愛犬が溺れてしまった時、正しい救助法と心肺蘇生法を知っているかどうかが、命を左右します。特に、CPRと人工呼吸の手順を間違えると、かえって状態を悪化させる危険があります。この記事では、溺れた犬の救助手順、肺の水抜き、人工呼吸とCPRの正しいやり方、そして二次溺水の危険性まで、獣医師の見解をもとに詳しく解説します。
溺水事故の現実:犬も溺れる
「犬は泳ぎが得意」というイメージがありますが、実際にはすべての犬が泳げるわけではありません。特に以下の犬種や状況では、溺水のリスクが高まります。

溺れやすい犬種・状況
短頭種(パグ、フレンチブルドッグ、ブルドッグ)- 呼吸効率が悪い
胴長短足犬種(ダックス🛒フンド、コーギー)- バランスを崩しやすい
小型犬・子犬 - 体力が続かない
高齢犬 - 筋力低下、関節炎
初めて水に入る犬 - パニックを起こす
PetMDの獣医師によれば、溺水事故は予想以上に短時間で発生します。犬が水に落ちてから意識を失うまで、わずか数分のこともあります。
水からの救出:安全第一で

溺れた犬を発見したら、まず自分の安全を確保することが最優先です。How Stuff Worksの応急処置ガイドでは、以下の手順が推奨されています。
安全な救出手順
状況判断 - 自分が泳げるか、流れは強いか、深さは
救助道具の使用 - 棒、浮き輪、ロープなどを使う
水に入る前に - 靴と重い衣服を脱ぐ
救助方法 - 犬の首輪やハーネス🛒を掴む
陸へ運ぶ - 犬が暴れても冷静に対処
重要なのは、「二次災害を防ぐ」ことです。溺れている犬はパニック状態で、飼い主にしがみつこうとして両者とも溺れる危険があります。可能であれば、水に入らずに救助する方法を優先しましょう。
肺の水抜き:サイズ別の方法
水から救出したら、すぐに肺に入った水を排出させる必要があります。子犬のへやの獣医師監修記事では、犬のサイズに応じた水抜き方法が紹介されています。
小型犬(10kg🛒未満)の水抜き
後ろ足を両手でしっかり掴む
頭を下にして逆さに持ち上げる
15-20秒間その姿勢を保つ
上下に3-4回振る(激しすぎないように)
口から水が出てくるのを確認
中型犬・大型犬の水抜き
犬を横向きに寝かせる
頭が低く、お尻が高くなるよう傾斜をつける
背中を軽く叩く
腹部を優しく押して水を排出
ワンクォールの獣医師は、「水抜きは重要だが、時間をかけすぎない」ことを強調しています。30秒以上水抜きに時間をかけるよりも、早くCPRや人工呼吸に移行する方が命を救う可能性が高まります。
CPRと人工呼吸:どちらを行うべきか
救出後、まず確認すべきは「心拍があるか」と「呼吸しているか」です。AKCの獣医専門家によれば、状況に応じて適切な処置が異なります。
| 心拍 | 呼吸 | 必要な処置 |
|---|---|---|
| あり | あり | 観察・保温・獣医師へ |
| あり | なし | 人工呼吸のみ |
| なし | なし | CPR(胸骨圧迫+人工呼吸) |
重要なポイントは、「心拍がある場合、胸骨圧迫は行わない」ということです。心臓が動いているのに胸骨圧迫を行うと、心臓の動きを妨げたり、不整脈を引き起こしたりする危険があります。
心拍と呼吸の確認方法
心拍:胸の左側(前足の肘を胸に当てた位置)に手を当てる
呼吸:胸の動きを見る、鼻先に手を当てて息を感じる
歯茎の色:ピンク色🛒なら循環あり、青白い・紫なら循環不全
人工呼吸の正しい方法
心拍はあるが呼吸がない場合、人工呼吸を行います。GSVSの獣医救急専門医による詳細な手順は以下の通りです。
人工呼吸の手順
気道確保
- 犬を横向きに寝かせる - 首をまっすぐ伸ばす - 舌を引き出す - 口と喉に異物がないか確認
マズルを閉じる
- 片手で犬の口を優しく閉じる - 空気が漏れないようにする
鼻から息を吹き込む
- 犬の鼻全体を自分の口で覆う - 3秒かけてゆっくり息を吹き込む - 胸が膨らむのを確認
呼吸のペース
- 1分間に10-20回(犬のサイズによる) - 小型犬:15-20回/分 - 大型犬:10-15回/分
