わんケアガイドわんケアガイド
愛犬の健康を守る病気予防と早期発見

犬の心臓病:早期発見のサインを見逃さない

犬の心臓病:早期発見のサインを見逃さないの画像

「最近、うちの子が疲れやすくなった気がする…」「散歩を嫌がるようになったのは年のせい?」

愛犬のこんな変化を感じたことはありませんか?実は、これらの何気ない変化が、心臓病の初期サインである可能性があります。

CVCAの調査によると、シニア犬の約35%、全犬の約10%が何らかの心臓病に罹患しているとされています。心臓病は一度発症すると完治が難しい病気ですが、早期に発見すれば進行を遅らせ、愛犬との幸せな時間を長く保つことができます

この記事では、見逃しやすい心臓病の7つの初期サイン、自宅でできる簡単なチェック法、予防のための食事・運動のポイントを、最新の獣医学情報に基づいて詳しく解説します。愛犬の健康を守る病気予防と早期発見の一環として、ぜひ最後までお読みください。

犬の心臓病とは?主な種類を知る

犬の心臓病は、心臓の構造や機能に異常が生じる病気の総称です。心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割を担っており、この機能が低下すると様々な症状が現れます。

犬の心臓病:早期発見のサインを見逃さないの画像5

日本臨床獣医学フォーラムによると、犬の心臓病の約95%は後天性、つまり加齢とともに発症するものです。主に2つのタイプがあり、愛犬のサイズによってかかりやすい病気が異なります。

僧帽弁閉鎖不全症(小型犬に多い)

僧帽弁閉鎖不全症は、小型犬の心臓病の95%を占める最も一般的な心臓病です。

僧帽弁は心臓の左心房と左心室の間にある弁で、血液の逆流を防ぐ役割があります。年齢とともにこの弁が変性し、厚くなったり、支える腱索が伸びたりすることで、弁がしっかり閉じなくなります。その結果、血液が逆流し、心臓に負担がかかります。

犬の心臓病:早期発見のサインを見逃さないの画像4

驚くべきことに、16歳の犬の約75%がこの病気を持っているという統計があります。進行性の病気で完治は難しいですが、早期発見・早期治療により、良好な状態を長く維持することが可能です。

かかりやすい犬種:

  • キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル

  • マルチーズ🛒

  • シーズー

  • ポメラニアン

  • チワワ

  • ヨークシャーテリア

拡張型心筋症(大型犬に多い)

アニコム損保の解説によると、拡張型心筋症(DCM)は心臓の筋肉が薄くなり、心臓全体が風船のように拡張してしまう病気です。

正常な心臓は力強く収縮して血液を送り出しますが、拡張型心筋症になると、このポンプ機能が著しく低下します。血液を十分に送り出せなくなり、全身に酸素が行き渡らなくなります。

この病気の怖いところは、突然死のリスクがあることです。平均的な生存期間は6ヶ月〜2年とされていますが、無症状のうちに発見できれば、より長く良好な状態を維持できます。

かかりやすい犬種:

  • ドーベルマン

  • グレート・デン

  • ボクサー

  • ゴールデン🛒・レトリバー

  • アイリッシュ・ウルフハウンド

  • ニューファンドランド

※オスに多く見られる傾向があります。

見逃しやすい!心臓病の7つの初期サイン

心臓病の初期段階では、明確な症状が出にくいのが特徴です。Morris Animal Foundationの研究でも、多くの犬が病気が進行するまで臨床症状を示さないことが報告されています。

「ちょっと疲れているのかな?」「年をとったからかな?」と見過ごしてしまいがちな、7つの初期サインを詳しく見ていきましょう。

1. 疲れやすくなった・散歩を嫌がる

最も早く現れやすい症状の一つです。

以前は喜んで散歩に行っていたのに、最近は玄関で座り込んでしまう。散歩の途中で休みたがる。帰宅後、異常に息が上がっている——こんな変化はありませんか?

