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犬の繁殖と避妊・去勢:正しい知識と選択

生まれたての子犬と母犬のケア

生まれたての子犬と母犬のケアの画像

出産に立ち会う:分娩の流れと緊急時対応を経て、無事に子犬が誕生した後、最も重要なのが生後数週間のケアです。この期間の適切な管理が、子犬の健やかな成長と母犬の健康回復を左右します。

新生児期の子犬は、体温調節ができず、免疫力も低く、非常にデリケートな状態です。また母犬も出産という大仕事を終え、体力を消耗しています。犬の繁殖と避妊・去勢:正しい知識と選択を理解した責任ある飼い主として、この大切な時期を全力でサポートしましょう。

出産直後の確認事項

出産が完了したら、まず以下の点を確認します。

生まれたての子犬と母犬のケアの画像4

すべての子犬の健康状態

  • 呼吸をしているか

  • 鳴き声を上げているか

  • 母乳を飲んでいるか

  • 体温が保たれているか(触って温かいか)

  • 外見に異常がないか(口蓋裂、臍帯ヘルニアなど)

母犬の状態

  • すべての胎盤が排出されたか

  • 出血量は正常か(少量の血液混じりの分泌物は正常)

  • 体温は正常範囲か

  • 子犬に対する母性行動が見られるか

  • 水分を摂取しているか

生まれたての子犬と母犬のケアの画像3

環境の整備

  • 産箱内を清潔にする

  • 汚れたタオル🛒を交換

  • 室温を29〜32℃に保つ

  • 静かな環境を維持

新生児期の子犬のケア(生後0〜4週間)

保温管理:最重要課題

新生児期の子犬は体温調節機能が未発達で、低体温症のリスクが非常に高いです。新生児期の室温は28〜32℃、湿度50〜60%を維持する必要があります。

週齢別の適正温度

週齢環境温度湿度使用器具
0〜1週29〜32℃55〜65%ペットヒーター必須
2〜3週26〜29℃50〜60%ペットヒーター推奨
4週以降23〜26℃50〜60%徐々に室温へ

低体温の危険性

低体温(32〜35℃)、脱水、低血糖は新生児の生命に関わる緊急状態です。軽度でも体温が32〜35℃に下がると、元気がなくなり震えが見られます。28℃以下になると生命の危機です。

低体温の兆候:

  • 触って冷たい

  • 動きが鈍い、または動かない

  • 鳴かない

  • 母乳を飲まない

  • 震え(32℃以上の場合)

低体温が疑われる場合は、すぐに保温しながら動物病院に連絡してください。

授乳管理:生命線

初乳の重要性

初乳は生後2〜3日以内に摂取することで免疫獲得に重要です。初乳には母犬からの免疫物質(抗体)が豊富に含まれており、生後24時間以内に摂取することで最大限の免疫が移行します。

すべての子犬が出産後2時間以内に初乳を飲んでいることを確認しましょう。弱い子犬は他の子犬に押されて母乳にアクセスできないことがあるため、飼い主が補助する必要があります。

授乳回数と頻度

授乳は生後2週間まで1日6〜8回(3〜4時間おき)、2〜4週間は1日4〜5回が目安です。

母犬が自然に授乳する場合は特に介入不要ですが、以下の場合は人工授乳を検討します:

  • 母乳が出ない、または不足している

  • 子犬の数が多すぎる(母犬の乳首数を超える)

  • 母犬が授乳を拒否する

  • 子犬が弱すぎて自力で飲めない

人工授乳の方法

必要な場合は、犬用ミルク🛒代用品を使用します。絶対に牛乳を与えないでください。 犬は乳糖を消化できず、下痢を引き起こします。

授乳手順:

  1. 犬用ミルクを36〜38℃に温める

  2. 専用哺乳瓶を使用

  3. 子犬を腹ばいの自然な姿勢で保持(仰向けにしない)

  4. ゆっくりと飲ませる(誤嚥防止)

  5. 授乳後、背中を軽く叩いてげっぷをさせる

体重測定:成長の指標

健康な子犬は毎日体重の約10%増加、生後10日で出生体重の2倍、3週間で3倍になるのが目安です。

体重測定の実施方法

  • 頻度: 生後2週間は1日2回(朝晩同じ時刻)

