冬の朝、庭に出しっぱなしにした愛犬がぐったりと動かず、体が氷のように冷たい。激しく震え、呼びかけにもほとんど反応しない—。これは犬の低体温症の危険なサインです。
人間が「寒いな」と感じる程度でも、小型犬や老犬にとっては命に関わる寒さかもしれません。特に冬の屋外放置は、数時間で低体温症を引き起こし、最悪の場合死に至ります。本記事では、獣医師監修のもと、犬の低体温症の症状、応急処置🛒の正しい方法、そして絶対にやってはいけない対応について詳しく解説します。
犬の低体温症とは?体温の基準を知ろう
犬の正常体温と低体温症の定義

犬の平熱は37.5〜39.2℃とされています。人間の平熱(約36.5℃)より高いため、犬にとって快適な温度は人間とは異なります。
低体温症は、体温が正常範囲を下回った状態を指し、重症度によって3つのステージに分類されます:
| 重症度 | 体温 | 主な症状 | 危険度 |
|---|---|---|---|
| 軽度 | 32〜35℃ | 震え、元気消失 | ★ |
| 中等度 | 28〜32℃ | 筋肉硬直、脈微弱 | ★★★ |
| 重度 | 28℃以下 | 意識混濁、昏睡 | ★★★★★ |
体温が35℃を下回ると、体の重要な機能が低下し始めます。28℃以下になると、心停止のリスクが急激に高まります。

低体温症のメカニズム
体温が下がると、以下のような悪循環が始まります:
代謝の低下:体温低下により、全身の代謝が遅くなる
血液循環の悪化:血管が収縮し、重要臓器への血流が減少
酸素供給の低下:脳や心臓への酸素供給が不足
臓器機能不全:最終的に多臓器不全に至る
この過程は思ったより早く進行します。特に小型犬では、数時間で危険な状態に陥ることもあります。
低体温症の主な原因:冬の屋外放置が最も危険
環境要因による低体温症
冬の屋外放置
長時間の外出
夜間の屋外飼育
散歩中の長時間停留(飼い主が立ち話など)
車内放置(冬でも危険)
体が濡れた状態での寒冷暴露
雨や雪の中での散歩
シャンプー🛒後の不十分な乾燥
水たまりに入って濡れたまま
その他の原因
エアコンの効きすぎ
冷たい床での長時間就寝
災害時の避難生活
低体温症になりやすい犬:ハイリスクグループ
すべての犬が寒さに強いわけではありません。以下の犬は特に注意が必要です:
小型犬
チワワ、トイプードル、ヨークシャテリアなど
体が小さく、体温を維持しにくい
体重1kgあたりの表面積が大きく、熱が逃げやすい
短毛種・被毛の薄い犬
イタリアングレーハウンド、ウィペット、ミニチュアピンシャーなど
断熱効果のある被毛が少ない
子犬(特に生後3ヶ月🛒未満)
体熱を十分に発生できない
高齢犬(7歳以上)
代謝が低下
筋力低下で体熱産生が減少
慢性疾患で体温調節機能が衰える
痩せている犬
皮下脂肪が少なく、断熱層がない
栄養不足で体熱産生能力が低い
特定の疾患を持つ犬
甲状腺機能低下症
心臓病
腎臓病
糖尿病
低体温症のサイン:これらの症状を見逃すな!
初期症状(軽度:32〜35℃)
体の変化
激しく震える(シバリング)
体が冷たい(特に耳、肢先)
皮膚が青白い
行動の変化
元気がなく、動きたがらない
いつもより大人しい
体を丸めてじっとしている
食欲低下
注意:この段階で適切に対応すれば、完全に回復できます。
中期症状(中等度:28〜32℃)
体の変化
筋肉が硬直し、動きがぎこちない
震えが止まる(これは悪化のサイン!)
脈が細く、弱くなる
呼吸が浅く、遅くなる
血圧が著しく低下
行動の変化
ぐったりして、呼びかけへの反応が鈍い
歩行困難、ふらつき
意識が朦朧としている
注意:震えが止まるのは「温まってきた」のではなく、「震える体力もなくなった」という危険なサインです。すぐに動物病院🛒へ。
重症症状(重度:28℃以下)
体の変化
意識がほとんどない(昏睡状態)
呼吸が極端に遅い、または不規則
心拍数の著しい低下(徐脈)
不整脈
瞳孔の拡張
四肢の凍傷
この段階は生命の危機:即座に動物病院への搬送が必要です。自宅での応急処置だけでは不十分です。
低体温症の正しい応急処置:段階的復温法
低体温症の対応で最も重要なのは「ゆっくり温める」ことです。急激に温めると、復温ショックという命に関わる状態を引き起こす可能性があります。
応急処置の基本原則
まず動物病院に連絡:処置をしながら搬送準備
段階的に温める:急激な温度変化を避ける
体の中心から温める:胸・腹部を優先
濡れていたら拭く:水分は体温を奪う
震えがあれば正常:震えることで体熱を産生している
ステップ1:環境を整える(すぐに実施)
暖かい室内に移動
- 暖房の効いた部屋(23〜25℃程度) - 隙間風のない場所 - 床暖房は避ける(熱すぎる)
濡れている場合は乾かす
- タオルで優しく水分を拭き取る - こすらずに押さえるように - 特に足先、耳、尾を念入りに
冷たい地面から離す
- マットやクッションの上に寝かせる - 直接床に置かない
ステップ2:乾いたタオル・毛布で包む
使用するもの:
乾いたバスタオル2〜3枚
フリース素材の毛布
(あれば)アルミ製サバイバルシート
包み方:
まず1枚のタオルで体全体を軽く包む
