散歩中、愛犬が他の犬と出会った時、真っ先にお尻の匂いを嗅ぎ合う光景を目にしたことがあるでしょう。人間の目には奇妙に映るかもしれませんが、これは犬にとって極めて正常で重要なコミュニケーション行動です。
AKCの専門家によると、犬がお尻を嗅ぐ行動は、人間が握手をするのと同じくらい自然な挨拶の方法なのです。
本記事では、なぜ犬がお尻を嗅ぐのか、そこからどんな情報を得ているのか、そして飼い主🛒としてどう対応すべきかを詳しく解説します。
なぜ犬はお尻を嗅ぐのか:科学的な理由
肛門腺:犬の「名刺」

犬のお尻には、肛門の両側に「肛門腺(こうもんせん)」という小さな袋状の器官があります。日本の獣医師によると、この肛門腺から分泌される液体には、その犬の様々な情報が詰まっています。
肛門腺の分泌物に含まれる情報:
個体識別(誰なのか)
性別
年齢
健康状態
食事内容
気分・感情状態
発情の有無
最近どこにいたか
VCA動物病院の研究では、この分泌物は「化学的な名刺」のようなもので、膨大な情報を一瞬で伝えることができると説明されています。

ヤコブソン器官:超感覚の秘密
犬が肛門腺から放出される化学物質🛒(フェロモン)を検出できるのは、「ヤコブソン器官」または「鋤鼻器官(じょびきかん)」と呼ばれる特殊な嗅覚器官を持っているためです。
ヤコブソン器官の特徴:
口の天井の上部に位置
通常の嗅覚とは別の経路で脳に直結
フェロモンなどの化学信号を専門的に検出
他の匂いに干渉されない
人間にはこの器官がほとんど退化しているため、犬が感じ取っている「化学的会話」を私たちは理解できません。
驚異的な嗅覚能力
犬の嗅覚は人間の約10万倍の感度を持っています。さらに、犬の脳の約30%は匂いの検出と識別に使われているのに対し、人間はわずか5%です。
この超能力的な嗅覚により、犬は私たちには想像もできないほど詳細な情報を、一回のお尻の匂いから読み取っています。
お尻の匂いから犬が読み取る情報
では、具体的に犬はどんな情報を得ているのでしょうか。
基本情報:身分証明
「あなたは誰?」
各犬の肛門腺の分泌物は指紋のようにユニークです。日本の専門家によると、犬は一度会った犬のことを匂いで覚えており、再会した時に「以前会ったことがある犬だ」と認識できます。
社会的地位:「あなたの立場は?」
お尻を嗅ぐ順序と時間の長さによって、社会的な序列が確立されます。
優位な犬:先に、長時間嗅ぐ
従属的な犬:後から、短時間嗅ぐ、または嗅がせるだけ
健康状態:「調子はどう?」
分泌物の化学組成から、相手の健康状態を察知できます。
病気の兆候
ストレス🛒レベル
最近の食事内容
繁殖情報:「興味ある?」
特にオス犬がメス犬の肛門腺を嗅ぐ時、発情期かどうか、交配可能かどうかを確認しています。
最近の活動:「どこにいた?」
犬は相手が最近どこにいたか、誰と会ったかまで、匂いから推測できる可能性があります。
正しい犬同士の挨拶プロセス
犬社会には、「礼儀正しい挨拶」のマナーがあります。
ステップ1:遠くから観察
距離:5〜10メートル
行動:
体の向きで興味の有無を示す
しっぽの位置と振り方で感情を表現
ステップ2:慎重に接近
正しい接近方法:
直線的ではなく、弧を描くように近づく
視線を直接合わせない(威嚇と取られる)
体を低くする(非攻撃的な姿勢)
ゆっくりとした動き
避けるべき行動:
真っ直ぐ突進する
凝視する
高い姿勢を保つ
ステップ3:顔の匂いを嗅ぐ
お尻を嗅ぐ前に、多くの犬はまず顔や口の周りの匂いを嗅ぎます。これも重要な情報収集です。
ステップ4:お尻の匂いを嗅ぐ
理想的なパターン:
| 犬A | 犬B | 意味 |
|---|---|---|
| お尻を嗅ぐ | 嗅がせる | Aが優位を示す |
| 待つ | お尻を嗅ぐ | Bも情報収集 |
| お互いに嗅ぎ合う | お互いに嗅ぎ合う | 対等な関係 |
時間:通常3〜15秒程度
ステップ5:その後の行動
挨拶が成功すると:
一緒に遊び始める(プレイバウ)
並んで歩く
リラックス🛒した状態で周囲を探索
問題のある挨拶:注意すべきサイン
すべての挨拶がスムーズに進むわけではありません。
危険なサイン
相手を嗅ぎすぎる:
長時間(15秒以上)執拗に嗅ぐ
相手が嫌がっているのに止めない
対応:引き離す
攻撃的な姿勢:
硬い体
唸り声
歯を見せる
対応:すぐに距離を取る
過度な興奮:
激しく飛びかかる
大声で吠える
コントロールを失っている
対応:落ち着かせてから再度試みる
挨拶を拒否する犬
一部の犬は、お尻を嗅がせることを拒否します。
理由:
社会化不足
過去のトラウマ
不安や恐怖
肛門腺の問題(痛み)
行動:
お尻を地面につける
座ったまま動かない
相手に背を向ける
攻撃的になる
社会化トレーニングが不十分な犬は、適切な挨拶ができないことがあります。
飼い主としての正しい対応
犬同士の挨拶を見守る際、飼い主の役割は重要です。
すべきこと
1. リード🛒を緩める
挨拶中、リードをピンと張ると犬が緊張し、相手に攻撃的な印象を与えます。地面に少したるみを持たせましょう。