心臓のポンプ機能が低下すると、運動時に必要な酸素を十分に供給できなくなります。その結果、以前と同じ運動量でも疲れやすくなるのです。

「年だから仕方ない」と思いがちですが、急激な変化は要注意です。

2. 夜間や横になったときの咳

PetMDによると、心臓病の犬に見られる特徴的な症状がです。

特に注意すべきなのは、夜間や横になっているときに多く出る咳です。これは、心臓が肥大して気管を圧迫するために起こります。

心臓病の咳は独特で、「カーッ」「ガハーッ」と痰を吐くような音が特徴です。風邪の咳とは異なり、数日経っても治まりません。

また、心臓のポンプ機能が低下すると、肺に血液が滞留し、肺水腫(肺に水がたまる状態)を引き起こすことがあります。これも咳の原因となります。

3. 呼吸が荒い・速い

ごとふ動物病院の解説によると、安静時の呼吸数は重要なチェックポイントです。

正常な安静時呼吸数:

  • 小型犬:1分間に約20回

  • 大型犬:1分間に約15回

注意が必要なライン:

  • 30回/分を超える → 脳が酸素不足を感じている状態

  • 40回/分を超える → 危険な状態、すぐに受診を

愛犬がリラックス🛒して寝ているときに、お腹の上下動を1分間数えてみてください。定期的にチェックすることで、異常に早く気づくことができます。

4. 寝ている時間が増えた

心臓が十分に機能していないと、体は疲れやすくなり、休息を必要とします。

以前よりも寝ている時間が長くなった、呼んでも反応が鈍い、遊びに誘っても乗り気でない——これらは単なる老化ではなく、心臓病のサインかもしれません。

ただし、犬の睡眠時間は年齢とともに自然に増加するため、「急激に」増えたかどうかがポイントです。日頃から愛犬の行動パターンを把握しておくことが大切です。

5. 食欲の変化・ごはんの選り好み

心臓病が進行すると、食欲が低下することがあります。

興味深いのは、食欲低下は「ごはんの選り好み」から始まることが多いという点です。「最近、好き嫌いが激しくなった」と感じたら、注意が必要です。

また、食欲低下に伴い体重が減少することもあります。逆に、腹水がたまることで体重が増加するケースもあるため、体重の急激な変化には注意しましょう。

6. 失神・ふらつき

心臓の機能が低下すると、脳に十分な酸素を送れなくなることがあります。その結果、一時的に意識を失ったり(失神)、ふらついたりすることがあります。

失神は数秒〜数分で回復することが多いですが、一度でも起きたら必ず獣医師に相談してください。不整脈が原因の場合、突然死のリスクもあります。

7. お腹の膨らみ(腹水)

心臓病が進行すると、血液の循環が悪くなり、お腹や胸に水がたまることがあります(腹水・胸水)。

お腹が膨らんできた、触ると波打つような感触がある場合は、早急に受診が必要です。これは心臓病がかなり進行しているサインです。

自宅でできる心臓病チェック法

ごとふ動物病院が推奨する「心臓病6つのチェック」を参考に、飼い主さんが自宅で実践できる健康チェック法をご紹介します。

呼吸数の測り方

  1. 愛犬がリラックスして横になっているときを選ぶ

  2. お腹の上下動を観察する

  3. 1分間カウントする(または30秒カウントして2倍)

判定基準:

  • 20回以下(大型犬15回以下):正常

  • 25〜30回:やや注意

  • 30回以上:要注意、獣医師に相談を

  • 40回以上:緊急、すぐに受診を

週に1〜2回チェックし、記録をつけておくと変化に気づきやすくなります。

心拍数の確認方法

  1. 愛犬を横に寝かせる、または立たせる

  2. 左胸(肘のすぐ後ろあたり)に手を当てる

  3. 心臓の拍動を1分間カウントする

正常な安静時心拍数:

  • 小型犬:60〜80回/分

  • 大型犬:40〜50回/分

心拍が速すぎる、遅すぎる、リズムが不規則な場合は、心臓に問題がある可能性があります。

また、聴診器を使えば、「ドッキン、ドッキン」という正常な音に加えて、「ザーッ」「シャーッ」という異常な音(心雑音)が聞こえることがあります。

歯茎の色をチェック

歯茎の色は、血液の循環状態を反映しています。

チェック方法:

  1. 愛犬の唇をめくって歯茎を見る

  2. 指で軽く押して離す

  3. 色が戻る時間を確認する

判定基準:

  • ピンク色で、押して離すと1〜2秒で色が戻る:正常

  • 白っぽい、青っぽい(チアノーゼ):酸素不足の可能性

  • 色が戻るのに3秒以上:血液循環が悪い可能性

日常の変化を記録する

日頃から以下の項目を記録しておくと、獣医師への相談時に役立ちます:

  • 散歩の距離と時間

  • 咳の頻度と時間帯

  • 食欲の変化

  • 呼吸数(週1〜2回)

  • 体重(月1回)

  • 気になる行動の変化

スマートフォンのメモアプリや専用の健康管理アプリを活用すると便利です。定期的な犬の健康診断と合わせて、愛犬の健康状態を把握しましょう。

心臓病になりやすい犬種と年齢

心臓病は特定の犬種や年齢で発症リスクが高くなります。愛犬が該当する場合は、より注意深く観察することが大切です。

僧帽弁閉鎖不全症になりやすい犬種

小型犬に多く、特に以下の犬種は注意が必要です:

犬種リスク
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル非常に高い(遺伝的素因あり)
マルチーズ高い
シーズー高い
ポメラニアン高い
チワワ高い
ヨークシャーテリア高い
トイプードルやや高い
ミニチュアダックスフンドやや高い

発症年齢は6歳以降が多いですが、キャバリアでは若齢から発症することもあります。

拡張型心筋症になりやすい犬種

アニコムの調査によると、大型犬に多く見られます:

犬種特徴
ドーベルマン最も多い、突然死のリスクも高い
グレート・デン非常に高い
ボクサー高い、不整脈を伴うことが多い
アイリッシュ・ウルフハウンド高い
ニューファンドランド高い
ゴールデン・レトリバーやや高い
コッカー・スパニエルやや高い(栄養性の場合も)

発症年齢は3〜7歳が多いですが、1歳未満で発症するケースもあります。また、オスはメスの約2倍発症しやすいとされています。

心臓病の予防と日常ケア

心臓病の発症自体を完全に予防することは難しいですが、日常のケアによってリスクを下げ、早期発見につなげることができます。

定期的な健康診断を受ける

早期発見の最も確実な方法は、定期的な健康診断です。

心臓病の多くは、初期段階で心雑音として発見されます。心雑音は聴診器を使えばすぐにわかるため、予防接種や定期検診の際に必ず聴診を受けましょう。

推奨される健康診断の頻度:

  • 若齢〜5歳:年1回

  • 6歳以上:年2回

  • 心臓病のリスクが高い犬種:年2回以上

2018年のEPIC試験では、症状が出る前から治療を開始することで、心不全の発症を遅らせられることが実証されました。早期発見・早期治療が愛犬の寿命を大きく変える可能性があります。

詳しくは年に何回必要?犬の健康診断と検査内容をご覧ください。

体重管理で心臓の負担を減らす

肥満は心臓に大きな負担をかけます。体重が増えると、その分多くの血液を循環させる必要があり、心臓の仕事量が増加します。

適正体重を維持するために:

  • 定期的に体重を測定する

  • フード🛒の量を適切に管理する

  • おやつのカロリーも計算に入れる

  • 年齢に応じたフードに切り替える

愛犬の適正体重がわからない場合は、獣医師に相談しましょう。

心臓に良い食事のポイント

心臓病の予防・管理には、適切な栄養摂取が重要です。

塩分制限 塩分の取りすぎは水分を体に溜め込み、血液量が増加して心臓に負担がかかります。人間の食べ物を与えることは避け、犬用フード🛒を選びましょう。

タウリン・L-カルニチン 心臓の機能をサポートする重要な栄養素です。タウリンは心筋の収縮を助け、L-カルニチンは脂肪をエネルギーに変換します。特に拡張型心筋症では、これらの栄養素の不足が関係していることがあります。

タウリンを多く含む食材: 貝類(牡蠣、ホタテ、あさり)、青魚、鶏ハツ L-カルニチンを多く含む食材: ラム肉、牛肉

DHA・EPA(オメガ3脂肪酸) 心臓病の犬は血中のDHA・EPA濃度が低いことが報告されています。サバ、マグロ、ブリなどの青魚に多く含まれています。

心臓病と診断された場合は、獣医師と相談の上、療法食への切り替えを検討しましょう。

適度な運動を続ける

過度な運動は心臓に負担をかけますが、適度な運動は血液循環を促進し、心臓の健康維持に役立ちます。

心臓に良い運動の目安:

  • 軽い散歩を毎日続ける

  • 息が上がりすぎない程度に

  • 暑い時間帯は避ける

  • 愛犬のペースに合わせる

避けるべき運動:

  • ドッグランでの激しい走り

  • 興奮しすぎる遊び

  • 長時間の激しい運動

心臓病と診断されている場合は、獣医師と相談して適切な運動量を決めましょう。

心臓病と診断されたら

愛犬が心臓病と診断されても、適切な治療と管理によって、質の高い生活を長く維持することができます。

ステージ分類と治療方針

米国獣医内科学会(ACVIM)は、僧帽弁閉鎖不全症を以下のステージに分類しています:

ステージ状態治療方針
Aリスクはあるが病気なし定期検診、予防
B1心雑音あり、心拡大なし経過観察、食事管理
B2心雑音あり、心拡大あり投薬開始(ピモベンダンなど)
C心不全症状あり(現在または過去)積極的な投薬治療
D標準治療に反応しない末期緩和ケア、QOL維持

ステージB2以降では、投薬治療が推奨されます。早期に治療を開始することで、心不全への進行を遅らせることができます。

薬物療法について

心臓病の治療には、主に以下の薬が使用されます:

ピモベンダン(強心剤) 心臓の収縮力を高め、血管を拡張させます。僧帽弁閉鎖不全症のステージB2以降で使用されることが多いです。

血管拡張薬(ベナゼプリルなど) 血管を広げて心臓の負担を軽減します。

利尿剤(フロセミド、トラセミドなど) 体内の余分な水分を排出し、肺水腫などを改善します。

これらの薬は生涯にわたって続ける必要があります。勝手に中断すると症状が悪化する可能性があるため、必ず獣医師の指示に従いましょう。

日常生活での注意点

心臓病の愛犬と暮らす上で、以下の点に気をつけましょう:

興奮を避ける 激しく吠える、興奮して走り回るなどは心臓に負担をかけます。来客時など、興奮しやすい場面では落ち着かせる工夫を。

涼しい環境を保つ 暑さは心臓に大きな負担をかけます。夏場はエアコンを使用し、涼しい環境を維持しましょう。

ストレスを減らす ストレスは心臓に悪影響を与えます。愛犬がリラックス🛒できる環境を整えましょう。

定期的な通院 状態の変化を早期に把握するため、獣医師の指示に従って定期的に通院しましょう。

愛犬の健康を守る病気予防と早期発見の観点から、日頃の観察と定期検診を欠かさないことが大切です。

まとめ:愛犬の心臓を守るために今日からできること

犬の心臓病は、早期発見・早期治療によって、愛犬との幸せな時間を大きく延ばすことができます。

見逃しやすい7つの初期サインをもう一度確認しましょう:

  1. ✅ 疲れやすくなった・散歩を嫌がる

  2. ✅ 夜間や横になったときの咳

  3. ✅ 呼吸が荒い・速い

  4. ✅ 寝ている時間が増えた

  5. ✅ 食欲の変化・ごはんの選り好み

  6. ✅ 失神・ふらつき

  7. ✅ お腹の膨らみ(腹水)

今日からできることは:

  • 週に1〜2回、安静時の呼吸数をチェックする

  • 愛犬の行動や食欲の変化を記録する

  • 適正体重を維持する

  • 6歳以上なら年2回の健康診断を受ける

  • 心臓病のリスクが高い犬種なら、より早めに検診を

愛犬は言葉で不調を伝えることができません。だからこそ、飼い主である私たちが日頃から愛犬の様子をよく観察し、小さな変化に気づいてあげることが大切です。

気になる症状があれば、「様子を見よう」ではなく、早めに獣医師に相談しましょう。その一歩が、愛犬の命を守ることにつながります。

愛犬の健康を守る病気予防と早期発見について、さらに詳しく学んで、愛犬との幸せな毎日を長く続けていきましょう。

関連記事