愛犬が突然倒れて、全身をガクガク震わせたり、足をピンと伸ばして硬直したりする。目は見開いたままで、よだれを垂らし、失禁してしまう…。このような光景を目の当たりにしたら、飼い主🛒としてパニックになるのは当然です。しかし、てんかん発作が起きた時こそ、冷静な対応が愛犬の命を守ります。
本記事では、犬のてんかん発作が起きた際の正しい対応方法と、絶対にやってはいけない行動について、獣医師監修のもと詳しく解説します。発作の種類、緊急搬送が必要なケース、そして発作後のケアまで、飼い主が知っておくべき全ての情報をお届けします。
てんかん発作とは?犬に起こる3つのタイプ
犬のてんかんは、脳の神経細胞が異常に興奮することで引き起こされるけいれん発作です。発作には大きく分けて3つのタイプがあり、それぞれ症状が異なります。

全般発作(大発作)
全身性の発作では、犬は意識を失い、突然バタッと倒れます。手足をピンと突っ張ったまま硬直し、その後ガクガク震えたり、犬かきをしているように手足が動いたりします。全般発作は最も一般的なてんかん発作のタイプで、多くの場合1〜3分程度で自然に治まります。
発作中は、よだれを大量に垂らし、おしっこやうんちを漏らすこともあります。目は見開いたままで、瞳孔が拡張していることが多く、呼びかけにも反応しません。
部分発作(焦点発作)

部分発作の場合、犬の意識はあることが多く、体の一部だけがけいれんを起こします。顔の筋肉がピクピク動いたり、片方の前足だけが震えたり、首を傾けたままになったりします。部分発作は全般発作よりも軽度に見えますが、放置すると全身性の発作に進展することもあります。
ミオクローヌス発作
筋肉が瞬間的にピクンと動く短時間の発作です。数秒間だけ体の一部が震えて、すぐに通常の状態に戻ります。見逃されやすい発作タイプですが、頻繁に起こる場合は注意が必要です。
発作の前兆を見逃さない!前駆期の行動変化
てんかん発作の前には、「前駆期」と呼ばれる予兆の時期があることがあります。この時期の変化に気づくことで、発作に備えることができます。
前駆期に見られる行動
落ち着きがなくなる:いつもと違ってソワソワし、部屋の中を意味なく歩き回る
飼い主に異常に寄り添う:普段より甘えたり、離れようとしなくなる
突然怒りっぽくなる:些細なことでイライラしたり、攻撃的になる
隠れようとする:暗い場所や狭い場所に潜り込もうとする
食欲不振:いつもなら喜ぶおやつ🛒にも興味を示さない
前駆期の症状は数分から数時間続くことがあります。この時期に気づいたら、愛犬の周囲から危険なものを片付け、柔らかいマット🛒の上など安全な場所に誘導しましょう。
発作が起きた!正しい対応の5ステップ
てんかん発作が起きたら、以下のステップに従って対応してください。
ステップ1:冷静になり、時間を測る
発作が始まったら、まず時計を見て時間を確認します。発作の持続時間は、その後の治療方針を決める重要な情報です。スマートフォンのタイマー機能を使うと便利です。
ステップ2:周囲の安全を確保する
犬の周りから、ぶつかると危険な家具、尖ったもの、落下しそうなものを遠ざけます。階段の近くにいる場合は、できれば平らな場所に移動させます(ただし、発作中に無理に動かすのは避けてください)。
テレビやラジオなど、音の出るものは消します。音の刺激が発作を長引かせる可能性があるためです。部屋を薄暗くして、静かな環境を作りましょう。
ステップ3:発作の様子を記録する
可能であれば、スマートフォンで発作の様子を動画撮影します。発作の種類、体のどの部分が動いているか、目の動きなどを記録することで、獣医師の診断に大いに役立ちます。
録画できない場合は、以下の情報をメモします:
発作が始まった時刻
発作の持続時間
発作のタイプ(全身性か部分的か)
失禁の有無
よだれの量
発作前後の様子
ステップ4:見守る(触らない)
発作中は犬の体に触れてはいけません。「大丈夫だよ」と声をかけたくなる気持ちはわかりますが、触ったり声をかけたりすると、かえって発作が長引く可能性があります。
犬は発作中、意識がないか混乱状態にあるため、飼い主🛒でも噛まれることがあります。特に口元には絶対に手を近づけないでください。
ステップ5:発作後のケア
発作が治まったら、犬は混乱していたり、疲れ切っていたりします。この時期を「発作後期」と呼び、数分から数時間続くことがあります。
静かな場所で休ませ、水は少量ずつ与えます。食事は完全に意識が戻ってから与えましょう。この時期、犬は一時的に視力を失っていたり、方向感覚がなかったりすることがあるので、注意深く見守ります。
絶対NG!発作時にやってはいけない5つの行動
1. 体を揺すったり押さえつけたりする
体を揺すったり押さえつけたりしても、発作は止まりません。むしろ刺激を加えることで発作が長引いたり、犬が怪我をしたりする危険があります。どんなに激しく動いていても、無理に押さえ込もうとしないでください。
2. 口に物を入れる
「舌を噛まないように」と口にタオル🛒や棒を入れる行為は、非常に危険です。犬は発作中に舌を噛み切ることはほとんどなく、口に物を入れることで窒息したり、歯が折れたり、飼い主が噛まれたりするリスクの方が高くなります。
3. 大声で呼びかける