2. 冷静でいる
飼い主の不安は犬に伝わります。リラックスして見守ります。
3. 時間を与える
焦らせず、犬たちが自分のペースで挨拶できるようにします。
4. ボディランゲージを観察
犬のボディランゲージを読み取り、問題があればすぐに介入できるよう準備します。
してはいけないこと
1. 無理やり近づけない
両方の犬が挨拶したがっていない場合、無理強いは禁物です。
2. 挨拶を中断しない
特に理由なく挨拶を中断すると、犬がフラストレーションを感じます。
3. 大声で話さない
飼い主同士の会話が大きいと、犬が集中できません。
4. 複数の犬を一度に会わせない
初対面は1対1が理想的です。
特殊な状況での挨拶
子犬と成犬
子犬の行動:
成犬に対して従順な姿勢
お腹を見せる
顔を舐めようとする
成犬の責任:
子犬に優しく接する
社会的ルールを教える
適度に遊ぶ
オスとメス
発情期のメス: オス犬が強い興味を示し、挨拶が長くなります。トラブルを避けるため、距離を保つことも考慮しましょう。
同性同士
オス同士: 社会的順位を確立しようとすることが多く、緊張感が高まる場合があります。
メス同士: 一般的にオス同士より穏やかですが、縄張り意識が強い個体同士では問題が起こることも。
お尻を嗅ぐ以外の挨拶方法
すべての犬がお尻を嗅ぐわけではありません。
代替的な挨拶
並行歩行: お互いに並んで同じ方向に歩く。これは緊張を和らげる効果があります。
遊びの誘い(プレイバウ): 前足を伸ばして腰を上げる姿勢で、「遊ぼう!」と誘います。
匂い付け: 同じ場所に排泄することで、間接的に情報交換します。
人間のお尻や股間を嗅ぐ理由
犬が人間のお尻や股間を嗅ごうとすることもあります。
なぜ人間を嗅ぐのか
人間の股間には、犬が興味を持つアポクリン腺という汗腺が集中しています。ここから分泌される物質にも、個人情報が含まれています。
犬が検出できる情報:
性別
年齢
感情状態(ストレス、恐怖など)
健康状態
妊娠の有無(女性の場合)
どう対処すべきか
NG対応:
叱る、怒る
押しのける
大声を出す
OK対応:
「オフ」「ダウン」などのコマンドを使う
視線をそらす
代替行動(座る、伏せる)を促す
おやつ🛒で注意をそらす
肛門腺の健康管理
お尻を嗅ぐ行動に関連して、肛門腺の健康管理も重要です。
肛門腺の問題
詰まり: 小型犬や中型犬では、肛門腺の分泌物が自然に排出されず、詰まることがあります。
症状:
お尻を地面にこすりつける
過度に自分のお尻を舐める
匂いが異常に強い
腫れや痛み
ケア方法
定期的な絞り出し: 月に1回程度、動物病院やトリミングサロンで肛門腺を絞ってもらいます。
自宅でのケア: 獣医師から指導を受ければ、自宅でも可能ですが、最初は専門家に任せる方が安全です。
犬種による違い
犬種によって、挨拶の傾向に違いがあります。
社交的な犬種
ゴールデンレトリーバー
ラブラドール
ビーグル
特徴:積極的に挨拶し、長時間交流する
警戒心が強い犬種
秋田犬
柴犬
チワワ
特徴:慎重で、距離を保ちたがる
牧羊犬・作業犬
ボーダーコリー
ジャーマンシェパード
特徴:状況を判断してから行動する
ただし、個体差が大きいため、犬種だけで判断せず、その犬の性格や経験を考慮する必要があります。
よくある質問
Q1: 挨拶を避けさせるべきですか?
A: 社会性の発達に重要なので、安全な状況では挨拶させるべきです。ただし、以下の場合は避けます:
相手の犬が明らかに攻撃的
愛犬が恐怖を示している
発情期のメス犬とオス犬
混雑した場所
Q2: なぜうちの犬は他の犬のお尻を嗅がないの?
A: いくつかの理由が考えられます:
まだ若く、社会的ルールを学習中
社会化不足
過去のトラウマ
性格的に内気
社会化期を逃した犬でも、時間をかけて改善できます。
Q3: 挨拶後に喧嘩になったら?
A: すぐに以下の対応を:
リード🛒を引いて引き離す(首を絞めないように注意)
大声を出さない(興奮を助長する)
両方の犬を落ち着かせる
怪我がないか確認
まとめ:お尻を嗅ぐのは正常で重要な行動
犬がお尻を嗅ぐ行動は、人間には理解しにくいかもしれませんが、犬のコミュニケーションにおいて極めて重要な役割を果たしています。
この記事の重要ポイント:
お尻を嗅ぐのは犬の正しい挨拶方法
肛門腺から個体情報を含むフェロモンが分泌
ヤコブソン器官で化学的情報を検出
犬の嗅覚は人間の10万倍
社会的序列の確立にも使われる
飼い主はリード🛒を緩めて見守る
危険なサインを見極める必要がある
肛門腺の健康管理も重要
犬のコミュニケーション全般を理解することで、愛犬との関係だけでなく、他の犬との交流もスムーズになります。
次に散歩で他の犬に会った時、お尻を嗅ぎ合う愛犬を見て「恥ずかしい」と感じる必要はありません。それは、犬が犬らしく、自然にコミュニケーションを取っている証拠なのです。
犬の世界の「握手」を、温かく見守ってあげましょう。
---
参考文献:






