愛犬を感染症から守るための混合ワクチン。動物病院🛒で「5種と8種、どちらにしますか?」と聞かれて迷った経験はありませんか?ワクチンの種類によって予防できる病気が異なり、愛犬の生活スタイルによって最適な選択は変わってきます。
この記事では、混合ワクチンの種類と違いを徹底解説し、あなたの愛犬にぴったりのワクチン選びをサポートします。世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインに基づいた科学的な情報をもとに、賢い選択ができるようになりましょう。
混合ワクチンとは?基本を理解しよう
混合ワクチンは、複数の感染症を1回の注射で予防できる便利なワクチンです。愛犬の健康を守る第一歩として、まずは基本を押さえておきましょう。詳しい病気予防の全体像については「愛犬の健康を守る病気予防と早期発見」も参考にしてください。

混合ワクチンの役割と仕組み
混合ワクチンは、弱毒化または不活化したウイルスや細菌を体内に入れることで、免疫システムに「敵」を記憶させます。実際に病原体が侵入したときに、すばやく抗体を作って病気の発症を防いだり、症状を軽く抑えたりする効果があります。
人間のインフルエンザワクチンと同じ原理ですが、犬の混合ワクチンは複数の病原体に対する免疫を同時に獲得できる点が特徴です。
日本で接種できるワクチンの種類(5種〜10種)

日本国内で一般的に流通している混合ワクチンは以下の通りです:
| ワクチンの種類 | 予防できる病気の数 | 特徴 |
|---|---|---|
| 5種混合 | 5種類 | 基本的な感染症を予防 |
| 6種混合 | 6種類 | 5種+コロナウイルス |
| 7種混合 | 7種類 | 5種+レプトスピラ2型 |
| 8種混合 | 8種類 | 5種+レプトスピラ2型+コロナウイルス |
| 10種混合 | 10種類 | 8種+レプトスピラ追加型 |
ラハ動物病院の解説によると、5種と7種以上の大きな違いは「犬レプトスピラ感染症」が含まれているかどうかです。この違いが、ワクチン選びの重要なポイントになります。
コアワクチンとノンコアワクチン:WSAVAガイドラインの基準
ワクチンを選ぶ際に知っておきたいのが、「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」という分類です。世界小動物獣医師会(WSAVA)が定めた国際基準をご紹介します。
コアワクチン:すべての犬に推奨される4つの予防接種
コアワクチンとは、世界中で感染が認められる重度かつ致死的な感染症から動物を防御するもので、すべての犬に接種が推奨されています。
コアワクチンに含まれる感染症:
犬ジステンパーウイルス(CDV)感染症 - 致死率50〜90%
犬パルボウイルス(CPV-2)感染症 - 子犬の致死率90%以上
犬伝染性肝炎(CAV-1) - 肝臓を破壊する危険な病気
狂犬病 - 日本では法律で接種が義務付けられている
これらの病気は感染力が非常に強く、発症すると命に関わるため、生活環境に関係なくすべての犬が接種すべきとされています。狂犬病については「狂犬病ワクチン:法律で決まった義務と罰則」で詳しく解説しています。
ノンコアワクチン:生活スタイルで判断する予防接種
ノンコアワクチンは、「個々の動物の地理的要因やライフスタイルによる暴露リスクならびにリスク・ベネフィット比の評価に基づき使用が判断されるワクチン」と定義されています。
ノンコアワクチンに含まれる感染症:
犬パラインフルエンザウイルス(CPiV)感染症 - ケンネルコフの原因
犬レプトスピラ症 - 地域により感染リスクが異なる
ボルデテラ感染症 - ペットホテルやドッグラン🛒を利用する犬に推奨
愛犬がアウトドアをよく楽しむか、他の犬と接触する機会が多いかなど、生活スタイルによって必要性が変わってきます。
5種混合ワクチンで予防できる病気
