愛犬が「がん」と診断されたとき、飼い主として何ができるのでしょうか。実は、犬の死因第1位はがんといわれており、10歳以上の犬の50%以上ががんを発症するというデータがあります。しかし、近年の獣医療の進歩により、早期発見・早期治療で完治できるケースも増えています。
この記事では、犬に多いがんの種類、それぞれの症状、そして現在利用できる治療オプションについて詳しく解説します。愛犬の健康を守る病気予防と早期発見のために、ぜひ最後までお読みください。
犬のがんとは?発症率と基礎知識
がんとは、遺伝子異常を持つ細胞が制御不能に増殖する病気です。PetMDの解説によると、約4頭に1頭の犬が生涯でがんを発症し、この割合は10歳以上になると2頭に1頭まで上昇します。

がんになりやすい犬種
日本では、以下の犬種でがんの発生率が高いと報告されています:
ゴールデン・レトリバー:リンパ腫、血管肉腫
ラブラドール🛒・レトリバー:肥満細胞腫、骨肉腫
バーニーズ・マウンテン・ドッグ:悪性組織球症
パグ:肥満細胞腫
ボクサー:肥満細胞腫、脳腫瘍
もちろん、これらの犬種以外でもがんは発症します。どの犬種であっても、定期的な健康診断と検査が重要です。

早期発見が生存率を左右する
がんは早期発見・早期治療が最も重要です。アニコム損保の調査によると、初期段階で発見されたがんは、治療の選択肢が多く、完治の可能性も高くなります。愛犬の小さな変化を見逃さないことが、命を守る第一歩です。
犬に多いがんの種類と特徴
犬のがんには様々な種類があります。それぞれの特徴を理解することで、早期発見につながります。
肥満細胞腫(皮膚がんで最も多い)
PS保険の解説によると、肥満細胞腫は犬の皮膚がんで最も多いタイプです。免疫細胞の一種である「肥満細胞」が腫瘍化して発生します。
主な特徴:
皮膚にできるしこりや腫瘍
脱毛や炎症を伴うことがある
中高齢の犬に多い
悪性度によってグレー🛒ド1〜3に分類
パグやボクサーなど、特定の犬種で発生リスクが高いとされています。皮膚のしこりを見つけたら、早めに獣医師に相談しましょう。
リンパ腫(リンパ球のがん)
リンパ腫は、血液中のリンパ球が腫瘍化して発生するがんです。リンパ系は全身に広がっているため、全身疾患として扱われます。
主な症状:
体表のリンパ節が腫れる(首、脇の下、後ろ足の付け根など)
食欲低下
体重減少
元気がなくなる
リンパ節の腫れは飼い主が発見しやすい症状の一つです。愛犬の体を撫でているときに、いつもと違うしこりを感じたら要注意です。
骨肉腫(骨のがん)
骨肉腫は、犬の骨のがんの85〜98%を占める最も一般的な骨の悪性腫瘍です。大型犬に多く発症し、グレートデン、ロットワイラー、アイリッシュ・ウルフハウンド、セント・バーナードなどが特にリスクが高いとされています。
主な症状:
足を引きずる(跛行)
患部の腫れ
強い痛み
骨折しやすくなる
前後足の骨や背骨に発生することが多く、進行すると激しい痛みを伴います。早期発見には、愛犬の歩き方の変化に注意することが大切です。
血管肉腫(血管のがん)
血管肉腫は血管の細胞から発生するがんで、脾臓、心臓、肝臓に多く発生します。特に注目すべきは、心臓にできるがんの約9割が血管肉腫という点です。
危険な特徴:
腫瘍が大きくなると破裂するリスクがある
破裂すると体内で大出血を起こす
進行が早く、発見時には転移していることが多い
初期症状が出にくい
定期的な健康診断での超音波検査が、早期発見の鍵となります。
乳腺腫瘍(メス犬に最多)
乳腺腫瘍は、避妊していないメス犬で最も発生頻度が高いがんです。女性ホルモンの影響を受けて発生するため、早期の避妊手術で予防することが可能です。
予防のポイント:
初回発情前(生後6ヵ月前後)の避妊手術が最も効果的
2回目の発情前でも予防効果あり
避妊手術により発症リスクを大幅に低減
