わんケアガイドわんケアガイド
愛犬の健康を守る病気予防と早期発見

元気がない・太る:甲状腺機能低下症かも?

元気がない・太る:甲状腺機能低下症かも?の画像

「最近、愛犬の元気がない」「食べる量は変わらないのに太ってきた」——そんな変化に気づいたことはありませんか?これらの症状が同時に見られる場合、甲状腺機能低下症という内分泌疾患の可能性があります。

甲状腺機能低下症は犬で比較的よく見られるホルモンの病気で、VCA Animal Hospitalsによると、犬の内分泌疾患の中で最も一般的なものの一つです。早期発見と適切な治療で、愛犬は健康な犬と同様の生活を送ることができます。この記事では、甲状腺機能低下症の症状、原因、診断、治療について詳しく解説します。愛犬の健康を守る病気予防と早期発見の一環として、ぜひ知っておきたい知識です。

甲状腺機能低下症とは?

甲状腺は首の気管の両側に位置する小さな臓器で、体の代謝を調節する重要なホルモンを分泌しています。主にサイロキシン(T4)トリヨードサイロニン(T3)という2種類のホルモンを産生し、これらは全身のほぼすべての細胞に影響を与えます。

元気がない・太る:甲状腺機能低下症かも?の画像4

甲状腺ホルモンの主な役割:

  • 基礎代謝の調節

  • 体温の維持

  • 心拍数の調整

  • 皮膚・被毛の健康維持🛒

  • 神経系の正常な機能

甲状腺機能低下症は、何らかの原因で甲状腺ホルモンの分泌が不足する状態です。ホルモンが足りなくなると代謝が低下し、体のさまざまな機能に影響が出ます。みんなのどうぶつ病気大百科によると、猫ではほとんど見られませんが、犬では比較的頻繁に診断される病気です。

どんな犬がなりやすい?好発犬種と年齢

元気がない・太る:甲状腺機能低下症かも?の画像3

甲状腺機能低下症はすべての犬に起こりうる病気ですが、特定の条件を持つ犬でより多く見られます。

好発犬種

AKC(アメリカンケネルクラブ)によると、以下の犬種でリスクが高いとされています:

  • ゴールデンレトリバー

  • ドーベルマン・ピンシャー

  • ビーグル

  • グレートデン

  • アイリッシュセッター

  • オールドイングリッシュシープドッグ

  • ボクサー

  • コッカースパニエル

  • ミニチュアシュナウザー🛒

  • ダックスフント

一般的に中型犬から大型犬に多く、トイプードルやチワワなどの小型犬では稀です。

発症年齢

診断時の平均年齢は6〜7歳で、多くは4〜10歳の中年期に発症します。ただし、若い犬や高齢犬でも発症することがあります。

その他のリスク要因

  • 避妊・去勢手術を受けた犬でリスクが高くなる可能性がある

  • 遺伝的要因が関与していることが示唆されている

愛犬がこれらの条件に当てはまる場合は、定期的な健康診断でホルモン検査を受けることをお勧めします。

見逃しやすい初期症状をチェック

甲状腺機能低下症の症状は徐々に進行し、「年のせいかな」と見過ごされやすいのが特徴です。以下のような変化が複数見られたら、甲状腺機能低下症を疑いましょう。

代謝低下による変化

甲状腺ホルモンの不足により代謝が低下すると、以下の症状が現れます:

症状詳細
元気消失・無気力以前より活動的でなくなり、遊びや散歩を嫌がる
体重増加食事量が変わらない、または減っているのに太る
寒がり暖かい場所を好み、低体温になることも
運動を嫌がるすぐに疲れる、動きが鈍くなる
徐脈心拍数が正常より遅くなる

皮膚・被毛の変化

皮膚と被毛の変化は、甲状腺機能低下症で最もよく見られる外観上の変化です:

  • 左右対称の脱毛:体の両側で同じパターンの毛が抜ける

  • ラットテイル:尾の毛が抜けて、ネズミの尾のような外観になる

  • 被毛の艶の低下毛並み🛒がパサパサになり、光沢がなくなる

  • 皮膚の黒ずみ(色素沈着):脱毛部分の皮膚が黒っぽくなる

  • 皮膚病の併発:脂漏症や膿皮症を繰り返す

特徴的な外見変化「悲しげな顔」

甲状腺機能低下症の犬には、「Sad face(悲しげな顔)」と呼ばれる特徴的な外見変化が見られることがあります。これは顔面に粘液水腫(むくみ)が起こるためです。

粘液水腫の特徴:

  • まぶたが腫れぼったくなる

  • 顔全体がむくんで見える

  • 表情が悲しそう、または哀れに見える

この症状が見られた場合は、かなり病気が進行している可能性があります。

その他の症状

  • 神経症状:発作、ふらつき、頭部傾斜(まれ)

  • 繁殖能力の低下:不妊、発情周期の異常

  • 便秘

  • 外耳炎や爪の感染症を繰り返す

甲状腺機能低下症の原因

Merck Veterinary Manualによると、犬の甲状腺機能低下症の95%以上は甲状腺自体の病気が原因です。主に2つの原因が知られています。

1. リンパ球性甲状腺炎(自己免疫性)

最も多い原因で、全体の約50%を占めます。免疫システムが誤って自分の甲状腺組織を攻撃し、破壊してしまう自己免疫疾患です。遺伝的な要因が関与していると考えられています。

2. 特発性甲状腺萎縮

原因不明で甲状腺組織が萎縮(縮小)し、正常な組織が脂肪組織に置き換わってしまう状態です。約50%を占めます。

発症のメカニズム

甲状腺組織の75%以上が破壊または萎縮すると、臨床症状が現れ始めます。病気の進行は通常ゆっくりで、数ヶ月から数年かけて徐々に症状が悪化します。

まれな原因

  • 甲状腺の腫瘍

  • 下垂体(脳にある)の病気

  • 先天性(生まれつき)の甲状腺異常

  • 薬の副作用

診断方法:血液検査でわかること

甲状腺機能低下症の診断は、症状の確認と血液検査によって行われます。Cornell大学獣医学部によると、複数のホルモン検査を組み合わせて総合的に判断することが重要です。

主要な検査項目(T4、FT4、TSH)

検査項目正式名称基準値意味
T4総サイロキシン0.84〜3.46 μg/dL血中の甲状腺ホルモン総量
FT4遊離サイロキシン0.60〜3.20 ng/dL実際に作用する活性型ホルモン
c-TSH犬甲状腺刺激ホルモン〜0.50 ng/mL甲状腺を刺激するホルモン

血液検査の結果の見方を理解しておくと、獣医師との相談がスムーズになります。

検査結果の正しい読み方

典型的な甲状腺機能低下症の検査結果:

  • T4:低値(基準値以下)

  • FT4:低値(基準値以下)

  • c-TSH:高値(基準値以上)

この3つの条件がそろえば、ほぼ確定診断となります。

注意点:偽陽性に気をつける

Euthyroid Sick Syndrome(ユーサイロイド・シック・シンドローム)」という状態があり、甲状腺以外の病気があると、甲状腺ホルモンが一時的に低下することがあります。

偽陽性の原因となりうる要因:

  • 他の重篤な病気(糖尿病、腫瘍、感染症など)

  • 特定の薬(ステロイド、抗てんかん薬など)

  • 年齢や犬種による変動

そのため、T4だけで診断せず、複数の検査を組み合わせ🛒ことが重要です。

治療法:レボチロキシンによるホルモン補充

甲状腺機能低下症の治療は、不足している甲状腺ホルモンを薬で補充する方法が基本です。FDA(米国食品医薬品局)によると、犬用に承認された甲状腺ホルモン補充薬があります。

