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犬の抜け毛:10の原因パターン

犬の抜け毛:10の原因パターンの画像

愛犬の毛が異常に抜ける、薄くなってきた、部分的にハゲができた──こんな症状が見られたら、何らかの病気のサインかもしれません。犬の脱毛は、換毛期の自然な抜け毛とは異なり、様々な皮膚疾患や全身性の病気によって引き起こされます。

この記事では、犬の脱毛を引き起こす主な10パターンの原因を、脱毛のタイプ別に詳しく解説します。脱毛パターンから原因を推測する方法、診断、治療、予防法まで、獣医師の視点から包括的に説明します。

犬の脱毛とは?換毛期との違い

犬の脱毛には、生理的な換毛期の抜け毛と、病的な脱毛があります。

犬の抜け毛:10の原因パターンの画像5

正常な換毛期

多くの犬種では、春(3~5月)と秋(9~11月)の年2回、換毛期があります。

特徴:

  • 全身の被毛が均等に抜ける

  • 新しい毛が生えてくる

  • 皮膚に異常なし(赤み、フケ、かさぶたなし)

  • 痒みなし

  • 全身状態は良好

犬の抜け毛:10の原因パターンの画像4

病的な脱毛

何らかの病気による脱毛です(参考:犬の脱毛の原因)。

特徴:

  • 部分的、または左右対称の脱毛

  • 皮膚に異常がある(赤み、フケ、色素沈着など)

  • 痒みを伴うことが多い

  • 毛が再生しない、または遅い

  • 換毛期以外の時期に起こる

重要: 換毛期以外で異常な脱毛が見られたら、必ず動物病院を受診してください。

脱毛のパターンによる分類

脱毛のパターンから、ある程度原因を推測できます。

1. 対称性脱毛(左右対称)

体の両側に同じパターンで脱毛が起こります。

主な原因:

  • ホルモン異常(甲状腺機能低下症、クッシング症候群など)

  • 遺伝性疾患

特徴:

  • 痒みがない、または軽度

  • 進行がゆっくり

2. 非対称性脱毛(部分的、ランダム)

特定の部位や、ランダムに脱毛が起こります。

主な原因:

特徴:

  • 痒みを伴うことが多い

  • 進行が早いこともある

3. 円形脱毛

円形~楕円形の脱毛斑ができます。

主な原因:

特徴:

  • 境界が明瞭

  • 複数箇所に出ることも

4. 全身性脱毛

広範囲~全身に脱毛が起こります。

主な原因:

  • 重度の内分泌疾患

  • 栄養不良

  • 薬剤の副作用

脱毛の原因10パターン

犬の脱毛を引き起こす主な10の原因を詳しく解説します。

パターン1: ノミアレルギー性皮膚炎

原因: ノミの唾液に対するアレルギー反応

脱毛の特徴:

  • 好発部位: 腰、尾の付け根、後肢、下腹部

  • パターン: 非対称性

  • 痒み: 非常に強い

その他の症状:

  • 激しく掻く、噛む

  • 皮膚の赤み、炎症

  • 膿皮症の併発

診断:

  • ノミの目視確認

  • ノミ糞の検出

治療:

  • ノミ駆除薬(月1回投与)

  • ステロイド、抗ヒスタミン剤(痒み止め)

  • 薬用シャンプー🛒

予防:

  • 年間を通じたノミ予防薬の投与

ノミアレルギー性皮膚炎について詳しく見る

パターン2: アトピー性皮膚炎

原因: 環境アレルゲン(花粉、ハウスダスト、カビなど)に対するアレルギー

脱毛の特徴:

  • 好発部位: 顔、耳、足先、腋窩、股、腹部

  • パターン: 非対称性

  • 痒み: 非常に強い

その他の症状:

  • 顔をこする

  • 足先を舐める

  • 外耳炎の併発

  • 季節性の悪化(春、秋に多い)

診断:

  • アレルギー検査(血液検査、皮内テスト)

  • 除外診断

治療:

  • アレルゲン回避

  • 薬物療法(オクラシチニブ、シクロスポリン)

  • 減感作療法

  • 薬用シャンプー

予防:

  • 環境の清潔維持

  • 空気清浄機の使用

アトピー性皮膚炎について詳しく見る

パターン3: 食物アレルギー

原因: 特定の食物タンパク質に対するアレルギー

脱毛の特徴:

  • 好発部位: 顔、耳、足先、肛門周囲

  • パターン: 非対称性

  • 痒み: 強い

その他の症状:

  • 慢性的な外耳炎

  • 下痢、嘔吐などの消化器症状

  • 季節性がない(年中発症)

診断:

