「犬がしっぽ🛒を振っているから嬉しいんだ」──多くの人がそう信じていますが、実はこれは大きな誤解です。犬のしっぽの動きは非常に複雑で、喜び、恐怖、警戒、攻撃性など、様々な感情を表現しています。
しっぽの動きを正しく理解することは、愛犬の気持ちを知るだけでなく、咬傷事故を防ぐ上でも極めて重要です。「しっぽを振っているから大丈夫」と思って近づいたら噛まれた、という事例は決して珍しくありません。
本記事では、しっぽの位置、振り方、速度、方向から読み取れる犬の感情を、獣医師監修の情報をもとに詳しく解説します。
しっぽの動きを読む3つの基本要素
犬のしっぽから感情を正しく読み取るには、3つの要素を総合的に判断する必要があります。専門家の指摘によると、一つの要素だけで判断すると誤解が生じます。

要素1:しっぽの位置(高さ)
しっぽの高さは、犬の自信レベルや覚醒度を示します。
高い位置:自信、優位性、興奮
水平位置:警戒、注意、中立
低い位置:不安、恐怖、服従
股に巻き込む:極度の恐怖、パニック
要素2:振り方の速度と幅

同じ位置でも、振り方によって意味が大きく変わります。
速く大きく振る:強い感情(喜びまたは興奮)
ゆっくり振る:不確実、緊張
小刻みに振る:高い緊張、警戒
硬直して動かない:極度の緊張、攻撃直前
要素3:体全体の状態
しっぽだけでなく、ボディランゲージ全体を観察することが不可欠です。
体が柔らかい🛒→ポジティブな感情
体が硬い→ネガティブな感情または高い緊張
しっぽの位置別:感情の読み解き方
しっぽの位置は、犬の基本的な感情状態を知る最も重要な手がかりです。
高い位置(背中より上)
意味:自信、優位性、強い興奮
しっぽが背中より高く持ち上がっている時、犬は自信に満ちているか、周囲に対して優位性を示そうとしています。
振り方による違い:
| 振り方 | 意味 | 安全度 |
|---|---|---|
| 高く大きく円を描く | 非常に嬉しい、歓迎 | 安全 |
| 高く硬直 | 警戒、攻撃の可能性 | 危険 |
| 高く小刻み | 緊張した興奮、威嚇 | 注意 |
| 高くゆっくり | 状況を探っている | 中立 |
注意すべきサイン:しっぽが高く、体が硬く、耳が前を向き、目が硬い場合は、攻撃の可能性があります。近づかないようにしましょう。
水平位置(背中と同じ高さ)
意味:注意、警戒、興味、中立
水平のしっぽは、犬が何かに注意を向けているが、まだ感情の方向性(ポジティブかネガティブか)が決まっていない状態を示します。
具体的な状況:
新しい犬や人に出会った時
聞き慣れない音を聞いた時
知らない場所を探索している時
振り方による違い:
ゆっくり振る:不確実性、慎重に状況を判断中
速く振る:友好的な興味
硬直:強い警戒
低い位置(背中より下)
意味:不安、恐怖、服従、緊張
しっぽが下がっている時、犬はネガティブな感情を抱いています。
段階別の下がり方:
やや下がる(45度):軽い不安、緊張
真下に向く:明確な恐怖、服従
後ろ足の間に巻き込む:極度の恐怖、パニック状態
VCAアニマルホスピタルの専門家によると、しっぽが低くなるほど、犬の恐怖や不安のレベルが高いことを示します。
対応方法:
無理に近づかない
圧迫感を与えない(しゃがむ、横を向く)
声のトーンを優しくする
恐怖の原因から距離を取る
股に巻き込む
意味:極度の恐怖、パニック、降参
これは犬が送る最も強い「助けて」のサインです。この状態の犬は予測不可能な行動を取る可能性があります。
この状態で起こりうること:
固まって動けなくなる(フリーズ)
パニックで逃げ出す
防衛的に噛みつく(追い詰められた場合)
失禁する
緊急対応:
すぐに恐怖の原因を取り除く
犬に触らない、近づかない
安全な場所を提供する
無理に引っ張らない
しっぽの振り方のパターンと意味
同じ位置でも、振り方によって全く異なる感情を表現します。
パターン1:大きく速く振る(全身で喜ぶ)
特徴:
しっぽだけでなく腰も振る
体全体が柔らかく動く
口を開けてリラックス
前足を踏み鳴らすことも
意味:純粋な喜び、大きな興奮
場面:
飼い主が帰宅した時
大好きなおやつ🛒を見た時
大好きな友達(犬または人)に会った時
パターン2:円を描くように振る
特徴:しっぽがプロペラのように回転
意味:最高レベルの喜びと歓迎
研究によると、この動きは犬が非常にポジティブな感情を抱いている時にのみ見られます。
パターン3:小刻みに速く振る
特徴:
振り幅が小さい
速度は速い
体が硬い
意味:緊張した興奮、警戒
注意:これは攻撃の前兆である可能性があります。特にしっぽの位置が高い場合は要注意です。
パターン4:ゆっくり左右に振る
特徴:
速度が遅い
リズムが一定
体はリラックス🛒
意味:穏やかな満足感、友好的
場面:
撫でられている時
飼い主の横でくつろいでいる時
穏やかに他の犬と挨拶する時
パターン5:硬直して微動だにしない
特徴:しっぽが完全に静止
意味:極度の緊張、集中、攻撃直前
危険度:非常に高い
この状態の犬は、次の瞬間に攻撃するか逃げるかを決めようとしています。
新発見:しっぽを振る方向の意味
最新の研究で、しっぽを振る方向にも意味があることが分かってきました。
右寄りに振る=ポジティブな感情
イタリアの研究者による実験で、犬が以下の対象を見た時、しっぽは右寄りに振ることが観察されました:
飼い主
見知った人
友好的な犬
ご褒美
脳科学的な説明:左脳(ポジティブな感情を処理)が活性化すると、体の右側をより多く動かします。
左寄りに振る=ネガティブな感情
一方、以下の対象を見た時、しっぽは左寄りに振りました:
見知らぬ人(特に威圧的な態度の人)
攻撃的な犬
脅威を感じる対象
脳科学的な説明:右脳(ネガティブな感情を処理)が活性化すると、体の左側をより多く動かします。
実用性の注意:この違いは非常に微妙で、訓練された観察者でも見分けるのは困難です。他のサイン(位置、速度、体全体の状態)の方が実用的です。
犬種による違い:しっぽの形と表現
犬種によってしっぽの形が大きく異なり、表現方法も変わります。
長くてまっすぐなしっぽ
犬種例:ラブラドール🛒、ゴールデンレトリーバー、ビーグル
特徴:感情が最も読み取りやすい。位置、振り方がはっきり見える。
巻き尾(カールテール)
犬種例:柴犬、秋田犬、パグ、ハスキー
特徴:常に背中の上にカールしているため、位置による判断が難しい。
読み取り方:
通常より強く巻く→緊張、警戒
巻きが緩む→リラックス
完全に下がる(珍しい)→強い恐怖
短い尾またはボブテール
犬種例:コーギー、オーストラリアン・シェパード、ブルドッグ
特徴:しっぽが短いため、動きが見えにくい。
読み取り方:尻部分全体の動きを観察する。喜んでいる時は腰全体が振れる。
垂れ下がった長い尾
犬種例:セッター、ポインター、アフガンハウンド
特徴:自然な位置が低いため、低い=恐怖とは限らない。
読み取り方:その犬の「通常位置」を把握し、そこからの変化を観察する。
断尾された尾
注意:断尾は多くの国で禁止されつつありますが、一部の犬種では見られます。
課題:しっぽによるコミュニケーションが制限され、他の犬との誤解が生じやすい。
代替観察:腰の動き、体全体の姿勢により注意を払う必要があります。
誤解されやすいしっぽのサイン
多くの人が誤解しているしっぽのサインを、正しい解釈とともに紹介します。
誤解1:しっぽを振っている=安全
真実:しっぽを振っていても、位置が高く体が硬ければ、攻撃の可能性があります。
実例:郵便配達員が「しっぽを振っているから大丈夫」と思って近づいたら噛まれた──このような事故は毎年多数報告されています。
誤解2:しっぽが下がっている=おとなしい
真実:恐怖で固まっている犬は、追い詰められると防衛的に噛むことがあります。
誤解3:しっぽを激しく振る=遊びたい
真実:過剰な興奮状態は、コントロールを失いやすく、予測不可能な行動につながります。
誤解4:巻き尾の犬は常に嬉しい
真実:巻き尾でも、巻きの強さやその他の体のサインで感情を読み取れます。
実践:シーン別しっぽの読み方
実際の場面で、どのようにしっぽから感情を読み取るか見てみましょう。
シーン1:公園で知らない犬に会った
犬A:しっぽ高く硬直、小刻みに振る、体硬い → 警戒、攻撃的な興奮。距離を保つ。
犬B:しっぽ水平、ゆっくり振る、体柔らかい → 友好的な興味。挨拶OK。
犬C:しっぽ低く、体後ろに引く → 恐怖、不安。無理に近づけない。
