愛犬が突然足を引きずり始めたり、足を上げたまま歩けなくなったりした時、骨折の可能性があります。特に小型犬は骨が非常に細く、ちょっとした衝撃で骨折してしまうことがあります。この記事では、犬の骨折が疑われる時の症状の見分け方、応急処置としての固定法、そして動物病院への安全な搬送方法を、獣医師の見解をもとに詳しく解説します。
小型犬の骨折リスク:鉛筆より細い骨
小型犬の骨折は、多くの飼い主が考えているよりもはるかに起こりやすい事故です。ノヤ動物病院の獣医師によれば、小型犬の前足の骨は直径約2~5mm程度で、鉛筆よりも細いため、わずかな衝撃でも骨折してしまいます。

骨折しやすい小型犬種
イタリアングレーハウンド
トイプードル
チワワ
ポメラニアン
ヨークシャーテリア
マルチーズ🛒
パピヨン
楽天ペット保険🛒の獣医師監修記事によれば、これらの犬種は活発で運動量が多い一方、骨が細く脆弱なため、ソファからの飛び降り、階段からの転落、抱っこ中の落下など、日常的な行動で骨折してしまうことがあります。
特に橈尺骨骨折(前足の2本の骨の骨折)は、小型犬で最も多く見られる骨折で、全骨折の約70%を占めるとされています。

骨折の見分け方:痛がらないこともある
骨折というと、激しく痛がって鳴き叫ぶイメージがありますが、実際には痛がらないケース🛒もあります。ヒルズペットの獣医師によれば、犬は本能的に弱みを見せないため、軽度の骨折では痛みを隠すことがあります。
骨折の主な症状
歩行の異常
- 足を地面につけずに上げたまま歩く(挙上) - びっこを引く、足を引きずる - 完全に歩けなくなる
触診への反応
- 足を触られるのを極端に嫌がる - 触ろうとすると唸る、噛もうとする - いつもと違う敏感な反応
見た目の変化
- 足が不自然な角度に曲がっている - 腫れている - 皮膚が裂けて骨が見える(開放骨折)
行動の変化
- 動きたがらない、じっとしている - 食欲が落ちる - 元気がなくなる
PS保険の獣医師は、「痛がらないから大丈夫」という判断は危険だと警告しています。軽度のヒビ割れ(骨折)でも、放置すると変形治癒や慢性的な痛みにつながる可能性があります。
開放骨折と閉鎖骨折:緊急度の違い
骨折には大きく分けて2つのタイプがあり、緊急度が異なります。
| 骨折のタイプ | 特徴 | 緊急度 | 治療開始の目安 |
|---|---|---|---|
| 開放骨折 | 皮膚が裂け、骨が露出 | 極めて高い | 数時間以内 |
| 閉鎖骨折 | 皮膚は無傷、骨折は内部 | 高い | 1-4日以内 |
Today's Veterinary Practiceの獣医救急専門医によれば、開放骨折は細菌感染のリスクが高く、数時間以内に洗浄と治療を開始しないと、骨髄炎(骨の感染症)や敗血症などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
一方、閉鎖骨折は感染リスクは低いものの、1-4日以内に適切な固定治療を受けないと、骨が間違った位置でくっついてしまう変形治癒や、骨がくっつかない偽関節になる危険があります。
副木(添え木)による固定:やるべきか、やらないべきか
家庭での副木固定については、獣医師の間でも意見が分かれています。ワンペディアの獣医師監修記事と、Northeast Vetの獣医師の見解を総合すると、以下のようになります。
副木固定を推奨する場合
動物病院まで遠い(1時間以上)
犬が比較的落ち着いている
明らかな骨折が見られる
大型犬で運搬が困難
副木固定を避けるべき場合
犬が興奮して暴れる
触ろうとすると攻撃的になる
開放骨折で骨が露出している
動物病院まで近い(30分以内)
重要なポイントは、「無理に固定しようとして、骨折を悪化させたり、飼い主が噛まれたりするリスクがある」ということです。獣医師の多くは、「固定せずにそのまま安静に搬送する方が安全」という立場を取っています。
副木の作り方:身近なもので応急処置
もし副木固定が必要と判断した場合、以下の手順で行います。
必要なもの
副木材料:割り箸、厚紙、定規、アイスの棒、雑誌など
固定材料:包帯、ハンカチ、タオル、布テープ
クッション🛒材:綿、ガーゼ、柔らかい布
副木固定の手順
犬を落ち着かせる - 優しく声をかけ、可能であればマズルを装着
副木を準備 - 骨折部位より少し長めに切る(関節の上下を含む)
クッションを挟む - 皮膚と副木の間に柔らかい布を挟む
副木を当てる - 骨折部位の両側に副木を当てる
固定する - 包帯やハンカチで巻く(指が1-2本入る程度の緩さ)
血流を確認 - 足先が冷たくなっていないか、腫れていないか確認