  • 除去食試験(8~12週間)

  • 負荷試験

治療:

  • 除去食の継続

  • 加水分解タンパク質フード

  • 新奇タンパク質フード

予防:

  • アレルゲンとなる食材の除去

食物アレルギーについて詳しく見る

パターン4: 皮膚糸状菌症(リングワーム)

原因: 真菌(カビ)の感染

脱毛の特徴:

  • 好発部位: 顔、耳、前肢

  • パターン: 円形脱毛、境界明瞭

  • 痒み: 軽度

その他の症状:

  • 円形の赤い輪っか(リング状)

  • フケ、かさぶた

  • 人に感染する(人獣共通感染症)

診断:

  • ウッド灯検査

  • 真菌培養検査

治療:

  • 抗真菌薬(イトラコナゾール)内服

  • 外用抗真菌薬

  • 薬用シャンプー🛒

  • 環境消毒

予防:

  • 感染動物との接触回避

  • 環境の清潔維持

皮膚糸状菌症について詳しく見る

パターン5: 毛包虫症(ニキビダニ)

原因: ニキビダニ(Demodex canis)の異常増殖

脱毛の特徴:

  • 好発部位: 顔(目の周り、口周り)、前肢、胴体

  • パターン: 円形脱毛、局所型または全身型

  • 痒み: 軽度~中程度

その他の症状:

  • 脱毛部の赤み

  • フケ

  • 二次的な細菌感染(膿皮症)

診断:

  • 皮膚掻爬検査(顕微鏡でダニを確認)

治療:

  • イソオキサゾリン系薬剤(ネクスガード、ブラベクトなど)

  • 抗生物質(細菌感染併発時)

予防:

  • 免疫力の維持

毛包虫症について詳しく見る

パターン6: 疥癬(ヒゼンダニ)

原因: ヒゼンダニの寄生

脱毛の特徴:

  • 好発部位: 耳の縁、肘、かかと、顔

  • パターン: 非対称性、初期は局所的

  • 痒み: 非常に強い(我慢できないほど)

その他の症状:

  • 夜も眠れないほどの激しい痒み

  • 後ろ足で激しく掻く

  • かさぶた、痂皮の形成

  • 人に感染する(一時的)

診断:

  • 皮膚掻爬検査(検出率20~50%と低い)

  • 臨床症状から治療的診断

治療:

  • イソオキサゾリン系薬剤

  • イベルメクチン(コリー系犬種には禁忌)

  • 環境消毒

予防:

  • 感染犬との接触回避

疥癬について詳しく見る

パターン7: 甲状腺機能低下症

原因: 甲状腺ホルモンの分泌不足

脱毛の特徴:

  • 好発部位: 胴体、尾、後肢(頭部と四肢末端は保たれる)

  • パターン: 左右対称性

  • 痒み: なし(二次感染がなければ)

その他の症状:

  • 被毛の乾燥、パサつき

  • 皮膚の肥厚、色素沈着

  • 元気消失、活動性低下

  • 体重増加

  • 寒がる

  • 徐脈

診断:

  • 血液検査(T4、TSH測定)

治療:

  • 甲状腺ホルモンの補充療法(生涯継続)

予防:

  • なし(遺伝的要因が大きい)

好発犬種: ゴールデン・レトリバー、ラブラドール🛒、ダックスフンド、ビーグル、シェルティ

パターン8: クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)

原因: 副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の過剰分泌

脱毛の特徴:

  • 好発部位: 胴体(頭部と四肢は保たれる)

  • パターン: 左右対称性、広範囲

  • 痒み: なし(二次感染がなければ)

その他の症状:

  • 腹部膨満(太鼓腹)

  • 多飲多尿

  • 多食

  • パンティング(あえぎ呼吸)

  • 皮膚が薄く、血管が透けて見える

  • 筋肉の萎縮

  • 二次感染(膿皮症皮膚糸状菌症毛包虫症

診断:

  • 血液検査(ACTH刺激試験、低用量デキサメタゾン抑制試験)

  • 超音波検査

治療:

  • 内科療法(トリロスタン)

  • 外科療法(副腎腫瘍の場合)

予防:

  • なし

好発犬種: プードル、ダックスフンド、ビーグル、ボストン・テリア、ヨークシャー・テリア

パターン9: 膿皮症

原因: 細菌(主にブドウ球菌)の皮膚感染

脱毛の特徴:

  • 好発部位: 全身どこでも

  • パターン: 非対称性、円形~不規則

  • 痒み: 中程度

その他の症状:

  • 膿疱(膿の入った水ぶくれ)

  • かさぶた、痂皮

  • 表皮小環(円形のかさぶた)