5種混合ワクチンは、犬の混合ワクチンの「ベース」となるもので、以下の5つの感染症を予防します。
犬ジステンパー:致死率90%の恐ろしいウイルス
日本臨床獣医学フォーラムによると、犬ジステンパーはパラミクソウイルス科のウイルスによる感染症で、極めて感染力が強く、ワクチン未接種の若い犬では致死率が90%を超えることもあります。
主な症状:
初期:高熱(40℃前後)、目やに、鼻水、食欲低下
中期:咳、くしゃみ、嘔吐、下痢
末期:神経症状(痙攣、麻痺)
特徴的なのは「二峰性発熱」と呼ばれる発熱パターンで、一度熱が下がってから再び上昇します。神経症状が出ると予後は非常に厳しく、回復しても後遺症が残ることが多いです。詳しくは「ジステンパーの初期症状と治療の現実」をご覧ください。
犬パルボウイルス:子犬の大敵
日本臨床獣医学フォーラムの情報によれば、犬パルボウイルス感染症は特に子犬にとって致命的な病気です。感染した子犬の致死率は90%にも達します。
パルボウイルスの恐ろしい特徴:
60℃で1時間加熱しても死滅しない
アルコールや逆性石鹸では消毒不可
環境中で数ヶ月以上生存可能
人間の靴に付着して運ばれることも
感染経路は主に糞便からの経口感染で、激しい嘔吐と血便を伴う下痢を引き起こします。生後間もない子犬が感染すると、発症後わずか1日で死亡することもあります。「致死率90%!パルボウイルスの恐怖と予防」で詳細を解説しています。
犬伝染性肝炎(アデノウイルス1型)
犬アデノウイルス1型による感染症で、主に肝臓に障害を起こします。急性の場合は突然死することもあり、回復期に角膜が青白く濁る「ブルーアイ」という特徴的な症状が見られることがあります。
犬アデノウイルス2型感染症
犬アデノウイルス2型は主に呼吸器に感染し、咳や鼻水などの症状を引き起こします。単独での致死率は高くありませんが、他の病原体と混合感染すると重症化するリスクがあります。
犬パラインフルエンザ:ケンネルコフの原因
犬パラインフルエンザウイルスは「ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)」の主要な原因の一つです。多頭飼育環境やペットホテル、ドッグラン🛒など、犬が密集する場所で感染リスクが高まります。
乾いた咳が特徴で、軽症であれば1〜2週間で自然回復しますが、子犬や高齢犬では重症化することがあります。「咳が止まらない!ケンネルコフの症状と対処」も参考にしてください。
8種混合ワクチンで追加される予防対象
8種混合ワクチンは、5種混合に加えて「犬レプトスピラ症」と「犬コロナウイルス感染症」を予防します。
犬レプトスピラ症:人にもうつる危険な感染症
国立感染症研究所によると、レプトスピラ症は病原性レプトスピラという細菌(スピロヘータ)による感染症で、人獣共通感染症として感染症法で4類感染症に指定されています。
感染経路:
ドブネズミなど野生動物の尿
汚染された水や土壌との接触
特に水辺(河川敷、田んぼ、沼地)でのリスクが高い
日本での発生状況:
関東以西での発生が多い
沖縄県が全体の約半数を占める
7〜10月(夏〜秋)に発生が集中
大雨や台風後に感染リスクが上昇
レプトスピラには複数の型(血清型)があり、ワクチンは特定の型のみを予防するため、地域で流行している型に合わせたワクチン選択が重要です。2017年には大阪府で11頭が感染し9頭が死亡するという集団感染も発生しています。
犬コロナウイルス感染症:必要性への疑問
犬コロナウイルス感染症は、主に消化器症状(下痢、嘔吐)を引き起こす感染症です。ただし、WSAVAガイドラインでは「非推奨ワクチン」に分類されており、科学的に接種を行うべき根拠が十分ではないとされています。
単独感染での重症化リスクは低いですが、パルボウイルスなどとの混合感染で症状が悪化することがあります。なお、人間に感染するCOVID-19とは異なるウイルスです。
5種と8種の比較:どちらを選ぶべき?
