わんケアガイドわんケアガイド
犬の繁殖と避妊・去勢:正しい知識と選択

出産に立ち会う:分娩の流れと緊急時対応

出産に立ち会う:分娩の流れと緊急時対応の画像

愛犬の出産は、飼い主にとって感動的であると同時に、大きな責任を伴う瞬間です。妊娠から出産まで:約63日間のケアを通じて準備を整えてきた成果が、いよいよ実を結びます。本記事では、出産の流れを詳しく解説し、緊急時の対応方法まで網羅します。

出産は自然な生理現象ですが、時として母犬や子犬の命に関わる事態も起こり得ます。適切な知識を持ち、冷静に対応することで、安全な出産をサポートできます。犬の繁殖と避妊・去勢:正しい知識と選択を理解した上で、計画的な繁殖に臨むことの重要性を再確認しましょう。

出産直前の最終確認

出産予定日が近づいたら、以下の項目を最終確認しましょう。

出産に立ち会う:分娩の流れと緊急時対応の画像4

必要物品のチェックリスト

  • 清潔なタオル🛒(10〜15枚)

  • 消毒済みのハサミ

  • 糸(へその緒結紮用)

  • 体温計

  • デジタル体重計

  • ペットヒーター

  • 動物病院の緊急連絡先

  • ビニール袋(汚物処理用)

  • メモ帳とペン(出産記録用)

動物病院との連絡体制

かかりつけの動物病院だけでなく、夜間・休日対応可能な病院の連絡先も控えておきましょう。出産は昼夜を問わず始まります。

出産に立ち会う:分娩の流れと緊急時対応の画像3

出産の兆候

出産2~3日前には産箱に入る時間や回数が増え、出産当日~1日前には体温の低下(普段の体温の平均よりも約1~1.5度低下)、食欲がなくなり、落ち着きがなくなります

体温の変化

体温が1~2℃下降すると24時間以内に陣痛が起きます。通常38〜39℃の体温が、37℃以下に低下したら、出産が近いサインです。

営巣行動

営巣運動として、平均14時間前から前肢で土を掘るようなしぐさをします。産箱の中を整えたり、タオル🛒や布を掘るような動作が見られます。

行動の変化

  • 落ち着きなくウロウロする

  • 飼い主にべったりする、または一人になりたがる

  • 震えや浅い呼吸

  • 頻繁に陰部を舐める

  • 食欲の低下または完全な拒食

出産の兆候タイミング状態
体温低下6〜18時間前37℃以下に低下
営巣行動平均14時間前掘る動作、産箱整理
落ち着きのなさ数時間前〜直前ウロウロ、震え
食欲低下1〜2日前完全拒食もあり

分娩の流れ:3つのステージ

犬の分娩は、医学的に3つのステージに分けられます。

第1期:開口期(陣痛開始〜子宮口全開)

初めのうちは陣痛の起こる間隔が長いが次第に短く強くなり、それとともに呼吸が速くなったり、パンティングをしたり震えたりします

この時期の母犬の様子:

  • 呼吸が荒くなる(パンティング)

  • 震えや不安そうな表情

  • 産箱の出入りを繰り返す

  • 陰部からの透明または薄黄色の分泌物

所要時間: 初産で6〜12時間、経産犬で2〜6時間

飼い主の役割:

  • 静かに見守る

  • 水分補給🛒の機会を提供

  • 過度な干渉は避ける

  • 体温と時間を記録

第2期:娩出期(第1仔の出産〜最後の仔の出産)

陣痛が始まると通常ならばじきに破水が起こります。母犬の力みとともに、胎子を包む羊水の入った袋(羊膜)が陰部から現れ、産みおとされます

第1仔の誕生

陣痛のはじめから遅くても2~3時間以内に第1仔が出産されます。強い力みが始まってから30分〜1時間程度で最初の子犬が生まれます。

続く仔犬の誕生

その後、次の赤ちゃんを30~60分間隔で出産します全て娩出し終わるまでに、平均1仔あたり20~40分を要します

正常な出産の流れ

  1. 強い力み(いきみ)が始まる

  2. 陰部から羊膜に包まれた子犬が現れる

  3. 母犬が羊膜を破る

  4. へその緒を噛み切る

  5. 子犬の身体を舐めて刺激する

  6. 子犬が鳴き声を上げ、呼吸を始める

第3期:後産期(胎盤の排出)

