ドッグランで愛犬の名前を呼んでも、他の犬と夢中で遊んでいて全く振り向かない。公園で突然リード🛒が外れてしまい、必死に「おいで」と叫んでも知らんぷり。こんな経験をしたことがある飼い主さんは少なくないはずです。
家の中では完璧に呼び戻しができるのに、外に出ると途端に言うことを聞かなくなる愛犬に、途方に暮れてしまうこともあるでしょう。でも安心してください。これは犬の「性格が悪い」わけでも、「しつけが失敗した」わけでもありません。犬にとって、場所が変わればコマンドの意味も変わってしまうのは自然なことなのです。
この記事では、家の中だけでなく、公園やドッグランなどどんな環境でも確実に呼び戻せる犬に育てるための「リコール強化トレーニング」を詳しく解説します。段階的なステップを踏めば、愛犬との信頼関係を築くトレーニングを通じて、必ず成果を出すことができます。
なぜ「どこでも」呼び戻せることが重要なのか
リコール(呼び戻し)は、犬のしつけの中でも命を守る最も重要なコマンドの一つです。アメリカンケネルクラブ(AKC)の専門家も、信頼性の高いリコールを「すべての犬が習得すべき必須スキル」として位置づけています。

なぜそこまで重要視されるのでしょうか。具体的なシーンを想像してみてください。
緊急事態での活躍
散歩中にリードが外れて、愛犬が車道に向かって走り出した
ドアを開けた瞬間に外に飛び出してしまった
ドッグランで他の犬とトラブルになりそうになった
山歩き中に危険な野生動物に遭遇した
こうした緊急時に、一声で愛犬を自分の元に呼び戻せるかどうかは、文字通り生死を分ける可能性があります。

データが示す効果 研究によると、様々な環境で訓練された犬は、呼び戻しの成功率が40%も向上するというデータがあります。また、73%の飼い主が何らかのトレーニングを行っているものの、プロの指導を受けているのはわずか8%。つまり、多くの飼い主が「なんとなく」のトレーニングで終わってしまい、本当に必要な場面で機能するリコールを身につけさせていないのです。
どこでも呼び戻せる犬に育てることは、愛犬の安全を守り、飼い主の安心感を高め、より自由で楽しい犬との生活を実現するための第一歩です。
家では来るのに外では来ない理由
「うちの子は家では完璧に『おいで』ができるのに…」という悩みを持つ飼い主さんはとても多いです。PEPPY の専門家によると、これには犬の認知の仕組みが関係しています。
環境変化による混乱
犬は人間のように「般化」が得意ではありません。般化とは、ある状況で学んだことを別の状況にも応用する能力のこと。人間なら「おいで」という言葉は、リビングでも公園でも同じ意味だと理解できますが、犬にとってはそうではないのです。
犬の脳では、「リビングで飼い主が『おいで』と言った→行ったらおやつ🛒がもらえた」という経験と、「公園で飼い主が『おいで』と言った」という状況は、まったく別の出来事として処理されることがあります。
つまり、家の中でリコールを完璧にマスターしても、それは「家の中限定のスキル」でしかない可能性があるのです。外でも同じように機能させるためには、意識的に様々な環境でトレーニングを行う必要があります。
競合する刺激の存在
外の世界は、犬にとって刺激の宝庫です。
他の犬の存在 - 遊び相手や気になる相手
豊富な匂い - 他の動物、食べ物、植物など
動くもの - 鳥、猫、自転車、走る子供
新しい音 - 車、話し声、工事の音
これらすべてが、飼い主の「おいで」という呼びかけと競合します。家の中という限られた刺激の環境では飼い主が最も魅力的な存在でいられますが、外ではそうはいきません。
愛犬にとって「飼い主の元に行くこと」が、「目の前の面白そうな匂いを嗅ぐこと」よりも魅力的でなければ、呼び戻しは成功しないのです。
3Dトレーニングで段階的に強化する
では、どうすればどこでも呼び戻せる犬に育てられるのでしょうか。その答えが「3Dトレーニング」です。
