愛犬がシニア期を迎えると、若い頃と同じ食事では体に負担がかかることがあります。老犬の食事管理は、単にカロリーを減らすだけではなく、加齢に伴う体の変化に合わせた栄養バランスの見直しが重要です。
この記事では、シニア犬🛒に必要な栄養素の変化、適切な食事量の計算方法、食欲が落ちたときの対処法まで、獣医師の知見と最新の研究データに基づいて詳しく解説します。愛犬の健康寿命を延ばすための食事管理のポイントを一緒に学んでいきましょう。
シニア期の犬との暮らし全般については、シニア犬との暮らし:老犬の幸せな余生で詳しくご紹介しています。
老犬はいつから?シニア期の食事管理が重要な理由
シニア期の定義:7歳からが転換点

犬は一般的に7歳前後から老化が始まるとされています。見た目にはあまり変化がなくても、体の内部では徐々に変化が起こっています。池田動物病院の解説によると、シニア期は大きく2つの段階に分けられます。
| 年齢 | ステージ | 特徴 |
|---|---|---|
| 7歳〜10歳 | シニア期(第一段階) | 代謝低下開始、太りやすくなる |
| 11歳以上 | ハイシニア期(第二段階) | 消化機能低下、痩せやすくなる |
小型犬では6〜7歳、中・大型犬では5〜7歳頃からシニア期に入り、基礎代謝が落ちて太りやすくなる傾向があります。さらに、小型犬で11歳、中・大型犬で8歳頃からは老齢期となり、むしろ体重が減少しやすくなります。
愛犬がシニア期に入ったかどうかの見極め方については、うちの子はシニア?犬の年齢換算と老化のサインも参考にしてください。

なぜ食事管理が重要なのか
シニア犬の体には以下のような変化が起こります:
代謝エネルギー要求量が約25%減少
消化吸収能力の低下
筋肉量の減少(サルコペニア)
内臓機能の衰え
VCA Animal Hospitalsの研究によると、シニア犬🛒は時間とともに約10%の筋肉量を失い、同時に体脂肪が約10%増加します。この変化は外見からは分かりにくく、筋肉の減少が脂肪の増加に隠されてしまうことがあります。
適切な食事管理を行わないと、肥満や関節への負担増加、内臓疾患のリスクが高まります。逆に、年齢に合った食事を与えることで、愛犬の健康寿命を延ばすことができるのです。
シニア犬に必要な栄養素とバランスの変化
タンパク質:筋肉維持のために増量が必要
多くの飼い主さんが誤解しているのが、「老犬にはタンパク質を控えた方がいい」という考えです。実は、健康なシニア犬🛒にはむしろタンパク質を増やす必要があります。
National Academiesの犬の栄養ガイドによると、高齢犬は筋肉量を維持するために、成犬に比べて約50%増のタンパク質が必要とされています。
シニア犬のタンパク質摂取目安:
| 項目 | 推奨値 |
|---|---|
| ドライフードでのタンパク質含有量 | 28〜32%(乾物基準) |
| 体重1kgあたりの目安 | 2.55g以上(成犬)→ 3.8g程度(シニア犬) |
| カロリーに対する割合 | 最低25%以上 |
重要なのは動物性タンパク質を優先することです。ドッグフードを選ぶ際は、原材料の最初に「鶏肉」「牛肉」「魚」などの肉類が記載されているものを選びましょう。
ただし、腎臓疾患がある場合は獣医師の指示に従う必要があります。腎臓に問題がない限り、タンパク質を制限することはむしろ筋肉量の低下を招き、逆効果になる可能性があります。
脂質:適度に制限しながらオメガ3を重視
シニア犬は活動量が低下するため、脂質の摂りすぎは肥満につながります。しかし、すべての脂質を減らせばいいわけではありません。
脂質管理のポイント:
タンパク質:脂質 = 2:1 の比率が理想的
低脂質フード🛒の目安は 12%以下
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA) は積極的に摂取
PETOKOTO(獣医師監修)によると、オメガ3脂肪酸は関節の健康維持や認知機能のサポートに効果が期待できます。魚油やサーモンオイルが含まれているフードを選ぶか、サプリメントで補給することを検討してください。
関節サポート成分:グルコサミン・コンドロイチン
シニア犬に多い悩みが関節のトラブルです。キュティア老犬クリニックによると、グルコサミンとコンドロイチンは以下の効果が期待できます:
軟骨の弾力性と保水性を維持
関節の滑らかな動きをサポート
加齢による軟骨の減少を緩和
これらの成分は体内で合成されますが、加齢とともに生産量が消費に追いつかなくなります。グルコサミンとコンドロイチンは相乗効果があるため、両方を含むサプリメント🛒やフードがおすすめです。