  • 悪臭

診断:

  • 細菌培養検査

  • 顕微鏡検査

治療:

  • 抗生物質(3~6週間)

  • 薬用シャンプー🛒

  • 基礎疾患の治療(アレルギー、内分泌疾患など)

予防:

  • 皮膚の清潔維持

  • 基礎疾患の管理

膿皮症について詳しく見る

パターン10: マラセチア皮膚炎

原因: マラセチア(酵母菌)の異常増殖

脱毛の特徴:

  • 好発部位: 耳、顔、首、脇の下、股、足先

  • パターン: 非対称性

  • 痒み: 強い

その他の症状:

  • 皮膚のベタつき

  • 特有の酵母臭(甘酸っぱい、カビ臭い)

  • 皮膚の赤み

  • 外耳炎の併発

診断:

  • セロハンテープ法(顕微鏡でマラセチアを確認)

治療:

  • 抗真菌シャンプー(ミコナゾール+クロルヘキシジン)

  • 抗真菌薬内服(イトラコナゾール)

  • 基礎疾患の治療

予防:

  • 皮膚の清潔維持

  • アレルギー管理

マラセチア皮膚炎について詳しく見る

脱毛の原因別比較表

主な脱毛の原因を、特徴で比較してみましょう。

原因脱毛パターン好発部位痒み人への感染特徴的な症状
ノミアレルギー非対称性腰、尾の付け根非常に強いなし激しく掻く、噛む
アトピー非対称性顔、耳、足先非常に強いなし顔をこする、足を舐める
食物アレルギー非対称性顔、耳、足先強いなし外耳炎、消化器症状
皮膚糸状菌症円形顔、耳、前肢軽度あり円形のリング、フケ
毛包虫症円形顔、前肢軽度~中程度なし目の周り、口周りの脱毛
疥癬非対称性耳の縁、肘、かかと非常に強いあり(一時的)我慢できない痒み
甲状腺機能低下症左右対称性胴体、尾なしなし元気消失、体重増加、寒がる
クッシング症候群左右対称性胴体なしなし太鼓腹、多飲多尿、皮膚が薄い
膿皮症非対称性全身中程度なし膿疱、かさぶた、悪臭
マラセチア非対称性耳、脇、股、足先強いなしベタつき、酵母臭、外耳炎

診断のアプローチ

脱毛の原因を特定するため、獣医師は以下の手順で診断します(参考:脱毛の診断)。脱毛を伴う皮膚炎にはアレルギー🛒やホルモン異常など多様な原因があります(参考:脱毛を伴う皮膚炎)。

1. 問診

  • 発症時期と経過

  • 脱毛のパターン

  • 痒みの有無と程度

  • 季節性の有無

  • 生活環境

  • 他の症状(多飲多尿、体重変化、元気消失など)

2. 身体検査

  • 脱毛の範囲、パターン、対称性の確認

  • 皮膚の観察(赤み、フケ、かさぶた、色素沈着など)

  • 全身状態の評価

3. 皮膚検査

皮膚掻爬検査:

  • ニキビダニ、ヒゼンダニの検出

被毛検査:

  • 皮膚糸状菌症の診断

セロハンテープ法:

  • マラセチアの検出

皮膚生検:

  • 確定診断が困難な場合

4. 真菌培養検査

  • 皮膚糸状菌症の確定診断

5. 血液検査

一般血液検査:

  • 全身状態の評価

ホルモン検査:

  • T4、TSH(甲状腺機能低下症)

  • ACTH刺激試験、低用量デキサメタゾン抑制試験(クッシング症候群)

6. アレルギー検査

  • アレルゲン特異的IgE検査

  • 皮内テスト

  • 除去食試験

7. 超音波検査

  • 副腎の評価(クッシング症候群)

受診のタイミング

以下の症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。

緊急度:高

  • 広範囲の脱毛(体表面積の50%以上)

  • 激しい痒みで夜も眠れない

  • 皮膚からの出血、滲出液

  • 全身症状(発熱、元気消失、食欲不振)

早めの受診が推奨

  • 円形の脱毛が複数箇所にある

  • 脱毛が徐々に拡大している

  • 左右対称の脱毛

  • 痒みを伴う脱毛

  • 皮膚の赤み、フケ、かさぶたを伴う

経過観察可(ただし注意深く観察)

  • 換毛期の自然な抜け毛

  • 小さな局所的脱毛(直径1cm以下)で、拡大傾向がない

脱毛の予防と日常ケア

脱毛を予防し、早期発見するための日常ケアです。

基本的なケア

1. 定期的なブラッシング

  • 毎日~週2回

  • 被毛タイプに合ったブラシを使用

  • 皮膚の観察も同時に

2. 適切なシャンプー

3. バランスの良い[栄養](/articles/dog-nutrition-balanced-diet-healthy-skin-coat)