各子犬の誕生後、10〜15分以内に胎盤が排出されます。母犬は通常、胎盤を食べますが、すべて食べさせる必要はありません。

胎盤の数を確認: 子犬の数と胎盤の数が一致することを確認しましょう。胎盤が体内に残ると感染症の原因となります。

分娩ステージ所要時間主な症状
第1期(開口期)初産6〜12時間<br>経産犬2〜6時間陣痛、パンティング、震え
第2期(娩出期)第1仔まで2〜3時間<br>以降30〜60分間隔強い力み、子犬の誕生
第3期(後産期)各仔の後10〜15分胎盤の排出

飼い主の補助が必要な場合

母犬が本能的に行うべき処置を行わない場合、飼い主が介入する必要があります。

羊膜の処理

母犬が羊膜を破らない場合は人の手で破り、タオルで拭く必要があります。羊膜は手で簡単に破ることができます

手順:

  1. 清潔な手で羊膜を優しく破る

  2. まず鼻と口から羊膜を取り除く

  3. タオル🛒で全身の水分を拭き取る

  4. 鼻と口の周りを特に念入りに拭く

へその緒の処理

へその緒は胎児から2〜3cmの位置で糸で結び、その先をハサミで切断します。

詳細手順:

  1. 子犬のお腹から2〜3cmの位置を糸で縛る

  2. その縛った位置から1cm離れた位置をもう一度縛る

  3. 2つの結び目の間を消毒したハサミで切断

  4. 切り口を軽く消毒液で拭く

呼吸の刺激

生まれた子犬が呼吸をしない場合:

  1. タオルで強めに擦る - 身体全体をタオルで擦って刺激

  2. 羊水の除去 - 羊水が鼻や口に詰まって呼吸ができない場合は、飼い主が子犬の鼻や口に自分の口を当てて吸い出すか、子犬の頭をしっかりと持って遠心力を利用して軽く振ることで羊水を出します

  3. 軽く振る - 頭を下にして優しく上下に振り、羊水を出す

  4. 人工呼吸 - それでも呼吸しない場合は、優しく鼻から息を吹き込む

緊急時の対応:いつ動物病院に連絡すべきか

以下の状況では、直ちに動物病院🛒に連絡してください。

即座に連絡が必要なケース

  1. [体温が37℃(直腸温)になって24時間しても陣痛が来ない](https://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/1317)

  2. [陣痛を発見しても2時間経っても娩出されない](https://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/1317)

  3. [破水後1時間経っても娩出されない](https://www.anicom-sompo.co.jp/doubutsu_pedia/node/1317)

  4. 強い力みが30分以上続くのに子犬が出てこない

  5. 子犬の一部(足や尾)が見えているのに進まない

  6. 緑黒色の分泌物が出る(胎盤剥離のサイン)

  7. 大量の鮮血が出る

  8. 母犬がぐったりして動けない

  9. けいれんや意識障害

  10. 子犬と子犬の間隔が4時間以上空く

難産のリスク要因

難産になりやすい犬種:フレンチブルドッグ、ブルドッグ、パグ、ボストンテリア、狆、ポメラニアン、シーズー、チワワ、ペキニーズ、スコティッシュテリア、ボクサーなど。

特に短頭種(鼻が短い犬種)や小型犬は、難産のリスクが高いため、事前に動物病院🛒と緊急時の対応を相談しておくことが重要です。

緊急サイン猶予時間対応
体温低下後24時間陣痛なしすぐに動物病院連絡
強い陣痛2時間続くも出産なしすぐに動物病院連絡
破水後1時間出産なしすぐに動物病院連絡
緑黒色の分泌物すぐに動物病院連絡
仔犬間隔4時間以上2時間様子見後動物病院連絡