乳腺に触れたときにしこりを感じたら、すぐに獣医師に相談してください。良性と悪性の判別には検査が必要です。
その他の主ながん
悪性黒色腫(メラノーマ) 口腔内や皮膚、目の周り、足の指に発生する侵襲性の強いがんです。口の中にできた黒いできものや、口臭がひどくなったら要注意です。
膀胱移行上皮癌 膀胱の粘膜細胞が腫瘍化するがんで、血尿や頻尿が主な症状です。頻尿・血尿が続く場合は、膀胱炎だけでなくがんの可能性も考慮する必要があります。
脳腫瘍 発生場所によって様々な症状が現れます。てんかん発作、ふらつき、視力低下、性格の変化などが見られることがあります。
がんの症状を見逃さない!早期発見チェックリスト
KINS WITH 動物病院の腫瘍科認定医によると、以下のサインに注意することで早期発見につながります。
外見でわかるサイン
| チェック項目 | 詳細 |
|---|---|
| しこり・腫れ | 体のどこかに新しいしこりがある、または既存のしこりが大きくなっている |
| 傷が治らない | 傷や潰瘍がいつまでも治癒しない |
| リンパ節の腫れ | 首、脇の下、後ろ足の付け根にしこりを感じる |
| 体重の変化 | 食事量が変わらないのに体重が減っている |
| 口腔内の異常 | 歯茎の色の変化、口臭の悪化、出血 |
行動の変化
食欲の低下:普段より食べる量が減った、好きだったおやつ🛒に興味を示さない
元気がない:散歩を嫌がる、遊ばなくなった
呼吸の変化:咳が続く、息切れする、呼吸が荒い
痛みのサイン:特定の場所を触ると嫌がる、動きたがらない
排泄の異常
血尿や頻尿
下痢や嘔吐が続く
便の色や形の変化
排泄時に痛そうにする
これらの症状が見られたら、早めに獣医師の診察を受けましょう。血液検査の結果と合わせて、総合的に判断することが重要です。
がんの診断方法
がんの診断には複数の検査方法があり、それぞれの検査で得られる情報が異なります。
身体検査と触診
獣医師が全身をチェック🛒し、しこりや腫れ、リンパ節の状態を確認します。これは最も基本的な検査であり、定期健診で行われます。
画像診断
レントゲン(X線)検査 胸部や腹部の腫瘍、骨の異常、肺への転移を確認できます。
超音波(エコー)検査 腹部の臓器(肝臓、脾臓、腎臓など)の腫瘍を詳しく調べることができます。血管肉腫の早期発見にも有効です。
CT・MRI検査 より詳細な情報が必要な場合に実施します。特に脳腫瘍や複雑な部位の腫瘍の診断に使用されます。
細胞・組織検査
細針吸引細胞診(FNA) 細い針でしこりから細胞を採取し、顕微鏡で観察します。麻酔なしで実施できる簡便な検査です。
生検(バイオプシー) 組織の一部を採取して病理検査を行います。がんの種類や悪性度を正確に判定できます。
埼玉動物医療センターによると、これらの検査を組み合わせることで、より正確な診断と治療方針の決定が可能になります。
がんの治療オプション
Hill's Petの情報によると、犬のがん治療は大きく進歩しており、多くの治療オプションが利用可能です。
外科手術(基本の治療法)
がん治療の基本は、腫瘍の外科的切除です。
メリット:
転移がなければ完治の可能性が高い
即効性がある
病理検査で正確な診断ができる
適用:
肥満細胞腫(初期)
乳腺腫瘍
皮膚の腫瘍全般
骨肉腫の場合、強い痛みを軽減するために断脚が必要になることもあります。ただし、多くの犬は3本足でも元気に生活できます。
化学療法(抗がん剤治療)
全身に広がったがんや、転移のリスクが高いがんに効果的です。
犬の抗がん剤治療の特徴:
人間と比べて副作用が軽い
多くの犬は治療中も普段通りの生活ができる
入院が必要になるのは10%以下
毛が抜けることは稀
分子標的薬 肥満細胞腫には、イマチニブ、トセラニブ(パラディア)、マシチニブなどの分子標的薬が効果的です。これらは内服薬として自宅で投与できます。
放射線治療
手術が難しい部位のがんや、手術で取り切れなかった場合に使用されます。