  • 方法: デジタルスケール(1g単位)を使用

  • 記録: 日付、時刻、体重、授乳状況をノートに記録

体重増加不良の原因:

  • 母乳不足

  • 子犬の吸引力が弱い

  • 低体温

  • 疾患(感染症など)

体重が増えない、または減少する場合は、すぐに動物病院🛒に相談してください。

排泄補助:必須の日課

子犬は生後約1ヶ月まで排泄補助が必要、陰部と肛門を湿らせたティッシュで刺激します。

母犬が行う場合は不要ですが、母犬が行わない、または子犬の数が多い場合は、飼い主が補助します。

排泄補助の手順:

  1. 温かく湿らせたティッシュまたはガーゼを用意

  2. 子犬の陰部と肛門周辺を優しく円を描くように刺激

  3. 排尿・排便が出ることを確認

  4. 清潔なティッシュで拭き取る

  5. 授乳の前後に毎回実施

健康チェックリスト

毎日以下の項目を確認します:

チェック項目正常異常(要注意)
活動性活発に動く、鳴くぐったり、動かない
皮膚の色ピンク色青白い、紫色
授乳積極的に飲む飲まない、吸引力弱い
体重毎日増加増えない、減少
排泄規則的下痢、便秘、血便
体温温かい冷たい

母犬の産後ケア

母犬の健康は、子犬の健康に直結します。適切な産後ケアで、母犬の早期回復をサポートしましょう。

栄養管理:大幅な増量が必要

母犬の栄養要求量は出産直後で通常の1.5倍、授乳3〜4週目で3倍に増加します。

給餌のポイント

  • フード: 高カロリー・高タンパクの授乳期用フードまたはパピー用フード

  • 量: 通常の1.5〜3倍(子犬の数により調整)

  • 回数: 1日3〜4回に分けて給餌、または自由採食

  • 水分: 常に新鮮な水を大量に用意(授乳で水分消費が大)

カルシウム管理

産後の母犬は、授乳により大量のカルシウムを失います。ただし、妊娠中のカルシウム サプリメント🛒投与は子癇(低カルシウム血症)のリスクを高めるため推奨されません。

適切な授乳期用フードを十分量与えることで、必要なカルシウムは確保できます。

健康観察:産後合併症に注意

子癇(低カルシウム血症)

子癇(低カルシウム血症)は母犬に筋肉痙攣や硬直を引き起こす産後合併症で、特に小型犬や多胎出産の母犬に多く見られます。

症状:

  • 落ち着きのなさ

  • パンティング(荒い呼吸)

  • よだれ

  • 筋肉の震え

  • 硬直

  • けいれん

  • 高熱

対処: 子癇が疑われる場合は、緊急で動物病院を受診してください。カルシウムの静脈注射が必要です。

乳腺炎

乳腺が細菌感染を起こし、腫れ、熱感、痛みが生じます。

症状:

  • 乳腺の腫れ、硬化

  • 熱を持つ

  • 触ると痛がる

  • 発熱

  • 元気消失

  • 食欲不振

予防:

  • 産箱を清潔に保つ

  • 毎日乳腺をチェック

  • 子犬の爪を短く保つ(引っ掻き傷防止)

対処: 乳腺炎が疑われる場合は、すぐに動物病院を受診してください。抗生物質治療が必要です。

子宮内膜炎

出産後、子宮に胎盤や胎児の残留があると、感染を起こすことがあります。

症状:

  • 悪臭のある分泌物

  • 発熱

  • 食欲不振

  • 元気消失

産後の検診スケジュール

時期検診内容目的
出産後24時間以内電話または訪問経過確認、母子の状態確認
出産後3〜5日来院検診母犬の回復確認、乳腺チェック、残留確認
出産後2〜3週来院検診母犬の健康確認、子犬の健康チェック

生後1〜4週間:成長段階

1週目:新生児期

  • 目と耳は閉じたまま

  • 這って移動(歩けない)