関節ケアについてさらに詳しく知りたい方は、関節が痛い…シニア犬の関節ケアとサプリをご覧ください。
その他の重要な栄養素
| 栄養素 | 効果 | 含まれる食品 |
|---|---|---|
| 抗酸化成分(ポリフェノール、ルテイン、コエンザイムQ10) | 老化の進行を緩和 | ブルーベリー、ほうれん草 |
| プロバイオティクス・プレバイオティクス | 腸内環境を整える | 発酵食品、食物繊維 |
| βグルカン | 免疫力維持 | きのこ類、オーツ麦 |
| ビタミンE | 細胞の酸化を防ぐ | ナッツ類、植物油 |
シニア犬の1日の食事量とカロリー計算方法
基礎代謝の計算:RERとDER
愛犬に必要なカロリーは、科学的な計算式で求めることができます。池田動物病院の解説に基づいて、計算方法をご紹介します。
ステップ🛒1:安静時エネルギー要求量(RER)を計算
``` RER(kcal)= 70 ×(適正体重kg)^0.75 ```
ステップ2:1日のエネルギー要求量(DER)を計算
``` DER(kcal)= RER × 活動係数 ```
シニア犬の活動係数は 1.1〜1.4 が目安です。
| 状態 | 活動係数 |
|---|---|
| 高齢で活動量が少ない | 1.1〜1.2 |
| 一般的なシニア犬 | 1.2〜1.4 |
| 避妊・去勢済み | やや低め(1.2程度) |
計算例:体重5kgの避妊済みシニア犬の場合
RER = 70 × 5^0.75 = 70 × 3.34 ≒ 234kcal
DER = 234 × 1.2 ≒ 281kcal/日
体重別・年齢別の食事量早見表
ココグルメ(獣医師監修)のデータを参考に、体重別の目安をまとめました。
| 体重 | 成犬の1日必要カロリー | シニア犬の目安(7-8割) |
|---|---|---|
| 3kg | 約200kcal | 約140-160kcal |
| 5kg | 約300kcal | 約210-240kcal |
| 10kg | 約500kcal | 約350-400kcal |
| 15kg | 約670kcal | 約470-540kcal |
| 20kg | 約830kcal | 約580-660kcal |
フード🛒量の計算:
``` フード量(g)= DER × 100 ÷ フードの100gあたりのカロリー ```
例えば、体重5kgのシニア犬(DER=280kcal)に321kcal/100gのフードを与える場合:
280 × 100 ÷ 321 ≒ 87g/日
朝晩2回に分けるなら、1回約44gが目安です。
おやつの注意点
おやつやトッピングを与える場合は、1日の必要カロリーの10〜20%以内に抑えましょう。おやつ分のカロリーは、主食から差し引く必要があります。
例:280kcalが必要な犬の場合
おやつ上限:28〜56kcal
主食:252〜224kcal
老犬の食事回数と与え方の工夫
理想的な食事回数:1日3-4回
GREEN DOGの解説によると、シニア犬の理想的な食事回数は以下の通りです:
| 年齢・状態 | 推奨食事回数 |
|---|---|
| 元気なシニア犬(7-10歳) | 1日2-3回 |
| 消化機能が衰えてきた犬 | 1日3-4回 |
| ハイシニア犬(11歳以上) | 1日4-5回 |
一度に大量の食事を消化するのは老犬の胃腸に負担がかかります。少量を頻回に与えることで、消化吸収を助け、胃腸への負担を軽減できます。
食べやすくする工夫
ユニ・チャームの家庭で実践できる老犬の食事の工夫を参考に、食べやすくするためのポイントをまとめました。
1. フードを温める・ふやかす
ドライフードをぬるま湯でふやかすと、以下のメリットがあります:
香りが立って食欲を刺激
水分補給ができる
噛む力が弱くても食べやすい
電子レンジで軽く温めたり、フライパンで炒めると香りがさらにアップします。
2. 食器の高さを調整する
老犬は首を下げる姿勢が負担になります。食器台を使って、愛犬が首をあまり下げなくても食べられる高さに調整してあげましょう。目安は、口の高さに食器の底が来る程度です。
3. ウェットフード🛒への切り替え
歯が弱くなったり、噛む力が衰えてきた場合は、ドライフードからウェットフード🛒や半生タイプへの切り替えを検討しましょう。水分も一緒に摂取でき、消化にも優しくなります。
4. トッピングで食欲アップ
以下のようなトッピングで食欲を刺激できます:
かつおぶし
茹でたささみ
犬用スープ
鶏肉のだし汁
老犬の食欲不振:原因と対処法
