってはいけないNG行動
クレートトレーニングを台無しにしてしまう「やってはいけない行動」を知っておくことも大切です。やってはいけないしつけ5選も合わせてチェックしてください。
無理矢理押し込むのはNG
犬が嫌がっているのに無理矢理クレートに押し込むのは、最もやってはいけない行動です。
なぜダメなのか:
クレートに対するトラウマができる
恐怖心が強まり、見ただけで逃げるようになる
一度ついた悪いイメージを払拭するのは非常に難しい
犬がクレート🛒を怖がる場合は、ステップを戻してゆっくりやり直しましょう。
罰として使うのはNG
「いたずらしたからクレートに入れる」「吠えたから閉じ込める」——これは絶対にNGです。
なぜダメなのか:
クレート=「罰を受ける嫌な場所」と認識してしまう
トレーニングが振り出しに戻る
分離不安の原因にもなりうる
クレートは常に「安心できる良い場所」でなければなりません。
長時間入れっぱなしはNG
クレートに長時間閉じ込めておくのも避けるべきです。
時間の目安:
| 犬の年齢 | 連続でクレートに入れる最大時間 |
|---|---|
| 生後2〜3ヶ月 | 2〜3時間 |
| 生後4〜5ヶ月 | 4〜5時間 |
| 生後6ヶ月以上 | 6時間程度 |
| 成犬 | 6〜8時間(理想は4〜6時間) |
長時間のお留守番が必要な場合は、クレートではなく、もう少し広いサークルやケージを使用することをおすすめします。
ケージ嫌いを克服するコツ
すでにケージやクレートを嫌がるようになってしまった犬には、特別なアプローチが必要です。
原因を特定する
まずは、なぜケージを嫌がるのか原因を探りましょう。
考えられる原因:
過去のトラウマ:以前に無理矢理閉じ込められた経験
サイズの不適合:狭すぎる、または広すぎる
分離不安:飼い主と離れること自体が怖い
環境の問題:置き場所が暑すぎる、寒すぎる、騒がしい
Preventive Vetは、原因に応じたアプローチを推奨しています。
ゼロからやり直す方法
ケージ嫌いが強い場合は、思い切って新しいクレートを用意し、ゼロからトレーニングをやり直すことも有効です。
やり直しのポイント:
新しいクレートを用意:以前のものとは違うタイプ・色のものを選ぶ
全く別の場所に置く:嫌な記憶と結びつかない場所に設置
最初から丁寧にステップを踏む:焦らず、1ステップに1〜2週間かける
プロに相談する:深刻な場合はドッグトレーナーや獣医行動学専門医に相談
特に自傷行為を伴うパニック状態になる場合は、必ず専門家に相談してください。
分離不安の予防とクレートトレーニング
クレートトレーニングは、分離不安の予防・軽減にも効果的です。
東京DOGSによると、子犬を迎えた日から一定時間サークル🛒やクレートに入れて慣らすことは、分離不安にならないための大切なしつけの基本です。
分離不安予防のコツ:
最初の30分を乗り越える工夫:KONGなどの知育おもちゃで気を紛らわせる
飼い主のにおいがするものを入れる:着古したTシャツや使用済みタオル
出かける前に騒がない:「行ってきます」を大げさにしない
帰宅後も静かに:大興奮で出迎えられても、落ち着くまで無視
すでに分離不安の症状が出ている場合は、問題行動を直すカウンタートレーニングも参考にしてください。深刻な場合は、獣医師への相談をおすすめします。
まとめ:クレートは愛犬の「安心基地」
クレートトレーニングは、愛犬に「自分だけの安心できる場所」を与えるためのしつけです。
成功のポイントをおさらい:
無理強いしない:犬のペースを尊重する
良い印象を積み重ねる:おやつや食事を活用
段階的に進める:焦らず5ステップで
罰として使わない:常に「良い場所」として
適切な時間を守る:長時間の閉じ込めはNG
トレーニングには時間がかかりますが、一度クレートを好きになれば、災害時も旅行時も、愛犬は安心して過ごせるようになります。
より詳しいしつけ情報は犬のしつけ:信頼関係を築くトレーニング術をご覧ください。愛犬との絆を深めながら、楽しくトレーニングを進めていきましょう。