  • 高品質なドッグフード

  • オメガ3脂肪酸(魚油)の補給

  • ビタミンE、亜鉛

4. ノミ・ダニ予防

  • 月1回の予防薬投与

  • 年間を通じて継続

5. ストレス管理

  • 適度な運動

  • 十分な休息

  • 安心できる環境

早期発見のポイント

週1回のホームチェック:

  • 全身の被毛の状態確認

  • 皮膚の赤み、フケ、かさぶた

  • 特定部位を執拗に掻く、舐める行動

  • 体重の変化

記録の重要性:

  • 脱毛の写真を撮る(日付入り)

  • 範囲の変化を記録

  • 獣医師への説明に役立つ

好発犬種の注意

特定の犬種は、特定の脱毛疾患にかかりやすい傾向があります。

甲状腺機能低下症:

  • ゴールデン・レトリバー、ラブラドール、ダックスフンド

クッシング症候群:

  • プードル、ダックスフンド

アトピー性皮膚炎:

  • 柴犬、シー・ズー、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、フレンチ・ブルドッグ

これらの犬種を飼育している場合、より注意深い観察が必要です。

よくある質問

Q: 換毛期の抜け毛と病的な脱毛の見分け方は? A: 換毛期は全身の被毛が均等に抜け、皮膚に異常がなく、新しい毛が生えてきます。病的な脱毛は、部分的または左右対称で、皮膚に赤みやフケなどの異常があり、毛が再生しにくいです。痒みを伴う場合も病的な脱毛を疑います。

Q: 脱毛が対称的な場合、どんな病気が考えられますか? A: 左右対称性の脱毛は、ホルモン異常を強く疑います。特に甲状腺機能低下症とクッシング症候群が代表的です。これらは痒みを伴わないことが特徴です。対称性脱毛が見られたら、血液検査でホルモン値を測定する必要があります。

Q: 脱毛と同時に痒がっている場合、何が原因ですか? A: 痒みを伴う脱毛は、アレルギー(ノミアレルギー、アトピー、食物アレルギー)、感染症(膿皮症、マラセチア皮膚炎、疥癬)が主な原因です。痒みの程度、脱毛の部位から原因を絞り込みます。

Q: 円形の脱毛ができました。人にうつりますか? A: 円形脱毛の原因が皮膚糸状菌症(リングワーム)の場合、人にも感染します疥癬も人に一時的に感染します。円形脱毛が見られたら、すぐに動物病院を受診し、家族への感染予防策を講じてください。

Q: 老犬で脱毛が増えました。加齢のせいですか? A: 加齢に伴い被毛が薄くなることはありますが、明らかな脱毛は病気のサインです。高齢犬では甲状腺機能低下症、クッシング症候群などのホルモン異常が多く見られます。また、腫瘍や栄養不良の可能性もあります。必ず受診してください。

Q: 脱毛の治療費はどれくらいかかりますか? A: 原因によって大きく異なります。アレルギー性疾患は月5千〜2万円程度の継続治療、ホルモン異常は初期検査に2〜5万円、その後の生涯治療に月5千〜1.5万円程度かかります。感染症は1〜3万円程度で治癒することが多いです。

まとめ

犬の脱毛は、換毛期の自然な抜け毛とは異なり、様々な皮膚疾患や全身性の病気によって引き起こされます。脱毛のパターン(対称性、非対称性、円形など)、好発部位、痒みの有無から、ある程度原因を推測できます。

脱毛の原因10パターンの重要ポイント:

  • アレルギー性: ノミアレルギー、アトピー、食物アレルギー(非対称性、強い痒み)

  • 感染症: 皮膚糸状菌症、毛包虫症、疥癬、膿皮症、マラセチア(円形または非対称性、痒みは様々)

  • ホルモン異常: 甲状腺機能低下症、クッシング症候群(左右対称性、痒みなし)

  • 診断: 脱毛パターン、皮膚検査、血液検査で原因を特定

  • 治療: 原因に応じた適切な治療(抗生物質、抗真菌薬、ホルモン補充療法、アレルギー管理など)

  • 予防: 定期的なブラッシング🛒、ノミ予防、バランスの良い栄養、ストレス管理

換毛期以外で異常な脱毛が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。脱毛のパターンと全身症状を獣医師に詳しく伝えることが、正確な診断につながります。また、日頃から愛犬の被毛と皮膚を観察し、異常を早期に発見することが重要です。

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