AKCが推奨する3Dトレーニングとは、Duration(持続時間)、Distance(距離)、Distraction(気が散るもの)の3つの要素を、一つずつ段階的に上げていくトレーニング方法です。
基本のリコールトレーニングができるようになったら、この3Dを意識して難易度を上げていきましょう。
重要なルール:一度に上げるのは1つのDだけ
例えば、距離を伸ばす練習をしている時は、気が散る要素は最小限にします。新しい環境(Distraction増加)で練習する時は、距離は近くに戻します。複数のDを同時に上げると、犬が混乱して失敗体験が増えてしまいます。
Duration(持続時間)を伸ばす
最初に取り組むべきは「持続時間」です。呼び戻しが成功した後、愛犬が飼い主のそばにどれくらい留まっていられるかを徐々に延長していきます。
練習方法
「おいで」で呼び、来たら褒める
最初は3〜10秒そばにいさせてからご褒美
徐々に時間を延長(15秒→30秒→1分)
途中で離れようとしたら、優しく戻す
この練習の目的は、「飼い主のそばにいること自体が楽しい」と犬に学習させることです。呼ばれてすぐに解放されると、「呼ばれたら一瞬行けばいい」と覚えてしまいます。
Distance(距離)を伸ばす
持続時間が安定してきたら、次は距離を伸ばします。
練習方法
最初は1〜2メートルの近距離から
成功するごとに少しずつ距離を伸ばす(0.5メートルずつ)
失敗したら距離を縮めて成功体験を積む
最終的には10メートル以上離れても呼び戻せるように
ポイントは「成功率80%以上」を維持すること。何度も失敗すると犬のモチベーションが下がり、「どうせ無理だ」と諦めてしまいます。難しすぎると感じたら、すぐに距離を縮めましょう。
Distraction(気が散る環境)を追加
3つのDの中で最も難しいのが、この「Distraction」です。持続時間と距離の練習が十分にできてから取り組みましょう。
段階的な環境変化
静かな室内(リビング、廊下)
庭や玄関先(屋外だが慣れた場所)
静かな公園(人や犬が少ない時間帯)
にぎやかな公園(他の犬や人がいる環境)
ドッグラン(最高難度)
新しい環境に移るたびに、距離と持続時間はリセットして短くします。例えば、家の中で10メートル離れても完璧にできていても、公園では2メートルからやり直すくらいの気持ちで取り組みましょう。
場所別トレーニング実践ガイド
3Dの概念を理解したところで、具体的な場所ごとのトレーニング🛒方法を見ていきましょう。PETOKOTOのトレーナー解説でも、段階的なステップアップの重要性が強調されています。
家の中での基礎固め
すべてのリコールトレーニングの基礎となるのが、家の中での練習です。
実践のコツ
部屋を変えながら練習する(リビング→廊下→寝室→キッチン)
家族が協力して、別の部屋から呼び合う
予告なしに呼ぶ練習も取り入れる
1日5分×3〜5セットを目安に
家の中でも、部屋が変われば犬にとっては「新しい環境」です。すべての部屋で安定して呼び戻せるようになるまで、しっかり基礎を固めましょう。
庭・マンションの共用部で練習
家の中が完璧になったら、次は屋外の第一歩です。
安全対策
必ずロングリード🛒(5〜10メートル)を使用
リードは地面に垂らしておき、緊急時だけ踏んで止める
囲いのある庭やフェンスのあるエリアが理想的
リーシュウォーキングの基本でも解説していますが、ロングリードは犬に自由を与えながらも安全を確保できる優れたツールです。
練習方法
まずは犬を自由に歩かせる
犬がこちらを見ていない時に「おいで」と呼ぶ
来たら大げさに褒めて特別なおやつを与える
すぐに「OK」と解放して、また自由にさせる
公園でのステップアップ
庭での練習が安定したら、いよいよ公園デビューです。
成功のポイント
最初は人や犬が少ない時間帯を選ぶ(早朝や夕方遅めなど)
必ずロングリードを装着