ピースワンコ・ジャパンの獣医師監修記事では、「きつく巻きすぎると血流障害を起こし、組織壊死につながる」と警告されています。適度な緩さを保つことが重要です。
絶対にやってはいけない5つの間違い
善意からの行動が、かえって愛犬の状態を悪化させることがあります。以下の行為は絶対に避けましょう。
**1🛒. 骨を元の位置に戻そうとする** 骨折した骨を自分で整復(元に戻す)しようとすると、神経や血管を傷つけ、取り返しのつかない損傷を与える可能性があります。これは獣医師の専門技術であり、一般の飼い主が行うべきではありません。
2. 開放骨折の骨を押し込む 露出した骨を無理に皮膚の中に押し戻すと、細菌を骨の奥深くまで押し込み、重篤な感染症を引き起こします。滅菌ガーゼか清潔な布で覆うだけにとどめましょう。
3. 痛み止めを自己判断で与える 人間用の痛み止め(アスピリン、イブプロフェンなど)は、犬にとって毒性があり、胃腸出血や腎不全を引き起こす危険があります。獣医師の処方なしには絶対に与えないでください。
4. 患部を温める・冷やす 骨折直後に温湿布や冷湿布を使うと、血流の変化で腫れが悪化したり、組織損傷が進んだりする可能性があります。何もせずそのままにしておくのが安全です。
5. 骨折部位を繰り返し触る 「本当に骨折しているか確認したい」という気持ちから、何度も触ったり動かしたりすると、骨折が悪化し、単純骨折が粉砕骨折になる危険があります。
安全な搬送方法:サイズ別のテクニック
動物病院への搬送時、犬のサイズに応じた適切な方法を選ぶことが重要です。
小型犬(10kg未満)の搬送
厚手のタオル🛒や毛布を広げる
犬を優しくタオルの上に乗せる
頭とお尻を両手で支えながら持ち上げる
車のシートに寝かせる(固定部位を下にしない)
急ブレーキや急カーブを避けて運転
楽天保険の総合窓口🛒の獣医師は、小型犬の場合、抱きかかえる時に骨折した足を触らないよう、胴体全体を支えることを推奨しています。
中型犬(10-25kg)の搬送
大きめのタオルや毛布を担架として使用
2人で協力し、タオルの四隅を持つ
ゆっくりと持ち上げ、車に移動
後部座席に平らに寝かせる
大型犬(25kg以上)の搬送
毛布や大きなシートを担架にする
3-4人で協力して持ち上げる
可能であれば、板やドアを担架代わりに使用
車の荷台やワゴン車のスペースに平らに寝かせる
動かないよう、周囲にクッション🛒を置く
大型犬を無理に1人で運ぼうとすると、飼い主が腰を痛めたり、犬を落として骨折を悪化させたりする危険があります。必ず複数人で協力しましょう。
動物病院での治療:固定法の種類
動物病院では、骨折の種類、部位、犬のサイズに応じて、最適な固定法が選択されます。
1. ギプス固定
比較的安定した骨折
若い犬(骨の治癒が早い)
費用が比較的安い
4-8週間装着
2. プレート固定
粉砕骨折や複雑な骨折
成犬・高齢犬
強固な固定が可能
費用が高い(20-50万円程度)
3. 創外固定
開放骨折
感染リスクが高い骨折
骨の外側から金属ピンで固定
ピンの手入れが必要
4. 髄内ピン固定
長骨(大腿骨、上腕骨など)の骨折
骨の中心にピンを挿入
ギプスとの併用も
治療法の選択は、レントゲン検査で骨折の状態を詳しく確認した上で、獣医師が判断します。場合によっては、整形外科専門の動物病院への紹介もあります。
骨折予防:日常生活で気をつけること
骨折事故の多くは、適切な環境管理と注意で防ぐことができます。
室内環境の整備
フローリングに滑り止めマット🛒を敷く
ソファや階段にステップを設置
段差のある場所にゲートを設置
抱っこする時は必ず座って行う
散歩中の注意
他の犬との喧嘩を避ける
リードを短く持ち、急な飛び出しを防ぐ
滑りやすい場所を避ける
激しい運動は避ける
栄養管理
カルシウムとビタミンDを適切に摂取
肥満を防ぐ(体重が重いと骨への負担増)
バランスの取れた食事
高齢犬への配慮
骨密度が低下するため、より慎重に
ジャンプさせない
定期的な健康診断
小型犬の飼い主は、「うちの犬は大丈夫」と思わず、常に骨折リスクを意識した生活環境を整えることが重要です。
愛犬が足を引きずる、足を上げて歩くなどの症状が見られたら、骨折の可能性を考えましょう。副木固定は、犬が落ち着いていて動物病院まで遠い場合のみ検討し、無理に固定しようとせず、そのまま安静に搬送することが多くの場合で最善です。開放骨折は数時間以内、閉鎖骨折でも1-4日以内に獣医師の診察を受けることが、愛犬の完全な回復につながります。日頃から骨折予防を心がけ、万が一の時には冷静に対処しましょう。