帝王切開について

難産の場合、帝王切開が必要になることがあります。

帝王切開が必要な状況

  • 骨盤と胎児のサイズが合わない

  • 胎児の位置異常(逆子など)

  • 母犬の陣痛微弱

  • 長時間の陣痛で母犬が疲労

  • 胎児の心拍低下

帝王切開のリスク

帝王切開の新生児死亡率22%、母犬死亡率1%というデータがあります。

自然分娩が理想ですが、母犬と子犬の命を守るため、獣医師の判断で帝王切開が選択されることもあります。

出産記録の取り方

出産中は、以下の情報を記録しておきましょう:

  1. 各子犬の出産時刻

  2. 羊膜の状態(破れていたか、完全か)

  3. へその緒の処理方法

  4. 子犬の性別と体重

  5. 胎盤の数

  6. 各子犬の鳴き声・活動状況

  7. 母犬の様子

  8. 異常な出来事

この記録は、獣医師への報告や、今後の参考になります。

出産後の確認事項

すべての子犬が生まれた後:

子犬の健康チェック

  • すべての子犬が呼吸しているか

  • 活発に動いているか

  • 母乳を飲んでいるか

  • 体温は保たれているか(触って冷たくないか)

  • 異常な外見はないか(口蓋裂など)

母犬の健康チェック

  • 出血量は正常か(少量の出血は正常)

  • 体温は正常に戻ったか

  • 食欲はあるか

  • 子犬に対する興味があるか

  • 異常な分泌物はないか

環境の整備

  • 産箱を清潔にする

  • 汚れたタオル🛒を交換

  • 室温を29〜32℃に保つ

  • 静かな環境を維持

出産後24時間以内に、生まれたての子犬と母犬のケアへと移行します。

よくある質問(FAQ)

出産中、ずっと付き添うべきですか?

基本的には静かに見守る姿勢が大切です。母犬が不安そうにしている場合は近くにいて安心させ、順調な場合は適度な距離を保ちましょう。過度な干渉はストレスになります。

初産と経産犬で違いはありますか?

初産は出産に時間がかかる傾向があり、母性本能の発揮が遅れることもあります。経産犬は慣れていますが、加齢による体力低下も考慮が必要です。

夜中に出産が始まった場合は?

犬の出産は夜間に始まることも多いです。事前に夜間対応可能な動物病院を確認し、必要な物品を手の届く場所に準備しておきましょう。

子犬の数が予想より少ない場合は?

レントゲン検査で確認した数と異なる場合は、体内に残っている可能性があります。すぐに動物病院に連絡してください。

母犬が子犬を舐めない場合は?

初産や帝王切開後、疲労などで母性本能が発揮されないことがあります。飼い主がタオル🛒で刺激し、母乳を飲ませる補助をしましょう。数時間〜1日で母性本能が芽生えることもあります。

まとめ:冷静な判断と適切な対応が鍵

犬の出産は、感動的な経験であると同時に、飼い主の知識と判断力が試される場面です。重要なポイントをまとめます:

  1. 出産の兆候を見逃さない - 体温低下後24時間以内に陣痛開始

  2. 分娩の3ステージを理解 - 各段階の正常な所要時間を把握

  3. 緊急時のサインを知る - 2時間陣痛しても出産なし、破水後1時間出産なしは要連絡

  4. 補助が必要な場合に備える - 羊膜とへその緒の処理方法を習得

  5. 動物病院との連携 - 緊急連絡先を確保、迷ったらすぐ相談

  6. 難産リスクの高い犬種 - 短頭種や小型犬は特に注意深く観察

  7. 出産記録を取る - 時刻、順番、異常の有無を記録

妊娠から出産まで:約63日間のケアを通じて準備してきた成果を、この瞬間に発揮しましょう。

出産は命の誕生という神秘的な瞬間ですが、時として緊急対応が必要になることもあります。冷静に状況を判断し、適切なタイミングで専門家の助けを求めることが、母犬と子犬の命を守る鍵となります。

無事に出産が終わったら、次は生まれたての子犬と母犬のケアへと進みます。犬の繁殖と避妊・去勢:正しい知識と選択を理解し、責任ある繁殖を実践しましょう。

関連記事