愛犬の健康を守り、健全な子犬を世に送り出すために🛒、遺伝性疾患の理解と適切な検査は不可欠です。責任あるブリーディングにおいて、遺伝病検査は最も重要な要素の一つです。本記事では、犬の繁殖と避妊・去勢の正しい知識の一環として、遺伝性疾患の種類、検査方法、そして検査結果を繁殖にどう活かすかについて詳しく解説します。
犬の遺伝性疾患とは
遺伝性疾患とは、親から子へと遺伝子を通じて受け継がれる病気のことです。ジャパンケネルクラブ(JKC)の指針によると、獣医学の進歩により、犬の遺伝病は約700種類が確認されており、そのうち200種類以上で原因となる遺伝子変異が特定されています。

遺伝性疾患の特徴
主な特徴:
生まれつき持っている遺伝子が原因
治療法がない、または対症療法のみ
特定の犬種に多く見られる傾向
親犬が発症していなくても子犬に現れることがある
繁殖計画により発症を防ぐことが可能
主な遺伝性疾患と好発犬種

遺伝性疾患と好発犬種について、アニコム損保の解説を参考に、代表的な疾患を紹介します。
骨格・関節の疾患
| 疾患名 | 主な症状 | 好発犬種 |
|---|---|---|
| 股関節形成不全 | 歩行異常、痛み、運動不耐性 | ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、ジャーマン・シェパード、バーニーズ・マウンテン・ドッグ |
| 肘関節形成不全 | 前肢の跛行、肘の腫れ | ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、ロットワイラー |
| 膝蓋骨脱臼 | 後肢のスキップ歩行 | チワワ、ポメラニアン、トイ・プードル、ヨークシャー・テリア |
| レッグ・ペルテス病 | 後肢の跛行、筋肉の萎縮 | トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・ピンシャー |
股関節形成不全の詳細によると、遺伝的要因が大きく関与しており、特に大型犬種では繁殖前の検査が推奨されています。
眼科疾患
| 疾患名 | 主な症状 | 好発犬種 |
|---|---|---|
| 進行性網膜萎縮症(PRA) | 夜盲、視野狭窄、失明 | ミニチュア・ダックスフンド、トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、アメリカン・コッカー・スパニエル |
| 白内障 | 水晶体の混濁、視力低下 | トイ・プードル、ミニチュア・シュナウザー、ボストン・テリア |
| コリー・アイ(コリー眼異常) | 視力障害、網膜剥離 | コリー、シェットランド・シープドッグ、ボーダー・コリー |
心臓・循環器疾患
| 疾患名 | 主な症状 | 好発犬種 |
|---|---|---|
| 僧帽弁閉鎖不全症 | 咳、運動不耐性、呼吸困難 | キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、マルチーズ、チワワ |
| 拡張型心筋症 | 疲れやすさ、失神、腹水 | ドーベルマン、グレート・デーン、ボクサー |
血液・免疫疾患
| 疾患名 | 主な症状 | 好発犬種 |
|---|---|---|
| フォン・ウィルブランド病 | 出血傾向、止血困難 | ドーベルマン、シェットランド・シープドッグ、ジャーマン・シェパード |
| 血友病A | 出血、関節内出血 | ジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリバー |
神経系疾患
| 疾患名 | 主な症状 | 好発犬種 |
|---|---|---|
| 変性性脊髄症(DM) | 後肢の麻痺、運動失調 | ジャーマン・シェパード、ウェルシュ・コーギー、ボクサー |
| てんかん | 発作、けいれん | ビーグル、ラブラドール・レトリバー、ジャーマン・シェパード |
その他の重要な疾患
| 疾患名 | 主な症状 | 好発犬種 |
|---|---|---|
| 停留精巣 | 陰嚢に精巣が降りない | トイ犬種全般、特にポメラニアン、チワワ |
| 多発性嚢胞腎 | 腎機能低下、多飲多尿 | ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア |
遺伝の仕組み:優性と劣性
遺伝性疾患を理解するには、基本的な遺伝の仕組みを知る必要があります。
優性遺伝と劣性遺伝
| 遺伝形式 | 発症条件 | 特徴 |
|---|---|---|
| 優性遺伝 | 異常な遺伝子が1つでもあれば発症 | 発症リスクが高い |
| 劣性遺伝 | 異常な遺伝子が2つ揃って初めて発症 | キャリアは発症しない |
| 伴性遺伝 | X染色体上の遺伝子による | 主にオスが発症 |
| 多因子遺伝 | 複数の遺伝子+環境要因 | 予測が難しい |
劣性遺伝の例:進行性網膜萎縮症(PRA)
両親がキャリアの場合、子犬の25%が発症
片親がクリア、片親がキャリアの場合、子犬は発症しない
優性遺伝の例:フォン・ウィルブランド病(一部の型)
片親が保因者なら、子犬の50%が保因者になる
遺伝子検査の種類と方法
DNA検査
VEQTA(ベクタ)などの専門機関で実施されます。
検査対象:
進行性網膜萎縮症(PRA)
フォン・ウィルブランド🛒病
変性性脊髄症(DM)
コリー・アイ
その他200種類以上の遺伝病
検査方法:
口腔粘膜から綿棒でDNAサンプル採取
検査機関に送付
2〜4週間で結果が届く
費用:
1項目あたり:5,000円〜15,000円程度
パネル検査(複数項目):20,000円〜50,000円程度
X線検査・画像検査
DNA検査では検出できない疾患に必要です。
検査対象:
股関節形成不全(HD)
肘関節形成不全(ED)
膝蓋骨脱臼
評価機関:
OFA(Orthopedic Foundation for Animals)- アメリカ
PennHIP - アメリカ
JKC - 日本(一部の犬種)
心臓超音波検査
検査対象:
僧帽弁閉鎖不全症
拡張型心筋症
その他の先天性心疾患
眼科検査
検査対象:
白内障
網膜の異常
その他の眼科疾患
検査結果の読み方:クリア・キャリア・アフェクテッド
検査結果の解釈について、みんなのブリーダーの解説が参考になります。
3つの判定結果
| 判定 | 意味 | 遺伝子型 | 発症リスク |
|---|---|---|---|
| クリア(Clear) | 異常な遺伝子を持っていない | 正常/正常 | 発症しない |
| キャリア(Carrier) | 異常な遺伝子を1つ持っている | 正常/異常 | 発症しない(劣性の場合) |
| アフェクテッド(Affected) | 異常な遺伝子を2つ持っている | 異常/異常 | 発症する可能性が高い |
重要なポイント:
劣性遺伝の場合、キャリアは健康で発症しない
JKCは「キャリアを排除することは動物倫理に反する」と表明
キャリアもペット🛒として飼育に何ら問題なし
繁殖における遺伝子検査結果の活用
交配の組み合わせとリスク
劣性遺伝病の場合:
| 親A | 親B | 子犬の割合 |
|---|---|---|
| クリア | クリア | 100% クリア |
| クリア | キャリア | 50% クリア、50% キャリア |
| クリア | アフェクテッド | 100% キャリア |
| キャリア | キャリア | 25% クリア、50% キャリア、25% アフェクテッド ⚠️ |
| キャリア | アフェクテッド | 50% キャリア、50% アフェクテッド ❌ |
| アフェクテッド | アフェクテッド | 100% アフェクテッド ❌ |
推奨される交配:
✅ クリア × クリア:最も理想的
✅ クリア × キャリア:アフェクテッドは生まれない
⚠️ キャリア × キャリア:25%の確率でアフェクテッド(避けるべき)
❌ アフェクテッド × 任意:繁殖に使用すべきでない
遺伝的多様性とのバランス
JKCの見解によると、キャリアを繁殖から完全に排除すると、犬種の遺伝的多様性が失われ、他の健康問題や免疫力の低下を招く可能性があります。
適切なアプローチ:
すべての繁殖犬を検査する
クリアな犬を優先的に繁殖に使う
キャリアを使う場合は、必ずクリアと交配
アフェクテッドは繁殖に使用しない
世代を重ねてクリアの割合を増やす
検査の限界と注意点
DNA検査で検出できない疾患
以下の疾患は、複数の遺伝子と環境要因が組み合わさって発症するため、DNA検査では検出できません。
多因子性疾患:
股関節形成不全
肘関節形成不全
膝蓋骨脱臼