他の犬が近くにいる時は呼ばない(失敗しやすい)
成功率が下がったら距離を縮める
公園では、予想外の刺激が現れることがあります。他の犬が突然現れたり、子供が走ってきたり。そんな時は無理に呼び戻そうとせず、リードで安全を確保しながら、落ち着いてから練習を再開しましょう。
ドッグランでの最終チャレンジ
ドッグランは、リコールトレーニングの最高難度の環境です。他の犬がたくさんいて、匂いも刺激も最大レベル。ここで呼び戻しができれば、ほぼどこでも大丈夫と言えるでしょう。
ドッグランでの練習法
最初は入口近くで練習(すぐに確保できる位置)
犬が他の犬と遊びに夢中になる前に呼ぶ
成功したらすぐに解放して遊ばせる
「呼ばれても楽しいことは終わらない」と学習させる
重要:呼び戻し=帰宅にしない
多くの飼い主がやってしまう失敗が、「ドッグランで呼び戻し→リードをつけて帰宅」というパターン。これを繰り返すと、犬は「呼ばれると楽しいことが終わる」と学習し、呼び戻しを避けるようになります。
呼び戻しが成功したら、何度かに1回はまた遊ばせてあげることで、「呼ばれても良いことが起きる」という経験を積ませましょう。
楽しく練習できる3つのゲーム
トレーニングは継続が命。でも、毎日同じ練習だと飼い主も犬も飽きてしまいます。東京DOGSのプロトレーナーも推奨する、遊びながら呼び戻しを強化できる3つのゲームを紹介します。
キャッチミーゲーム
犬の「追いかける本能」を活用したゲームです。
やり方
愛犬の注意を引く
くるっと振り返って走り出す
犬が追いかけてきたら「おいで!」と声をかける
追いついたら大げさに褒めてご褒美
このゲームのポイントは、飼い主が逃げる側になること。犬を追いかけると逃げますが、逆に飼い主が逃げると犬は追いかけてきます。この習性を利用して、「飼い主を追いかけること=楽しい」と学習させましょう。
かくれんぼ
犬の探索本能を刺激しながら、呼び戻しを強化できるゲームです。持ってこいトレーニングと同様に、遊びながら学べる優れた方法です。
やり方
犬が見ていない隙に別の部屋や物陰に隠れる
名前を呼ぶ(最初は簡単な場所から)
犬が探しに来て見つけたら大興奮で褒める
徐々に隠れる場所を難しくする
このゲームは、「飼い主を探すことは楽しい」「飼い主の声がする方に行けば良いことがある」という学習を強化します。屋外でも応用でき、呼び戻しの強力な基礎になります。
ホットポテト(リレー)
家族や友人と一緒にできる、社会化にも効果的なゲームです。
やり方
2人以上で離れた位置に立つ
一人が犬を呼び、来たら褒めてご褒美
すぐに別の人が呼ぶ
交互に繰り返す(ホットポテトのように犬が行ったり来たり)
このゲームのメリットは、「誰に呼ばれても行けば良いことがある」と学習させられること。家族全員が呼び戻しできるようになるだけでなく、犬の社会性も向上します。
高価値報酬でモチベーションを維持
呼び戻しトレーニングの成功には、魅力的なご褒美が欠かせません。獣医師監修のワンクォールでも、報酬の質がトレーニング成果を大きく左右すると解説されています。
呼び戻し専用のスペシャルおやつ🛒を用意しよう
普段のトレーニングで使うおやつと、呼び戻し用のおやつはランクを分けることをおすすめします。
| ランク | 用途 | 例 |
|---|---|---|
| 普通 | 日常の「おすわり」など | ドライフード、市販のおやつ |
| 高価値 | 呼び戻し、難しいコマンド | チーズ、茹でた鶏肉、レバー |
| 最高価値 | 外での呼び戻し | 犬用ソーセージ、特別な手作りおやつ |
トレーニング効果を上げるおやつの使い方でも詳しく解説していますが、犬にとって「呼び戻しに応じると、普段はもらえないスペシャルなものがもらえる」という経験は非常に強い動機づけになります。
おやつを見せて釣るのはNG