シーン2:動物病院の待合室
サイン:しっぽ下がる、体震える、小さく振る → 不安と恐怖。安心させる声かけ、抱っこで安全感を。
シーン3:飼い主の帰宅
サイン:しっぽ円を描く、全身振る、飛び跳ねる → 最高レベルの喜び。ただし、飛びつきは制御する必要あり。
シーン4:来客時
パターンA:しっぽ高く速く振る、吠える、体硬い → 警戒と興奮。「守らなきゃ」の気持ち。落ち着かせる必要あり。
パターンB:しっぽ低く、隠れる → 恐怖。無理に会わせない。
しっぽの他の重要な役割
感情表現以外にも、しっぽには重要な役割があります。
バランスを取る
犬は走る時、急カーブを曲がる時、階段🛒を上り下りする時、しっぽでバランスを取ります。
怪我のリスク:しっぽを損傷すると、運動能力に影響が出ることがあります。
体温調節
寒い時、犬は体を丸めてしっぽで鼻を覆い、温かい空気を保ちます。
匂いの拡散
しっぽを振ることで、肛門腺から分泌される匂いを周囲に拡散させ、他の犬に情報を伝えます。
だから重要:しっぽを股に巻き込む行動は、「自分の匂いを隠したい=目立ちたくない」という意味も含みます。
子どもに教えるべき「しっぽの安全ルール」
子どもがいる家庭では、しっぽのサインを正しく理解させることが安全につながります。
子どもに教える5つのルール
しっぽを振っている=触っていい、ではない
必ず大人に確認する
しっぽが高く硬い犬には近づかない
「怒っているかも」と教える
しっぽが下がっている犬は怖がっている
「そっとしておいてあげよう」
しっぽを引っ張らない
痛いし、噛まれる原因になる
犬の後ろから突然近づかない
驚かせると危険
しっぽ観察力を高める3つの練習
愛犬のしっぽを正確に読み取る能力を高める方法を紹介します。
練習1:ベースラインを知る
愛犬の「普通の状態」のしっぽの位置を観察し、記録します。
リラックスしている時のしっぽの位置
集中している時のしっぽの位置
興奮している時のしっぽの振り方
これらを知ることで、「いつもと違う」変化に気づけます。
練習2:動画分析
様々な状況で愛犬を動画撮影し、スローモーションで観察します。
しっぽの位置の変化
振り方の変化
他のボディランゲージとの関連
練習3:予測ゲーム
愛犬が何かに反応する前に、「今からしっぽはどう動くだろう?」と予測してみます。
例:
チャイムが鳴る→しっぽはどうなる?
おやつ🛒を見せる→どう反応する?
知らない人が近づく→どう変化する?
予測と実際を比較することで、理解が深まります。
いつ専門家に相談すべきか
以下の場合は、獣医師や行動学専門家に相談しましょう。
行動面の相談が必要な場合
しっぽの動きが常に攻撃的(高く硬直)
常に恐怖のサイン(股に巻き込む)が見られる
しっぽを追いかけて自傷行為をする
社会化不足によりしっぽで適切にコミュニケーションできない
医学的な相談が必要な場合
しっぽを上げられない、動かせない
しっぽを触ると痛がる
しっぽの形が突然変わった
しっぽの付け根が腫れている
しっぽの損傷は神経に影響を与え、排泄機能に問題が出ることもあるため、早急な診察が必要です。
まとめ:しっぽは犬の「感情メーター」
しっぽは、犬の感情状態を知るための最も分かりやすい指標の一つですが、単純に「振っている=嬉しい」と解釈することは危険です。
この記事の重要ポイント:
しっぽの位置(高さ)が基本的な感情状態を示す
振り方の速度と幅が感情の強さを表す
体全体の状態と合わせて総合的に判断する
しっぽを振っていても攻撃的な場合がある
右寄り=ポジティブ、左寄り=ネガティブ(研究段階)
犬種によってしっぽの表現方法が異なる
子どもにしっぽの安全ルールを教えることが重要
犬のコミュニケーション全般を理解することで、愛犬との絆はさらに深まります。
明日から散歩中、愛犬のしっぽを注意深く観察してみてください。「あ、今警戒しているんだな」「本当に嬉しそうだな」と、これまで以上に愛犬の気持ちが理解できるようになるはずです。
しっぽは、犬が私たちに送る大切なメッセージ🛒です。そのメッセージを正しく受け取れる飼い主になりましょう。
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参考文献:






