「狂犬病ワクチンって本当に必要なの?」「日本では発生していないのに、なぜ義務化されているの?」
愛犬を飼い始めた方からよく聞かれる疑問です。実は、狂犬病予防法により、日本で犬を飼うすべての飼い主🛒には法的義務が課せられており、違反すると20万円以下の罰金が科される可能性があります。
この記事では、狂犬病ワクチン接種の義務内容、罰則の実態、接種費用、そして免除条件まで詳しく解説します。愛犬の健康と法令遵守の両方を理解して、責任ある飼い主になりましょう。
狂犬病予防法とは?飼い主に課せられた3つの義務
狂犬病予防法は、1950年(昭和25年)に制定された法律です。当時、日本国内で年間数百人が狂犬病で亡くなっていた背景があり、人と動物の健康を守るために厳格な予防措置が定められました。

この法律により、91日齢以上の犬を飼うすべての飼い主には、以下の3つの義務が課せられています。
義務1:市町村への犬の登録(生涯1回)
犬を飼い始めたら、30日以内に居住地の市区町村に届け出て、犬の登録を行う必要があります。登録すると「鑑札」と呼ばれる金属製の札が交付されます。この登録は犬の生涯で1回のみ必要で、転居した場合は転居届を提出します。
義務2:毎年の狂犬病予防注射

厚生労働省によると、犬の飼い主は毎年1回、狂犬病予防注射を受けさせる義務があります。接種期間は原則として4月1日から6月30日までと定められていますが、この期間外でも動物病院で接種を受けることができます。
義務3:鑑札と注射済票の装着
登録時に交付される「鑑札」と、予防注射後に交付される「注射済票」は、必ず犬に装着しなければなりません。これにより、万が一犬が迷子になった場合でも飼い主を特定できます。
愛犬の総合的な健康管理🛒については「愛犬の健康を守る病気予防と早期発見」で詳しく解説しています。
違反したらどうなる?罰則の内容と実態
狂犬病予防法に違反した場合、どのような罰則があるのでしょうか。厚生労働省のQ&Aによると、以下の罰則が定められています。
20万円以下の罰金
狂犬病予防法第27条により、以下の違反行為には20万円以下の罰金が科せられます。
犬を登録していない場合
狂犬病予防注射を受けさせていない場合
鑑札や注射済票を犬に装着していない場合
捕獲・抑留の対象
登録されていない犬、予防注射を受けていない犬、鑑札や注射済票を装着していない犬は、自治体による捕獲・抑留の対象となります。抑留された犬は一定期間内に飼い主が引き取らない場合、殺処分される可能性もあります。
実際の検挙状況
「本当に罰則は適用されるの?」と思われるかもしれません。しかし、2019年における狂犬病予防法違反の検挙数は**1🛒74件**に上ります。決して形骸化した法律ではなく、実際に取り締まりが行われています。
ただし、日本経済新聞の報道によると、罰則が厳格に適用されてこなかったことが接種率低下の一因とも指摘されています。
なぜ日本でも接種が義務なのか?狂犬病の恐ろしさ
「日本では狂犬病は発生していないのに、なぜ接種が必要なの?」
この疑問に答えるには、狂犬病がいかに恐ろしい病気かを知る必要があります。
致死率ほぼ100%
東京都感染症情報センターによると、狂犬病は発症後の致死率がほぼ100%という極めて危険な感染症です。一度発症すると有効な治療法がなく、ほぼ確実に死に至ります。
特徴的な症状
狂犬病に感染すると、以下のような症状が現れます。
人間の場合:
初期:咬まれた傷の痒み、頭痛、発熱などカゼに似た症状
進行期:筋肉の緊張、幻覚、けいれん
末期:水を飲もうとすると咽頭がけいれんする「恐水症状」
最終的に昏睡状態となり、呼吸麻痺で死亡
犬の場合:
狂躁型(80〜85%):興奮し、攻撃的になり、見境なく咬みつく
麻痺型(15〜20%):頭や頸の筋肉が麻痺し、餌を食べられなくなる
潜伏期間
感染から発症までの潜伏期間は、人間で**1🛒〜3ヶ月(10日〜1年以上の幅あり)、犬で20〜60日**(平均1ヶ月)とされています。咬まれた場所が脳に近いほど、症状は早く現れます。
2020年の海外感染事例
アニコム「みんなのどうぶつ病気大百科」によると、2020年5月にフィリピンで犬に咬まれた外国籍の男性が、日本入国後に狂犬病を発症し死亡しました。これは国内での感染ではありませんが、狂犬病が現在も身近な脅威であることを示しています。
同じく致死率の高い感染症については「致死率90%!パルボウイルスの恐怖と予防」もご参照ください。
日本の狂犬病発生状況と接種率の現実
1957年以降、国内発生なし
日本国内での狂犬病発生は、人では1956年、動物では1957年が最後です。これは世界的にも類を見ない成功例として知られており、日本は「狂犬病清浄国」の地位を維持しています。
この成功は、狂犬病予防法に基づく厳格な対策の成果です。具体的には:
飼い犬の登録義務化
年1回のワクチン接種義務化
野犬の捕獲・抑留
接種率の低下が深刻な問題に
しかし近年、接種率の低下が問題となっています。厚生労働省の統計によると:
| 年度 | 登録頭数 | 接種頭数 | 接種率 |
|---|---|---|---|
| 1985年 | ほぼ100% | 2000年度 | 80%を下回る |
| 2022年度 | 70.9% | 2024年度 | 約604万頭 |
| 約428万頭 | 70.8% |
実際の接種率は45%以下?