愛犬に最適なワクチンを選ぶために、5種と8種の違いを整理しましょう。
5種・8種ワクチン比較表
| 予防対象 | 5種 | 8種 |
|---|---|---|
| 犬ジステンパー | ✅ | ✅ |
| 犬パルボウイルス | ✅ | ✅ |
| 犬伝染性肝炎 | ✅ | ✅ |
| 犬アデノウイルス2型 | ✅ | ✅ |
| 犬パラインフルエンザ | ✅ | ✅ |
| 犬レプトスピラ症(2型) | ❌ | ✅ |
| 犬コロナウイルス | ❌ | ✅ |
| 費用目安 | 5,000〜7,000円 | 7,000〜9,000円 |
| 副作用リスク | 低め | やや高め |
5種が向いている犬・飼い主
5種混合ワクチンが適しているケース:
主に室内で過ごし、外出は近所の散歩程度
アウトドア🛒活動(キャンプ、川遊び)をしない
田んぼや河川敷など水辺に行く機会がない
副作用リスクを最小限に抑えたい
過去にワクチンでアレルギー🛒反応を起こしたことがある
都市部のマンションで暮らし、舗装された道を散歩するだけであれば、5種で十分なケースが多いでしょう。
8種が向いている犬・飼い主
8種混合ワクチンが適しているケース:
キャンプや川遊びなどアウトドアを楽しむ
散歩コースに河川敷や田んぼがある
山や森など野生動物が多い地域に行く
西日本や沖縄など、レプトスピラ発生の多い地域に住んでいる
ドッグランやペットホテルを頻繁に利用する
レプトスピラ症は人にも感染する危険な病気です。感染リスクのある環境に愛犬を連れていく場合は、8種以上のワクチンを検討しましょう。年間の予防医療スケジュールについては「年間スケジュール表:予防医療カレンダー」をご覧ください。
ワクチンの副作用とリスク管理
ワクチンは愛犬を守る重要な予防手段ですが、副作用のリスクもゼロではありません。つだ動物病院の情報をもとに、正しい知識を身につけましょう。
一般的な副作用と発生率
2012年の日本における大規模調査によると、混合ワクチンの副反応発生率は以下の通りです:
| 副反応の種類 | 発生率(1万回接種あたり) |
|---|---|
| 全体の副反応 | 0.63%(63件) |
| 消化器症状 | 0.28%(28件) |
| 皮膚症状 | 0.43%(43件) |
| アナフィラキシー | 0.07%(7件) |
| 死亡 | 0.002%(0.2件) |
一般的な軽度の副反応:
接種部位の腫れや痛み
元気がなくなる、食欲低下
軽度の発熱
顔の腫れ(ムーンフェイス)
これらの症状は通常1〜2日で自然に回復します。ただし、症状が長引く場合や悪化する場合は獣医師に相談してください。
アナフィラキシー:命に関わる重篤な反応
アナフィラキシーとは、ワクチン接種後に起こる急性の全身性アレルギー反応で、最も重篤な副作用です。接種後数分〜30分以内に発症することが多く、迅速な対応が必要です。
アナフィラキシーの症状:
ぐったりする
呼吸困難、喘鳴
痙攣
チアノーゼ(口の粘膜や舌が青紫色になる)
嘔吐、下痢
虚脱(急に倒れる)
これらの症状が見られたら、すぐに動物病院に連絡し、緊急受診してください。
副作用リスクを減らす5つのポイント
1. 午前中に接種する 万が一の副作用に備え、午後も様子を観察できる時間帯に接種しましょう。
2. 体調の良い日を選ぶ 発熱や下痢など、体調不良時の接種は避けてください。
3. 接種後30分は病院で待機 アナフィラキシーは接種直後に起こることが多いため、病院で様子を見てから帰宅すると安心です。
4. 接種後は安静に 当日の激しい運動やシャンプー🛒は控え、ゆっくり過ごさせましょう。
5. 副作用歴がある場合は事前に相談 過去にアレルギー反応を起こしたことがある場合は、事前に獣医師に伝え、予防的な投薬やワクチンの変更を検討してもらいましょう。
副作用リスクが高い犬の特徴:
1歳未満の子犬
10歳以上の高齢犬
小型犬(特にミニチュア・ダックスフント)
過去にワクチンで反応を起こしたことがある犬