心臓病の一部
これらはX線検査や超音波検査が必要です。
検査結果の解釈における注意
検査の精度:
検査機関や方法により精度が異なる
偽陽性・偽陰性の可能性がゼロではない
新しい変異が発見されることもある
環境要因の影響:
遺伝的素因があっても、栄養管理や運動制限で予防できる疾患もある
逆に、遺伝的にクリアでも環境要因で発症することもある
日本における遺伝子検査サービス
主な検査機関
VEQTA(ベクタ)
日本の企業
神経、眼科、泌尿器、血液など多数の疾患に対応
犬種別パネル検査も提供
Orivet Japan(オリベット)
オーストラリア発の企業
360種類以上の遺伝病・特性検査
犬種鑑定や親子判定も可能
その他:
海外検査機関への委託(OFA、Embark等)
大学病院の研究プロジェクト
検査を受けるタイミング
理想的なタイミング:
繁殖前:生後1歳以降、初回交配前
購入前(ブリーダーとして):繁殖犬導入時
子犬譲渡前:透明性のある販売のため
遺伝子検査の費用対効果
検査にかかるコスト
基本的な検査パッケージ🛒:
DNA検査(3〜5項目):20,000円〜30,000円
股関節X線検査:15,000円〜25,000円
心臓超音波検査:10,000円〜20,000円
合計:約45,000円〜75,000円
検査をしないことのリスク
健康面のコスト:
遺伝病の治療費:数十万円〜数百万円
QOL(生活の質)の低下
社会的コスト:
ブリーダーとしての信頼損失
返品・治療費補償のリスク
法的責任の問題
倫理的責任:
苦しむ犬を生み出す
飼い主の悲しみ
犬種の評判低下
実践的な遺伝病スクリーニング計画
ステップ1:犬種特有の疾患を調べる
自分が扱う犬種に多い遺伝病をリストアップします。
例:ゴールデン🛒・レトリバーの場合
股関節形成不全(HD)
肘関節形成不全(ED)
進行性網膜萎縮症(PRA)
心臓病
がん(遺伝的素因)
ステップ2:優先順位をつける
優先度の高い検査:
発症率が高い疾患
QOLへの影響が大きい疾患
治療法がない疾患
DNA検査で確実に判定できる疾患
ステップ3:検査を実施
検査のスケジュール例:
生後6ヶ月:基本的な健康診断
生後12ヶ月:DNA検査
生後18ヶ月:股関節・肘関節X線検査
生後24ヶ月:心臓超音波検査
ステップ4:記録と管理
記録すべき情報:
検査日時と検査機関
検査結果(証明書の保管)
家系図への記入
データベースへの登録(任意)
ステップ5:繁殖計画への反映
検査結果に基づき、適切な交配相手を選択します。
よくある質問(FAQ)
すべての犬種で遺伝子検査が必要ですか?
必須ではありませんが、強く推奨されます。特に以下の場合は重要です:
繁殖に使用する犬
遺伝病の多い犬種
計画的な繁殖を行う場合
キャリアと判定された犬は繁殖に使えませんか?
使えます。JKCも「キャリアを排除することは動物倫理に反する」としています。ただし、クリアの犬とのみ交配するべきです。
両親が健康なら検査は不要ですか?
いいえ。劣性遺伝の場合、両親が発症していなくてもキャリアの可能性があり、子犬が発症することがあります。
検査結果は100%正確ですか?
高い精度を持ちますが、100🛒%ではありません。また、新しい変異が今後発見される可能性もあります。
ペットとして飼うだけなら検査は不要ですか?
繁殖しない場合、法的義務はありません。ただし、将来の健康リスクを知ることで、予防的なケアや早期発見に役立ちます。
まとめ:健全な未来のために
遺伝子検査は、責任あるブリーディングの根幹をなす重要な要素です。
遺伝子検査の重要性:
遺伝病の発症を予防できる
犬種の健全性を維持できる
飼い主とブリーダー双方の安心につながる
犬の苦しみを減らせる
透明性のある繁殖活動ができる
検査を受ける際のポイント:
信頼できる検査機関を選ぶ
犬種特有の疾患を優先する
DNA検査だけでなく画像検査も実施
結果を正しく理解し、繁殖計画に反映する
キャリアを排除せず、適切に管理する
遺伝子検査により、健全な子犬の誕生と犬種の未来を守ることができます。すべてのブリーダーと飼い主が、遺伝病についての正しい知識を持ち、適切な行動を取ることで、犬たちのより良い未来を築いていきましょう。
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