上記の数字は「登録された犬」の接種率です。しかし、登録されていない犬も多数存在すると推定されており、未登録犬を含めた実際の接種率は45%を下回る可能性があります。
WHO(世界保健機関)は、狂犬病のまん延を防ぐために接種率70%以上を維持することを推奨しています。日本の一部地域ではすでにこの基準を下回っており、万が一ウイルスが侵入した場合に感染拡大を防げない恐れがあります。
狂犬病予防注射の費用と接種の流れ
費用の目安
狂犬病予防注射にかかる費用は以下の通りです:
| 項目 | 費用(目安) |
|---|---|
| 注射料金 | 3,000〜4,000円 |
| 注射済票交付手数料 | 550円 |
| 新規登録料(初回のみ) | 3,000円 |
動物病院によって料金は異なりますが、注射料金は3,000〜4,000円程度が相場です。初めて犬を登録する場合は、登録料3,000円が別途必要になります。
接種方法は2通り
1. 集合注射(4〜6月)
自治体が公園や公民館などで実施
比較的安価で手軽
混雑することがある
2. 動物病院での接種
年間を通じて接種可能
健康チェックも同時に受けられる
待ち時間が少ない
接種後の手続き
動物病院で接種した場合は、発行された証明書を持って市区町村の窓口で「注射済票」の交付を受ける必要があります。集合注射の場合は、その場で注射済票が交付されることが多いです。
狂犬病ワクチン以外の予防接種については「混合ワクチンの種類:5種・8種どれを選ぶ?」で詳しく解説しています。
接種を免除・猶予できるケースとは
狂犬病予防注射は法的義務ですが、すべての犬が必ず接種しなければならないわけではありません。以下のような場合、獣医師の判断により接種を猶予(一時的に免除)できます。
猶予が認められるケース
過去に重度のアレルギー🛒反応があった場合
- 前回の接種でアナフィラキシーショックなどの重篤な副反応が出た犬
重篤な疾患を抱えている場合
- 心臓病、腎臓病、がんなど、接種によって健康状態が悪化する恐れがある犬
高齢で体力が著しく低下している場合
- 獣医師が接種のリスクが高いと判断した高齢犬
猶予証明書の発行
猶予を受けるには、かかりつけの獣医師に相談し、「狂犬病予防注射猶予証明書」を発行してもらう必要があります。この証明書を市区町村に提出することで、その年度の接種義務が免除されます。
注意点:
猶予証明書は毎年更新が必要です
「接種しなくてよい」ではなく「体調が回復したら接種する」という意味です
自己判断での接種拒否は法律違反となります
愛犬の健康状態を正しく把握するためにも「年に何回必要?犬の健康診断と検査内容」を参考に、定期的な健康診断を受けましょう。
まとめ:愛犬と社会を守るために
狂犬病ワクチン接種は、単なる法的義務ではなく、愛犬と私たちの社会を守るための重要な責任です。
この記事のポイント
3つの義務:犬の登録、年1回の予防注射、鑑札・注射済票の装着
罰則:違反すると20万円以下の罰金、犬は捕獲・抑留の対象
狂犬病の恐ろしさ:発症後の致死率ほぼ100%、有効な治療法なし
接種率の現実:登録犬で70.8%、実質は45%以下の可能性
費用:注射料金3,000〜4,000円🛒+手数料550円
猶予制度:健康上の理由があれば獣医師の証明書で免除可能
接種率低下は日本全体のリスク
日本経済新聞が報じているように、長年発生がないことへの「油断」や、インターネット上の誤った情報により、接種率は低下傾向にあります。
しかし、グローバル化が進む現代では、いつ海外から狂犬病ウイルスが持ち込まれてもおかしくありません。接種率が低下したままでは、感染拡大を防ぐことができません。
正しい情報で不安を解消しよう
「副作用が心配」「効果があるのかわからない」といった不安は、正しい情報を得ることで解消できます。心配な点があれば、かかりつけの獣医師に相談しましょう。
愛犬の健康管理全般については「愛犬の健康を守る病気予防と早期発見」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
20万円の罰金を避けるためではなく、愛犬と社会の安全を守るために、狂犬病ワクチン接種は欠かせない飼い主の責任です。