ワクチン接種のスケジュールと費用
ペット&ファミリー損保の情報を参考に、適切な接種スケジュールと費用について解説します。
子犬のワクチン接種スケジュール
子犬は母犬からもらった移行抗体が徐々に減少していくため、複数回の接種が必要です。
推奨される接種スケジュール:
| 接種回数 | 時期 | 目的 |
|---|---|---|
| 1回目 | 生後6〜8週 | 免疫の基礎づくり開始 |
| 2回目 | 生後10〜12週 | 免疫の強化 |
| 3回目 | 生後14〜16週 | 確実な免疫獲得 |
| 追加接種 | 1歳時 | ブースター接種 |
生後16週までに3回以上の接種を完了することで、確実な免疫を獲得できます。
成犬のワクチン接種頻度
WSAVAガイドラインでは、子犬期に着実に免疫を獲得した後の接種間隔として以下を推奨しています:
コアワクチン:3年以上ごと(ジステンパー、パルボ、アデノウイルス)
ノンコアワクチン:1年ごと(レプトスピラ、パラインフルエンザ)
ただし、日本の多くの動物病院では年1回の接種を推奨しているケースが多いです。愛犬の状態や生活環境に応じて、獣医師と相談して決めましょう。健康診断と合わせた定期検診については「年に何回必要?犬の健康診断と検査内容」も参考にしてください。
ワクチン費用の目安
| ワクチンの種類 | 費用目安 |
|---|---|
| 5種混合 | 5,000〜7,000円 |
| 6種混合 | 5,500〜7,500円 |
| 7種混合 | 6,000〜9,000円 |
| 8種混合 | 7,000〜9,000円 |
| 9種・10種混合 | 10,000円以上 |
| 狂犬病(別途必須) | 2,500〜3,500円 |
費用は動物病院によって異なります。また、初診料や再診料が別途かかる場合もありますので、事前に確認しておくと安心です。
獣医師に相談すべきポイント
ワクチン選びで迷ったら、かかりつけの獣医師に相談するのが一番です。より良い相談ができるよう、準備しておきたいポイントをご紹介します。
相談時に伝えるべき愛犬の情報
生活環境に関する情報:
住んでいる地域(都市部か郊外か)
散歩コース(河川敷、田んぼ、山など)
アウトドア🛒活動の頻度(キャンプ、川遊びなど)
他の犬との接触機会(ドッグラン、ペットホテルなど)
愛犬の健康状態:
過去のワクチン接種歴と反応
持病やアレルギーの有無
現在服用している薬
最近の体調変化
これらの情報を伝えることで、獣医師は愛犬に最適なワクチンを提案できます。
抗体価検査という選択肢
抗体価検査とは、血液検査によって愛犬の体内にある抗体の量を測定するものです。この検査により、ワクチン接種の必要性を客観的に判断できます。
抗体価検査のメリット:
過剰なワクチン接種を避けられる
副作用リスクを減らせる
ワクチンアレルギーがある犬の代替手段になる
抗体価検査のデメリット:
検査費用がかかる(5,000〜15,000円程度)
すべての感染症に対応しているわけではない
抗体価が低い場合は結局ワクチン接種が必要
過去にワクチンで重篤な副作用を経験した犬や、高齢でワクチン接種に不安がある場合は、獣医師に抗体価検査について相談してみてください。
まとめ:愛犬に最適なワクチンを選ぼう
混合ワクチンの選び方について、重要なポイントをおさらいしましょう。
5種混合ワクチンを選ぶ目安:
室内飼いで外出は近所の散歩程度
アウトドア活動をしない
副作用リスクを最小限にしたい
8種混合ワクチンを選ぶ目安:
キャンプや川遊びなどアウトドアを楽しむ
散歩コースに河川敷や田んぼがある
レプトスピラ発生の多い地域に住んでいる
どちらを選んでも、コアワクチン(ジステンパー、パルボ、アデノウイルス、伝染性肝炎)はしっかり予防できます。迷ったときは、愛犬の生活スタイルを獣医師に伝えて相談しましょう。
ワクチンは愛犬を感染症から守る最も効果的な手段です。適切なワクチンを選び、正しいスケジュールで接種することで、愛犬との健やかな毎日を守りましょう。