人工呼吸の注意点
強く吹きすぎると胃に空気が入り、嘔吐や誤嚥のリスク
胸が軽く膨らむ程度の力加減
自分の息を吹き込んだ後、犬が自然に息を吐き出すのを待つ
CPRの正しい手順:30:2の法則
心拍も呼吸も止まっている場合、CPR(心肺蘇生)を行います。2024年🛒にアップデートされた犬猫の心肺蘇生ガイドラインに基づく最新の方法を解説します。
CPRの基本手順
体勢の確保
- 通常:犬を右側臥位(右側を下)に寝かせる - 樽状の胸の犬種(ブルドッグなど):仰向け
圧迫位置の確認
小型犬: - 片手で背中を支える - もう片方の手で胸を包み込む - 2本の親指を心臓の位置(肘を胸に当てた位置)に
中型犬・大型犬: - 前足の肘を後ろに引いて胸に当てる - その肘の位置のすぐ下が心臓 - 両手を重ねて圧迫
ブルドッグなど樽状の胸: - 仰向けに寝かせる - 胸骨の中央を圧迫
圧迫の方法
- 深さ:胸幅の1/3~1/2 - ペース:100-120回/分(1秒に約2回) - リズム:「いち、に、いち、に」と声に出す
圧迫と人工呼吸の組み合わせ🛒
- 胸骨圧迫30回 - 人工呼吸2回 - これを1セットとして繰り返す - 2分ごとに心拍と呼吸を確認
いのぼんイラスト制作所の獣医師監修記事では、「圧迫後は胸が完全に元の位置に戻るまで待つ」ことの重要性が強調されています。不完全な復位は血液循環の効率を下げます。
二次溺水の危険性:救助後も油断禁物
溺水事故で最も見落とされやすいのが「二次溺水(ドライドローニング)」です。Connecticut Veterinaryの獣医師によれば、救助後数時間~数日で命を落とすケースがあります。
二次溺水のメカニズム
肺に少量の水が残る
時間とともに肺の炎症が悪化
肺水腫や肺炎を発症
呼吸困難、最悪の場合は死亡
二次溺水の兆候(救助後3日以内)
呼吸が荒い、速い
咳が続く
歯茎が青白い、紫色
元気がない、ぐったりしている
食欲不振
嘔吐
これらの症状が見られたら、すぐに動物病院🛒を受診してください。二次溺水は救助直後は症状がなくても、6-72時間後に突然発症することがあります。
動物病院での治療:集中的な管理
動物病院では、溺水後の犬に対して以下のような治療が行われます。
1. 酸素療法
酸素濃度の高い環境で呼吸をサポート
酸素マスクまたは酸素室
2. 画像診断
レントゲン検査で肺の状態確認
肺炎や肺水腫の有無
3. 輸液療法
点滴で循環改善
脱水の改善
4. 薬物療法
抗生物質(肺炎予防)
利尿剤(肺水腫がある場合)
ステロイド(炎症軽減)
5. モニタリング
24-72時間の入院観察
呼吸、心拍、体温の継続的監視
UC Davis獣医学部の症例報告では、CPRで蘇生した犬の多くが、レントゲンで広範囲の肺の炎症と損傷を示しており、数日間の集中治療が必要だったとされています。
予防が最善の対策:溺水を防ぐ
溺水事故の多くは、適切な予防で避けることができます。
プールや池の安全対策
プールには階段やスロープを設置
監視なしでプールに近づけさせない
ライフジャケット🛒の着用
泳ぎの訓練をする
海や川での注意
流れの強い場所を避ける
リードを外さない
疲労のサインを見逃さない(息が荒い、動きが鈍い)
沖に流されないよう常に監視
家庭内のリスク
浴槽の水を抜いておく
洗濯機の蓋を閉める
バケツの水を放置しない
高リスク犬への配慮
短頭種は水遊びを最小限に
高齢犬は浅瀬のみ
ライフジャケットの常時着用
愛犬が溺れたら、まず自分の安全を確保しながら救出し、小型犬は逆さにして15-20秒振って肺の水を抜きます。心拍があれば人工呼吸のみ、心拍も呼吸もなければCPR(胸骨圧迫30回+人工呼吸2回)を実施します。救助後は必ず獣医師の診察を受け、二次溺水のリスクに備えましょう。脳への酸素供給が5分断たれると重大な後遺症のリスクがあるため、迅速な行動が命を救います。日頃から予防を心がけ、万が一の時には正しいCPRで愛犬を守りましょう。