  • 母乳のみで栄養摂取

  • 1日の大半を睡眠

  • 体重:出生時の約2倍

2週目:開眼期

  • 目が開き始める(10〜14日頃)

  • 耳が聞こえ始める

  • まだ視力は弱い

  • 這う動作が活発に

3週目:移行期

  • 歩き始める

  • 乳歯が生え始める

  • 排泄の自立が始まる

  • 体重:出生時の約3倍

4週目:社会化期の始まり

  • 活発に動き回る

  • 兄弟と遊び始める

  • 離乳食の開始

  • 母犬からの自立が進む

離乳の準備(生後3〜4週間)

離乳食の開始

生後3〜4週間から、徐々に離乳食を始めます。

離乳食の作り方:

  1. パピー用ドライフード🛒をぬるま湯でふやかす

  2. ペースト🛒状になるまで混ぜる

  3. 浅い皿に少量を入れる

  4. 子犬の口元に近づけ、興味を引く

進め方:

  • 1日1〜2回から開始

  • 徐々に回数と量を増やす

  • 5〜6週で完全離乳を目指す

緊急時の対応

以下の症状が見られたら、すぐに動物病院に連絡してください。

子犬の緊急サイン

  • 触って冷たい(低体温)

  • 全く動かない、反応がない

  • 呼吸が弱い、または異常に速い

  • 鳴き続ける(痛みや空腹のサイン)

  • 下痢、血便

  • 嘔吐

  • 体重が増えない、または減少

母犬の緊急サイン

  • けいれん、震え

  • 高熱(39.5℃以上)

  • ぐったりして動けない

  • 食欲が全くない(24時間以上)

  • 大量の出血

  • 悪臭のある分泌物

  • 乳腺の著しい腫れや痛み

よくある質問(FAQ)

子犬が母乳を飲まない場合はどうすればいいですか?

まず低体温になっていないか確認してください。体温が低いと吸引力が低下します。保温しながら、人工授乳を検討しましょう。

母犬が子犬の世話をしない場合は?

初産や帝王切開後、疲労などで母性本能が遅れることがあります。飼い主が授乳補助や保温を行いながら、24〜48時間様子を見ます。改善しない場合は動物病院に相談してください。

いつから子犬を触っても大丈夫ですか?

健康チェックや排泄補助のために触るのは問題ありませんが、過度な接触は母犬のストレスになります。特に最初の1週間は最小限の接触にとどめましょう。

子犬の鳴き声がうるさいのですが、問題ありませんか?

適度な鳴き声は正常ですが、激しく鳴き続ける場合は、空腹、寒さ、痛みなどのサインです。原因を確認し、対処してください。

母犬の食欲がない場合は心配ですか?

出産直後の一時的な食欲低下は正常ですが、24時間以上全く食べない場合は、子癇や感染症の可能性があります。動物病院🛒に連絡してください。

まとめ:最初の数週間が将来を左右する

生まれたての子犬と母犬のケアは、24時間体制の献身的な作業です。しかし、この期間の適切な管理が、子犬の健やかな成長と母犬の健康回復を保証します。

重要ポイント:

  1. 保温が最優先 - 室温29〜32℃、低体温は生命に関わる

  2. 体重測定で成長確認 - 毎日10%増加、10日で2倍、3週で3倍が目安

  3. 初乳は24時間以内 - 免疫獲得の最重要時期

  4. 母犬の栄養は3倍 - 授乳期は通常の3倍の食事が必要

  5. 産後合併症に注意 - 子癇、乳腺炎の早期発見が重要

  6. 緊急時は迷わず受診 - 低体温、けいれん、食欲廃絶は緊急

出産に立ち会う:分娩の流れと緊急時対応を経て誕生した小さな命を、愛情と知識でサポートしましょう。

この大切な時期を乗り越えたら、避妊手術のメリット・デメリット徹底解説去勢手術のメリット・デメリット徹底解説を参考に、将来的な繁殖計画を再考することも、犬の繁殖と避妊・去勢:正しい知識と選択の一環として検討しましょう。

責任あるブリーディングは、出産で終わりではなく、生まれた子犬すべてに生涯責任を持つことを意味します。

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