適用例:
脳腫瘍
口腔内腫瘍
鼻腔内腫瘍
骨肉腫(断脚を希望しない場合)
免疫療法
近年注目されている治療法で、犬自身の免疫システムを活性化してがん細胞を攻撃させます。
がんワクチン療法
免疫チェックポイント阻害剤
樹状細胞療法
これらは従来の治療と組み合わせ🛒て使用されることが多いです。
緩和ケア
がんの完治が難しい場合や、愛犬の負担を軽減したい場合には、緩和ケアという選択肢もあります。
目的:
痛みのコントロール
生活の質(QOL)の維持
愛犬が穏やかに過ごせる環境づくり
具体的な治療:
鎮痛剤の投与
吐き気止め
食欲増進剤
点滴による栄養補給
愛犬の免疫力を高める食事と生活習慣も、緩和ケアの一環として重要です。
がん治療の費用と保険
がん治療は長期にわたることが多く、費用も高額になりがちです。事前に知っておくことで、適切な準備ができます。
治療費の目安
| 治療法 | 費用の目安 |
|---|---|
| 手術(腫瘍切除) | 5万円〜30万円以上 |
| 抗がん剤治療(1クール) | 3万円〜10万円 |
| 放射線治療(全体) | 30万円〜100万円以上 |
| CT・MRI検査 | 3万円〜8万円 |
| 定期的な血液検査 | 5,000円〜1万円/回 |
※費用は病院や地域、がんの種類・進行度によって大きく異なります。
ペット保険の活用
がん治療に備えて、ペット保険への加入を検討しましょう。
保険選びのポイント:
がん治療が補償対象に含まれているか
手術・入院・通院すべてカバーされているか
1日あたりの限度額と年間限度額
免責金額の有無
注意点:
加入前に発症した病気は補償対象外
高齢になると加入できない保険もある
待機期間(加入後すぐには使えない期間)がある場合も
愛犬のがん予防と日常ケア
がんを100%予防することは難しいですが、リスクを下げるためにできることはあります。
定期健診の重要性
推奨される健診頻度:
若い犬(7歳未満):年1回
シニア犬(7歳以上):年2回以上
がんリスクの高い犬種:年2回以上
定期健診では、血液検査、尿検査、触診、必要に応じて画像診断を行います。年間の予防医療スケジュールを立てておくと安心です。
生活習慣の改善
適正体重の維持 肥満はがんのリスク因子の一つです。理想体重をキープする食事と運動を心がけましょう。
バランスの良い食事
良質なタンパク質
抗酸化物質を含む食材
オメガ3脂肪酸
ストレス軽減🛒 慢性的なストレスは免疫機能を低下させます。愛犬がリラックスできる環境を整えましょう。
早期避妊・去勢手術
乳腺腫瘍や精巣腫瘍は、適切な時期の避妊・去勢手術で予防できます。
最適な手術時期:
メス犬の乳腺腫瘍予防:初回発情前(生後6ヵ月前後)が最も効果的
オス犬の精巣腫瘍予防:1歳前後
手術の適切な時期については、獣医師とよく相談してください。
まとめ:がんと向き合う飼い主の心構え
愛犬ががんと診断されても、決して諦める必要はありません。獣医療の進歩により、多くのがんが治療可能になっています。
大切なポイント:
早期発見・早期治療が最も重要
- 日頃から愛犬の体をチェック🛒する習慣を - 少しでも異変を感じたら早めに受診
治療法は進歩している
- 外科手術、化学療法、放射線、免疫療法など選択肢は豊富 - 犬は抗がん剤の副作用も人間より軽い
愛犬のQOLを第一に考える
- 完治を目指すか、緩和ケアを選ぶか - 愛犬にとって最善の選択を
獣医師との信頼関係を築く
- 疑問や不安は遠慮なく相談 - セカンドオピニオンも選択肢の一つ
がんは確かに深刻な病気ですが、飼い主として正しい知識を持ち、早期発見に努めることで、愛犬の命を守ることができます。日頃からの健康管理と病気予防を心がけ、愛犬との大切な時間を守りましょう。
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参考文献:






