犬の避妊・去勢手術について、飼い主の皆さんから最もよく寄せられる質問にお答えします。手術のタイミング、メリット・デメリット、費用、術後のケアまで、獣医師の視点から詳しく解説します。
手術のタイミングに関する質問
Q1: 避妊・去勢手術はいつ行うのがベストですか?

一般的に、生後6~10ヶ月が推奨されています。ただし、犬種や個体差により最適なタイミングは異なります。
| 犬のサイズ | 推奨時期 | 理由 |
|---|---|---|
| 小型犬 | 生後6-8ヶ月 | 早期の性成熟に対応 |
| 中型犬 | 生後8-10ヶ月 | 骨格の成長を考慮 |
| 大型犬 | 生後10-12ヶ月 | 成長板の閉鎖を待つ |
| 超大型犬 | 生後12-18ヶ月 | 骨格発達の完了を優先 |
初回発情前に避妊手術を行うと、乳腺腫瘍の予防効果が99.5%に達します。2回目の発情前でも91.5%の予防効果があります。
詳しくは避妊・去勢手術の最適な時期とタイミングをご覧ください。

Q2: 発情後でも手術できますか?
はい、可能です。ただし、発情中や発情直後は子宮や卵巣の血流が増加しているため、発情終了後1~2ヶ月待つことが推奨されます。
成犬や高齢犬でも手術は可能ですが、術前の健康診断がより重要になります。心臓や腎臓の機能を確認し、麻酔のリスクを評価します。
手術のメリット・デメリットに関する質問
Q3: 避妊・去勢手術の主なメリットは何ですか?
メスの避妊手術のメリット:
| メリット | 詳細 | 予防効果 |
|---|---|---|
| 乳腺腫瘍予防 | 初回発情前の手術で99.5% | 極めて高い |
| 子宮蓄膿症予防 | 子宮を摘出するため100% | 完全予防 |
| 卵巣腫瘍予防 | 卵巣を摘出するため100% | 完全予防 |
| 望まない妊娠防止 | 繁殖能力の完全喪失 | 100% |
| 発情出血の解消 | ストレスや衛生面の改善 |
オスの去勢手術のメリット:
| メリット | 詳細 | 効果 |
|---|---|---|
| 精巣腫瘍予防 | 精巣を摘出するため | 100%予防 |
| 前立腺肥大予防 | ホルモンバランスの変化 | 70-90%減少 |
| 会陰ヘルニア予防 | テストステロン減少による | リスク大幅減 |
| マーキング行動減少 | 約50-60%の犬で改善 | 個体差あり |
| 攻撃性の軽減 | 他の犬への攻撃性減少 | 個体差あり |
Q4: デメリットやリスクはありますか?
手術には以下のようなデメリットやリスクも存在します:
共通のデメリット:
肥満のリスク増加:基礎代謝が20-30%低下し、太りやすくなります
麻酔のリスク:全身麻酔に伴う合併症のリスク(約0.1-0.5%)
手術の合併症:出血、感染症、縫合不全など(約1-2%)
メス特有のリスク:
尿失禁:大型犬で10-20%の確率で発生
膣炎:まれに発生する可能性
オス特有のリスク:
陰嚢の腫れ:術後一時的に発生することがある
詳細は避妊・去勢手術のリスクとデメリットで解説しています。
費用に関する質問
Q5: 手術費用はいくらくらいかかりますか?
手術費用は動物病院🛒や地域、犬のサイズによって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです:
| 犬のサイズ | メスの避妊手術 | オスの去勢手術 |
|---|---|---|
| 小型犬(5kg未満) | 25,000-40,000円 | 15,000-25,000円 |
| 中型犬(5-20kg) | 35,000-50,000円 | 20,000-30,000円 |
| 大型犬(20-40kg) | 45,000-70,000円 | 25,000-40,000円 |
| 超大型犬(40kg以上) | 60,000-100,000円 | 35,000-50,000円 |
費用に含まれるもの:
術前検査(血液検査、心電図など)
全身麻酔
手術
術後の鎮痛剤・抗生物質
エリザベスカラー
抜糸(必要な場合)
自治体によっては手術費用の助成制度がある場合もあります。お住まいの地域の動物愛護センターや保健所に確認してみましょう。
術後のケアに関する質問
Q6: 術後はどのようなケアが必要ですか?
術後の適切なケアは、合併症を防ぎ、スムーズな回復のために非常に重要です。
術後1-3日(重要期間):
| ケア項目 | 詳細 | 注意点 |
|---|---|---|
| 安静 | ケージ内で静かに過ごす | 激しい運動は厳禁 |
| 散歩 | 控える(排泄のみ短時間) | 傷口への負担を避ける |
| 食事 | 通常の50-70%から開始 | 嘔吐のリスク軽減 |
| 飲水 | 少量ずつ自由に | 脱水予防 |
| エリザベスカラー | 常時装着 | 傷口を舐めさせない |
| 傷口チェック | 1日2回確認 | 赤み・腫れ・出血を監視 |
術後4-7日:
徐々に活動量を増やす
短い散歩を再開(10-15分程度)
食事を通常量に戻す
術後8-14日:
抜糸(溶ける糸を使用した場合は不要)
エリザベスカラーの除去
通常の生活に戻る
詳しくは避妊・去勢手術後の正しいケアと注意点をご覧ください。
Q7: 術後に異常が見られた場合、どうすればよいですか?
以下の症状が見られた場合は、すぐに動物病院に連絡してください:
緊急を要する症状:
傷口からの大量出血
傷口が開いている
著しい腫れや熱感
24時間以上食事を取らない
嘔吐が続く
ぐったりして動かない
呼吸が荒い
経過観察でよい症状:
軽度の腫れ(術後2-3日はよくある)
少量の出血(にじむ程度)
食欲不振(術後1日目)
軽い咳(麻酔の影響)
術後の生活に関する質問
Q8: 術後に性格は変わりますか?
性格の大きな変化はほとんどありませんが、以下のような変化が見られることがあります:
オスの場合:
マーキング行動の減少(50-60%の犬で改善)
他の犬への攻撃性の軽減(個体差あり)
脱走行動の減少
より落ち着いた性格になることが多い
メスの場合:
発情期の不安定な行動がなくなる
より穏やかになることが多い
ただし、基本的な性格は変わりません。人懐っこい犬は引き続き人懐っこく、警戒心が強い犬はそのままです。
Q9: 術後に太りやすくなるというのは本当ですか?
はい、本当です。手術後は基礎代謝が20-30%低下するため、同じ食事量でも太りやすくなります。
肥満予防のポイント:
| 対策 | 詳細 | 効果 |
|---|---|---|
| 食事量の調整 | 術前の80-90%に減量 | 高い |
| 避妊・去勢犬用フード | 低カロリー・高たんぱく質 | 高い |
| 規則的な運動 | 1日2回、各30分以上 | 中程度 |
| おやつの制限 | 1日の総カロリーの10%以内 | 中程度 |
| 定期的な体重測定 | 週1回の体重チェック | 予防効果 |
肥満は関節疾患や糖尿病のリスクを高めるため、適切な体重管理が重要です。
理想体重の維持方法は犬の適正体重管理と肥満予防で詳しく解説しています。
Q10: 手術をしないという選択肢もありますか?
はい、手術をしないという選択肢もあります。ただし、以下の点を理解しておく必要があります:
手術をしない場合のリスク:
| リスク | メス | オス |
|---|---|---|
| 生殖器系腫瘍 | 乳腺腫瘍、卵巣腫瘍、子宮腫瘍 | 精巣腫瘍 |
| 生殖器系疾患 | 子宮蓄膿症(致命的) | 前立腺肥大 |
| 望まない妊娠 | 管理が困難 | 問題行動 |
| 発情期の不安定さ | マーキング、攻撃性 |
手術が不要なケース:
繁殖を計画している健康な犬
高齢や持病で麻酔リスクが高い犬
オーナーが適切な管理を行える環境
最終的な判断は、獣医師と相談しながら、犬の健康状態、生活環境、飼い主の管理能力を総合的に考慮して決定しましょう。
詳しくは犬の繁殖と避妊・去勢:正しい知識と選択をご覧ください。
まとめ:避妊・去勢手術の判断基準
避妊・去勢手術は、多くの健康上のメリットがあり、望まない繁殖を防ぐ効果的な方法です。一方で、肥満のリスクや麻酔に伴う危険性も存在します。
手術を検討すべきケース:
繁殖の予定がない
病気予防を重視したい
問題行動(マーキング、攻撃性など)がある
多頭飼い🛒で管理が難しい
慎重な判断が必要なケース:
大型犬のメス(尿失禁リスク)
高齢犬や持病がある犬
繁殖を計画している
手術のタイミング、方法、術後のケアについては、必ず信頼できる獣医師に相談し、愛犬にとって最善の選択をしましょう。
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