ただし、おやつを手に持って見せながら呼ぶのは避けましょう。これを続けると、「おやつが見えた時だけ行く」犬になってしまいます。おやつはポケットに隠しておき、来てから「サプライズ」として与えるのがポイントです。
やってはいけない失敗パターン
ここまで「やるべきこと」を説明してきましたが、同じくらい重要なのが「やってはいけないこと」です。Whole Dog Journalでも警告されている、呼び戻しを台無しにしてしまう失敗パターンを紹介します。
コマンドの使いすぎ(キュー中毒)
「おいで、おいで、おいで!」と何度も繰り返し呼んでいませんか?これは「キュー中毒」と呼ばれる状態を引き起こします。
犬は「おいで」という言葉を聞きすぎると、その言葉に対する反応が鈍くなります。まるで背景音のように、聞こえていても反応しなくなるのです。
対策
コマンドは1回だけ言う
反応がなければ、自分から近づいて誘導する
すでにキュー中毒になっている場合は、言葉を変える(「おいで」→「こっち」など)
やってはいけないしつけ5選でも解説していますが、コマンドの使いすぎは多くの飼い主が気づかずにやってしまう失敗です。
呼んでから嫌なことをする
呼び戻しが成功した後に、犬にとって嫌なことが起きると、次から呼び戻しを避けるようになります。
避けるべきパターン
呼んで、すぐに帰宅する
呼んで、爪切りや歯磨きをする
呼んで、お風呂に入れる
呼んで、叱る
これらを繰り返すと、犬は「呼ばれると嫌なことが起きる」と学習します。爪切りやお風呂が必要な時は、呼び戻しを使わずに自分から犬のところに行くようにしましょう。
犬を追いかける
呼んでも来ない犬を追いかけて捕まえようとするのは、最悪の対応です。
犬は追いかけられると逃げる本能がある
「追いかけっこ」だと思ってゲームとして楽しんでしまう
飼い主が追いかけてくると学習すると、自分から来なくなる
代わりに、反対方向に走り去る、しゃがんで興味を引く、おもちゃ🛒を投げるなどの方法で、犬の方から来させる工夫をしましょう。
緊急用と日常用:2つのコマンドを使い分ける
プロのトレーナーが実践しているテクニックに、2つのコマンドを使い分ける方法があります。
日常用コマンド
「おいで」「here」「こっち」など
普段の散歩やトレーニングで使用
来なくても大きな問題にはならない場面で
緊急用コマンド
「come」「緊急」など、日常とは違う特別な言葉
絶対に裏切らない(来たら必ず最高のご褒美)
本当の緊急時(車道に飛び出しそうな時など)だけに使用
緊急用コマンドは、ポジティブ強化トレーニングの基本に基づいて、100%良い経験だけと結びつけます。日常用コマンドがキュー中毒で効かなくなっても、緊急用は「特別な呼びかけ」として犬の記憶に残り、いざという時に機能するのです。
この方法を取り入れる場合は、緊急用コマンドを普段は絶対に使わないことが重要です。月に1〜2回、練習として使い、その時は最高級のおやつを惜しみなく与えましょう。
まとめ:どこでも信頼できるリコールを目指して
どこでも呼び戻せる犬に育てるポイントをおさらいしましょう。
3Dトレーニングの鉄則
Duration(持続時間) - 飼い主のそばにいる時間を徐々に延長
Distance(距離) - 近くから始めて少しずつ遠くへ
Distraction(気が散る環境) - 静かな場所から刺激の多い場所へ
一度に上げるのは1つのDだけ
成功の秘訣
毎日5分からでOK、継続が最も大切
成功率80%以上を維持する難易度で
呼び戻し後は必ず良いことが起きるように
ゲームを取り入れて楽しく継続
リコールトレーニングは、一朝一夕では完成しません。でも、毎日少しずつ取り組めば、必ず成果は出ます。愛犬との信頼関係を築くトレーニングの一環として、焦らず楽しみながら続けていきましょう。
どこでも呼び戻せる犬になれば、ドッグランでの遊びも、山へのお出かけも、もっと安心して楽しめるようになります。愛犬との絆を深めながら、「どこでも一緒」の素敵な毎日を実現してください。