その上からもう1枚を重ねる
鼻と口は出しておく(呼吸確保)
締め付けすぎない
ステップ3:体の中心部を温める(慎重に)
安全な加温方法:
ぬるま湯のペットボトル
40℃程度のぬるま湯を入れる
タオルで2〜3重に包む
犬の胸やお腹(体の横)に置く
15〜20分ごとに湯を交換
使い捨てカイロ
必ず布やタオルで包む(3〜4重)
直接皮膚に当てない
背中ではなく、お腹側に
温度を定期的にチェック
電気毛布・ホットカーペット🛒
低温設定(40℃以下)
必ず毛布を間に挟む
全身を載せず、体の下半分のみ
長時間使用しない(20分程度)
ドライヤー
弱風・低温設定
30cm以上離す
一箇所に当て続けない
皮膚の温度を手で確認しながら
ステップ4:体温測定(可能なら)
もし体温計がある場合、直腸温を測定します:
肛門にワセリンを塗った体温計を挿入(2〜3cm)
1〜2分待つ
体温を記録
動物病院に電話で伝える
目標体温:38℃ この温度に達したら、それ以上の加温は中止します。
ステップ5:動物病院へ搬送
軽度の低体温症でも、必ず動物病院を受診してください。見た目は回復したように見えても、内臓にダメージが残っている可能性があります。
搬送時の注意:
車内暖房をつける(25℃程度)
毛布で包んだまま搬送
可能なら加温を継続
急ブレーキ・急ハンドルを避ける
絶対にやってはいけない5つのこと
1. 熱湯やお風呂に入れる
40℃以上のお湯は危険です。急激な体表面の加温により、血管が拡張し、血圧が急降下する「復温ショック」を引き起こします。これは心停止につながる可能性があります。
NG行為:
熱いお風呂に浸ける
熱いシャワーをかける
ストーブの真横に置く
2. 加温器具を直接皮膚に当てる
湯たんぽや使い捨てカイロを直接当てると、低温やけどを起こします。低体温症の犬は感覚が鈍っているため、熱さを感じず、重度のやけどになることがあります。
必ず守ること:
タオル🛒で2〜3重に包む
15〜20分ごとに位置を変える
皮膚の色を定期的にチェック
3. アルコールでマッサージする
昔の民間療法で「アルコールで体を拭く」という方法がありますが、これは逆効果です。アルコールが蒸発する際に体温を奪い、さらに体温が下がります。
4. 食べ物や飲み物を無理に与える
意識が朦朧としている犬に、無理に水や食べ物を与えると、誤嚥(気管に入る)の危険があります。完全に意識が戻り、自力で飲食できるまで待ちましょう。
5. 「様子を見る」
低体温症は時間との戦いです。「少し温まったら病院に行こう」「明日の朝まで様子を見よう」は禁物です。応急処置をしながら、すぐに動物病院に連絡してください。
動物病院での治療
動物病院では、以下のような専門的な治療が行われます。
体温管理
体外加温:温風、温水循環マット
体内加温:温めた輸液の点滴、温めた酸素吸入
体腔洗浄:重症の場合、温めた生理食塩水で腹腔を洗浄
循環管理
点滴による血液循環の改善
必要に応じて昇圧剤
心電図モニタリング(不整脈の監視)
合併症の治療
凍傷の処置
臓器障害の治療(腎不全、心不全など)
感染症の予防(抗生物質)
入院が必要なケース
中等度以上の低体温症
意識障害がある
不整脈がある
高齢犬や基礎疾患がある
低体温症を予防する10の対策
冬の屋外管理
夜間の屋外飼育を避ける
- 室内に入れる - どうしても無理な場合は、断熱性の高い犬小屋+毛布
散歩の時間と長さを調整
- 早朝・深夜は避ける - 日中の暖かい時間帯に - 時間を短縮(通常の半分程度)
雨・雪の日は特に注意
- 散歩を控える - 濡れたらすぐに拭く - レインコート🛒を着せる
室内環境
適切な室温を維持
- 小型犬:23〜26℃ - 大型犬:20〜23℃ - 子犬・老犬:25〜28℃
寝床の工夫
- ペット用ホットカーペット - フリース素材の毛布 - ドーム型ベッド
服装
犬用服の活用
- 散歩時はドッグウェア - 室内でも寒がる犬には服を - サイズが合ったものを選ぶ
足先の保護
- 犬用靴下🛒 - 肉球クリーム
健康管理
適切な体重維持
- 痩せすぎは低体温症のリスク - 適度な皮下脂肪は断熱効果
定期的な健康診断
- 甲状腺機能のチェック - 心臓・腎臓の検査
シャンプー後は完全に乾かす
- ドライヤーでしっかり乾燥 - 寒い日のシャンプーは避ける
まとめ:低体温症は予防できる事故
犬の低体温症は、適切な知識があれば予防できる事故です。特に冬場の屋外放置は絶対に避けてください。
低体温症対応の重要ポイント:
犬の正常体温は37.5〜39.2℃、35℃以下は危険
小型犬・短毛種・子犬・老犬は特にリスクが高い
症状:震え→筋肉硬直→震え停止→意識混濁
応急処置は「ゆっくり温める」が鉄則
熱湯・カイロ直接・アルコールは絶対NG
軽症でも必ず動物病院を受診
今日からできること:
愛犬の平熱を測っておく(正常時の体温を知る)
冬用の寝床を用意する
ドッグウェアを購入する
夜間対応の動物病院の電話番号を登録
ペット用体温計を準備する
寒い季節、「このくらい大丈夫だろう」が命取りになります。愛犬が快適で安全に冬を過ごせるよう、飼い主の責任として万全の対策を講じましょう。