投薬方法と用量

レボチロキシン(商品名:Thyro-Tabs、チラージンなど)が最も一般的に使用される薬です。

項目内容
開始用量0.02 mg/kg/日
投与回数1日1回または2回に分けて
投与方法食事と一緒に経口投与
治療期間生涯にわたって継続

人間と比べて犬は甲状腺ホルモンの代謝が早い(半減期が人間の7日に対し、犬は10〜16時間)ため、体重あたりの投与量は人間より多くなります。

治療効果と経過観察

適切な治療を開始すると、以下のように改善が見られます:

期間期待される改善
**1〜2週間元気が出てくる、活動性の改善
4〜6週間被毛が生え始める、皮膚の改善
数ヶ月**体重の正常化、完全な回復

経過観察のスケジュール:

  1. 治療開始後1ヶ月で血液検査(用量調整のため)

  2. その後は6ヶ月ごとに定期検査

  3. 症状や体重の変化があれば随時受診

副作用と注意点

正しい用量であれば、副作用はほとんどありません。ただし、過剰投与の場合は以下の症状が現れることがあります:

  • 多飲多尿

  • 食欲増加

  • 体重減少

  • 落ち着きがなくなる(過活動)

  • 呼吸が速くなる

  • 心拍数の増加

これらの症状が見られたら、すぐに獣医師に相談してください。

特に注意が必要なケース:

  • 心臓病がある犬:低用量から慎重に開始

  • 副腎の病気がある犬:先に副腎の治療が必要な場合あり

日常生活での管理とケア

甲状腺機能低下症の治療中は、日常生活での管理も重要です。

投薬の継続

  • 毎日同じ時間に薬を与える

  • 薬を切らさないよう、余裕を持って処方を受ける

  • 自己判断で投薬を中止しない

食事管理

代謝が低下している状態では体重が増えやすいため、適切な食事と運動のバランスが重要です。

  • カロリー摂取量を適切に管理

  • 高品質のタンパク質を含むフードを選ぶ

  • おやつの与えすぎに注意

肥満は万病のもとであり、甲状腺機能低下症の管理においても体重コントロールは欠かせません。

運動

  • 治療初期は無理をさせない

  • 徐々に運動量を増やしていく

  • 愛犬のペースに合わせる

環境管理

  • 寒がりな場合は暖かい場所を確保

  • 皮膚のケア(定期的なブラッシング、シャンプー)

予後と愛犬との暮らし

甲状腺機能低下症は、適切に治療すれば予後が非常に良い病気です。日本臨床獣医学フォーラムによると、うまく維持できれば健康な犬と同様の生活ができます。

期待できる予後

  • 正常な寿命を期待できる

  • 治療を続ければ症状はコントロール可能

  • 多くの犬が「若返ったよう」に元気になる

長期管理のポイント

  1. 投薬を生涯継続する

  2. 定期的な血液検査で用量を調整

  3. 体重や症状の変化に注意

  4. 獣医師との良好なコミュニケーション

年間の予防医療カレンダーに甲状腺ホルモン検査を組み込んで、計画的に管理しましょう。

まとめ:早期発見で愛犬の生活の質を守る

甲状腺機能低下症は、以下のポイントを押さえておくことが大切です:

要注意の症状チェックリスト

✅ 元気がなくなった、動きが鈍い ✅ 食べる量は変わらないのに太ってきた ✅ 寒がるようになった ✅ 左右対称に毛が抜ける ✅ 皮膚がベタベタする、または乾燥する ✅ 顔がむくんでいる、悲しそうな表情

重要なポイント

  • 中型〜大型犬🛒の中年期に多い病気

  • 血液検査で診断できる

  • レボチロキシンの投薬で治療可能

  • 生涯治療が必要だが、予後は良好

  • 早期発見・早期治療が愛犬のQOL(生活の質)を守る

愛犬に気になる🛒症状があれば、早めにかかりつけの動物病院を受診しましょう。愛犬の健康を守る病気予防と早期発見のために、定期的な健康チェックを心がけてください。

---

参考文献:

関連記事