「○○ちゃん!しっかりして!」と大声で呼びかけても、発作中の犬には届きません。音の刺激が発作を悪化させる可能性があるため、できるだけ静かに見守りましょう。
4. 水や食べ物を与える
発作中や直後は、飲み込む力が低下しています。水や食べ物を与えると、気道に入って誤嚥性肺炎を起こす危険があります。完全に意識が戻り、普通に立って歩けるようになるまで待ちましょう。
5. パニックになって騒ぐ
飼い主がパニックになると、その不安が犬に伝わります。深呼吸をして、できるだけ冷静に対応することが大切です。
今すぐ病院へ!緊急搬送が必要な3つのケース
以下のような状況では、一刻も早く動物病院に連絡し、緊急搬送する必要があります。
ケース1:重積発作(てんかん重積)
発作が5分以上続く場合、または意識が戻る前に次の発作が始まる状態を「重積発作」といいます。これは生命を脅かす緊急事態で、脳に深刻なダメージを与える可能性があります。
発作が5分を超えたら、すぐに動物病院🛒に電話してください。夜間や休日の場合は、夜間救急動物病院に連絡します。
ケース2:群発発作
24時間以内に2回以上の発作が起こることを「群発発作」といいます。特に、数時間の間に何度も発作を繰り返す場合は、重症と考えられ、緊急搬送が必要です。
1日に5〜10回以上の発作が起こる重篤な群発発作は、最悪の場合命に関わることもあります。
ケース3:初めての発作、または高齢犬の発作
生まれて初めて発作を起こした場合や、7歳以上の高齢犬が突然発作を起こした場合は、てんかん以外の病気(脳腫瘍、肝不全、腎不全、中毒など)の可能性があります。できるだけ早く獣医師の診察を受けましょう。
発作の記録が診断の鍵!記録すべき7項目
獣医師の診断と治療計画のために、以下の情報を記録しておくことが重要です。
| 記録項目 | 具体的な内容 | 重要度 |
|---|---|---|
| 発作の日時 | 年月日、時刻(午前/午後) | ★★★ |
| 持続時間 | 秒単位で正確に | ★★★ |
| 発作のタイプ | 全身性/部分的/ミオクローヌス | ★★★ |
| 発作前の様子 | 前駆期の行動変化 | ★★ |
| 発作中の様子 | 動画撮影、または詳細な記述 | ★★★ |
| 発作後の回復時間 | 意識が完全に戻るまでの時間 | ★★ |
| 誘因の可能性 | ストレス、環境変化、食事内容 | ★ |
この記録を「発作日記」としてつけることで、発作のパターンや誘因を特定しやすくなります。スマートフォンのアプリを使うと便利です。
てんかんの原因と治療について
特発性てんかん
犬のてんかんの約60〜70%は、原因が特定できない「特発性てんかん」です。遺伝的な要因が関与していると考えられ、ビーグル、ゴールデンレトリバー、ラブラドール🛒レトリバー、ボーダーコリーなどの犬種で発症しやすい傾向があります。
症候性てんかん
脳腫瘍、脳炎、外傷、先天的な脳の異常などが原因で起こるてんかんです。MRIやCTスキャンなどの画像検査で原因が特定できることがあります。
治療方法
てんかんの治療は、主に抗てんかん薬による発作のコントロールです。よく使われる薬には以下のようなものがあります:
フェノバルビタール:最も一般的な第一選択薬
臭化カリウム:フェノバルビタールと併用されることが多い
ゾニサミド:日本で開発された抗てんかん薬
レベチラセタム:副作用が少ない新しいタイプの薬
治療の目標は、発作を完全になくすことではなく、発作の頻度と重症度を減らし、犬の生活の質を保つことです。多くの犬は、適切な薬物治療により、ほぼ正常な生活を送ることができます。
日常生活で気をつけること
てんかんを持つ犬と暮らす上で、以下のような配慮が必要です。
規則正しい生活
睡眠不足やストレスは発作の誘因になることがあります。毎日同じ時間に食事を与え、十分な睡眠時間を確保しましょう。
薬の飲み忘れを防ぐ
抗てんかん薬は、血中濃度を一定に保つことが重要です。薬を飲み忘れると、発作が起こりやすくなります。スマートフォンのアラーム機能などを使い、決まった時間に投薬しましょう。
安全な環境づくり
階段やプール🛒など、発作が起きた時に危険な場所には、できるだけ近づけないようにします。水に顔をつけるような状況は特に危険です。
定期的な血液検査
抗てんかん薬の中には、肝臓に負担をかけるものがあります。獣医師の指示に従い、定期的に血液検査を受けて、薬の血中濃度や肝機能をチェックしましょう。
まとめ:冷静な対応が愛犬を守る
てんかん発作は、飼い主にとって非常にショッキングな出来事ですが、正しい知識と対応方法を身につけることで、愛犬を守ることができます。
発作時の対応で最も重要なポイント:
冷静に時間を測る
周囲の安全を確保する
触らない、揺すらない、口に物を入れない
静かに見守り、可能なら記録する
5分以上続く、または1日に複数回起こる場合は緊急搬送
てんかんは完治が難しい病気ですが、適切な治療と管理により、多くの犬が幸せな生活を送っています。かかりつけの獣医師と密に連携し、愛犬にとって最善のケアを提供しましょう。
発作を恐れすぎて過保護になる必要はありません。規則正しい生活と適切な投薬管理を行えば、てんかんを持つ犬も、散歩や遊びを楽しみ、充実した毎日を過ごすことができるのです。