食べない原因を見極める
シニア犬がご飯を食べなくなる原因は様々です。PETOKOTO(獣医師監修)によると、主な原因は以下の5つです:
| 原因 | 詳細 |
|---|---|
| 代謝の低下 | 必要カロリーが減り、自然と食欲も低下 |
| 味覚・嗅覚の衰え | においや味を感じにくくなる |
| 口腔内トラブル | 歯周病、歯の欠損、口内炎など |
| 姿勢維持の困難 | 足腰の衰えで立って食べるのがつらい |
| 病気の可能性 | 腎臓病、心臓病、がんなど |
特に注意すべきは病気の可能性です。介護施設のデータでは、食欲不振で相談に来た犬の約3分の1に、病気を含む大きな異常が見つかったそうです。2〜3日以上食べない場合は、必ずかかりつけの動物病院🛒を受診してください。
口腔トラブルが疑われる場合は、シニア犬の歯と口腔ケア:今からでも遅くないも参考にしてください。
食欲を取り戻す9つの方法
ユニ・チャームの解説とキュティア老犬クリニックの情報を参考に、食欲を取り戻すための方法をご紹介します。
フードを温める
- 電子レンジや湯煎で人肌程度に温める - 香りが立ち、嗅覚を刺激する
鶏肉のだし汁やスープをかける
- 市販の犬用スープでもOK - においで食欲を刺激
甘いものを活用
- 老犬は甘みを感じやすい傾向 - さつまいも、バナナ、りんごなど
トッピングを加える
- かつおぶし、チーズ、ジャーキー🛒 - 少量でも香りで食欲アップ
フードの食感を変える
- ふやかす、ミキサーにかける、とろみをつける - 噛む力が弱くても食べやすく
食器🛒を変える
- 浅い皿、傾斜付きの皿など - 食べやすさが改善することも
食事の場所や環境を変える
- 静かで落ち着ける場所 - 他のペットと離して
手から与える
- スキンシップで安心感 - 食べることへの意欲を引き出す
知育トイやノーズワークで遊びを取り入れる
- 食べ物を入れて遊びながら食べる - 食への興味を取り戻すきっかけに
注意: 無理やり食べさせると、下痢や嘔吐、食事自体が嫌いになる可能性があります。愛犬のペースに合わせてあげてください。
シニア犬におすすめのフード選び
「シニア用総合栄養食」を選ぶ
GREEN DOGによると、シニア犬のフード選びで最も重要なのは「シニア用総合栄養食」と表記されたものを選ぶことです。
| 表記 | 意味 |
|---|---|
| 総合栄養食 | 水と一緒に与えれば必要な栄養がすべて摂れる |
| 一般食・副食 | おかずのようなもの。主食には不向き |
| 間食 | おやつ。主食にはならない |
「一般食」や「副食」と書かれたものは、主食として与えると栄養が偏ってしまいます。必ず「総合栄養食」を選びましょう。
チェックすべき成分表示
シニア犬用フード🛒を選ぶ際のチェックポイント:
1. 第一原材料が肉類
鶏肉、牛肉、ラム、魚など
「ミール」より「生肉」表記がベター
2. タンパク質28%以上(乾物基準)
筋肉維持に必要な量を確保
3. 脂質12%以下
肥満予防のため控えめに
4. カロリー350kcal/100g以下
低カロリーで体重管理しやすい
5. 含まれていると嬉しい成分
グルコサミン・コンドロイチン(関節サポート)
オメガ3脂肪酸(抗酸化作用)
プロバイオティクス(腸内環境)
抗酸化成分(ポリフェノール、ルテインなど)
まとめ:老犬の食事管理で健康寿命を延ばす
老犬の食事管理は、愛犬の健康寿命を延ばすための最も基本的で重要な取り組みです。ポイントをおさらいしましょう:
食事管理の5つの基本
7歳からの早めの対策
- 見た目に変化がなくても体の中では老化が始まっている - シニア用フード🛒への切り替えを検討
高タンパク・低脂質・低カロリー
- タンパク質は成犬より増やす(28-32%) - 脂質は控えめに(12%以下) - 全体カロリーは成犬の7-8割
少量頻回で消化をサポート
- 1日3-4回に分けて与える - 胃腸への負担を軽減
食べやすくする工夫
- ふやかし、温め、トッピング - 食器🛒の高さ調整
定期的な体重チェックと獣医師への相談
- 月1回の体重測定 - 異常があれば早めに受診
シニア犬の健康管理について、シニア犬の健康診断:年に何回?何を検査?もぜひご覧ください。
愛犬がいつまでも元気で長生きできるよう、今日からできることを始めていきましょう。食事管理は毎日の小さな積み重ねですが、その効果は愛犬の生活の質に大きく影響します。分からないことがあれば、かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。





